BMW・R 1300 RS ツーリング AUTOMATED SHIFT ASSISTANT……2,779,000円~




安定性に優れたコーナリングで蘇るR 100 RSの記憶

R 1100 RSに端を発する空油冷ボクサーツインの歴史。動弁系はOHV2バルブからハイカム方式の4バルブとなり、燃料供給はキャブからFIへ。そしてフロントサスはテレスコピックフォークから新機構のテレレバーとなった。このプラットフォームを共有する形でトラベルエンデューロのGS、ロードスターのR、そしてツアラーのRTが誕生。以降のBMWモトラッドの躍進ぶりはここに記すまでもないだろう。
2015年のモデルチェンジを機に、R 1200 RSと同Rは倒立式テレスコピックフォークを採用。これによりプラットフォーム上はGSやRTと袂を分かつことになる。RSとRは2019年に1250へ、そして2025年には1300へと共に進化する。
こうして最新のR 1300 RSとR 1300 Rを見比べると、アルミダイキャスト製のシートレールやEVOパラレバーの造型などから、プラットフォームを共有していることは一目瞭然だ。しかしながら、テールランプをはじめ外装パーツは全く異なることが分かる。フルカウルスポーツとネイキッドを作り分ける際、車体の後ろ半分をほぼ共通パーツにしてコストを下げるのが常套手段となっている昨今。ここまで差別化を図っていることに感心しきりだ。
さて、今回は非常にうれしいことに、R 1300 RSとRを同日に試乗することができた。この2台、実は外装だけでなくディメンションまで異なっている。ホイールベースはRSが15mm長く、キャスターはRが0.5°立っており、トレール量はRSが4.5mm短い設定だ。ちなみに試乗車のタイヤ銘柄は共通だった。

ハンドリングは、かなり高い速度域まで倒し込みや切り返しが軽快な上、旋回中のライン修正も自由自在なR 1300 Rに対し、RSはその文脈を踏まえつつも、常にしっとりと落ち着いているのが特徴だ。この差はおそらく、フロントカウルによるダウンフォースやマスダンパー効果のほか、ライディングポジションの違いによる前輪分布荷重の増加も寄与しているはずだ。よって、特に中~高速コーナーではバイク任せのまま進入から立ち上がりまでが完結し、さらにボクサーツインが生む滑空感を伴った旋回中の高い安定性は、空冷2バルブ時代のR 100 RSに通じるものがある。
ツーリングおよびツーリングASA仕様が採用する高度なセミアクティブサスのDSA(ダイナミック・サスペンション・アジャストメント)は、RSにプレミアムな乗り心地を提供してくれている。基本的には車体をあまりピッチングさせない方向でセッティングされているようで、そういう意味ではテレレバーサスに近い動きを見せることも。スーパースポーツのS 1000 RRなどが採用するDDC(ダイナミック・ダンピング・コントロール)とも異なる方向性であり、RSはスポーツツアラーとしての運動性や快適性を磨き上げてきたことが分かる。
シームレスに高回転域まで伸び上がるボクサーツイン

エンジンはR 1300 Rと共通の空水冷ボクサーツインで、最高出力は145PSを発揮する。今回試乗したのは、クラッチレバーレスの自動変速システム「オートメイテッド・シフト・アシスタント(ASA)」を採用するツーリングASA仕様だ。

ライディングモードProを採用するツーリングASA仕様は、エコ/レイン/ロード/ダイナミックモードが選べるほか、スロットルレスポンスやDTCなどの設定を個別に調整可能である。
ASAのギヤモードは、手動モードMと自動モードDの二つがあり、自動モードDであっても任意のシフト操作を受け付けてくれる。発進時のクラッチミートは非常にていねいで、自動モードDなら、シフトカムが切り替わるであろう5000rpm付近に到達する前に次々とシフトアップしていく。このシフトチェンジのタイミングは、選択したライディングモードやスロットルの開け方、勾配や風向きなどの負荷によってもさまざまに変化し、基本的には「全部お任せ」でOK。街中を流す分ならエコモード&自動モードDで事足りるほど優秀だ。
圧巻なのはダイナミックモードだ。エコ/レイン/ロードの各モードはどれも扱いやすく、ロードモードでは常識的なパワフルさも見せてくれる。一方でダイナミックモードは、右手の動きに対して鋭く反応し、開け続けた分だけとてつもないダッシュ力を披露する。シフトカムが切り替わる際のフィーリングはあくまでもシームレスであり、レッドゾーンの始まる9000rpmまで快活に吹け上がる。ボクサーツインらしい等間隔爆発のサウンドを伴いながらも不快な振動はほぼ皆無であり、また縦置きクランクやシャフトドライブによる特有の個性も、ハンドリングに悪影響を及ぼさないレベルにまで抑えられている。
それにしても、この速さというか加速力はBMWボクサー史上で最強ではないだろうか。今から17年前、R 1200 Sをベースとした「HP2スポーツ」というハイパフォーマンスモデルが発売されている。そのファクトリーチューンとも呼ぶべき空油冷ボクサーツインですら最高出力133.2PS、最大トルク115Nmだったことを踏まえると、145PS/149Nmというスペックがレギュラーモデルに採用されていること自体に隔世の感がある。

