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思いのほかフツーに走れる
さて、肝心な走りはどうでしょうか。サーキットで扱いやすくても、それは「1000ccスポーツスポーツにしては」という前置きが付いての話しです。一般道で走ってみます。
ハッキリ言うと、サーキットで速く走ることを徹底追求しているバイクですから、不利に決まっています。