さて、RSと言えば高速巡航時のウィンドプロテクションもチェックすべきポイントだ。最新のR 1300 RSは、ライダーに当たる走行風をパーフェクトに遮断するタイプではないが、疲労に直結するであろう風圧を効果的に減じてくれる。おそらく、これ以上カウリングやスクリーンを大きくするとハンドリングに悪影響が出てくるはずで、この運動性と防風性のバランスは絶妙と言っていい。
R 1300 RSは乗り味も含めてプレミアムなスポーツツアラーであり、ブレーキ性能の高さもあってサーキット走行も十二分に楽しめるはず。加えてASAがもたらすイージーライドテクノロジーはメリットしかなく、クラッチレバーが存在しないことの違和感はすぐに消えてしまうはずだ。アドベンチャーモデルの人気に押され、各社のラインナップからスポーツツアラーが減りつつある昨今。R 1300 RSはスマートにロングツーリングを楽しみたいベテランライダーのための1台と言えるだろう。
ライディングポジション&足着き性(175cm/66kg)
先代のR 1250 RSよりもハンドル位置は低く、かつライダー側に移動。上半身はわずかに前傾するものの腕に余裕があるので、Uターンのような小回りはR 1300 Rよりも容易に感じられた。シート高は815mm(スポーツサスペンションを採用するライト・ホワイトのみ825mm)で、身長175cmの筆者なら両足のかかとが接地するほど足着き性は良好だ。
ディテール解説











R 1300 RS(2026年モデル)主要諸元
●エンジン
最高出力 107 kW (145 PS) / 7,750 rpm
エミッション制御 クローズドループ制御式三元触媒コンバーター
タイプ 空冷/水冷2気筒4ストロークボクサーエンジン、可変インテークカムシャフトコントロール BMW ShiftCam
ボア × ストローク 106.5 mm × 73 mm
排気量 1,300 cc
最大トルク 149 Nm / 6,500 rpm
圧縮比 13.3 : 1
点火 / 噴射制御 電子制御インテークパイプ・インジェクション / スロットル・バイ・ワイヤ付デジタルエンジンマネジメントシステム
排ガス基準 EU 5+
●走行性能 / 燃費
最高速度 245 km/h
WMTCに準拠した1Lあたり燃料消費率(1名乗車時) 20.83 km/L
WMTCに準拠したCO2排出量 110 g / km
燃料種類 無鉛プレミアムガソリン(スーパー)(max 15%エタノール、E10/E15)、95 ROZ/RON、90 AKI
●電装関係
オルタネーター 650 W
バッテリー 12 V / 14 Ah、メンテナンスフリー
●パワートランスミッション
クラッチ 多層構造湿式クラッチ(アンチホッピング)
ミッション 常時噛み合い式6速トランスミッションをエンジンブロックに内蔵
駆動方式 カルダンシャフト
●サスペンション / ブレーキ
フレーム 板金シェル構造のフレーム、リアフレームはアルミニウムダイキャスト
フロントサスペンション 倒立式テレスコピックフォーク
リアサスペンション BMW Motorrad EVO-パラレバー、アルミキャストシングルスイングアーム
サスペンションストローク、フロント/リア 140 mm / 140 mm
軸距 1,525 mm
キャスター 122.5 mm
ステアリングヘッド角度 62°
ホイール アルミニウムキャストホイール
リム(フロント) 3.50″ × 17″
リム(リア) 6.00″ × 17″
タイヤ(フロント) 120/70 ZR17
タイヤ(リア) 190/55 ZR17
ブレーキ(フロント) ダブルディスクブレーキ(310 mm 径)、フローティングマウント式ディスクブレーキ、4ピストンラジアルブレーキキャリパー
ブレーキ(リア) シングルディスクブレーキ(285 mm 径)、2 ピストンフローティングキャリパー
ABS BMW MotorradフルインテグラルABS Pro
●寸法 / 重量
シート高、空車時 815 ㎜ (スポーツサスペンション装備:825 ㎜)
インナーレッグ曲線、空車時 1800 mm(スポーツサスペンション装備:1820 ㎜)
燃料タンク容量 約17 L
リザーブ容量 約4 L
全長 2,140 mm(トップケースキャリア付:2,245 mm)
全高 1,350 mm
全幅 815 mm
乾燥重量 233 kg
車両重量(ドイツ工業規格DIN 空車時、走行可能状態、燃料満載時の90%、オプション非装備) 245 kg
許容総重量 460 kg
最大積載荷重(標準装備の場合) 215 kg
車両重量(日本国内国土交通省届出値、燃料100%時) 252 kg
※生産国:ドイツ






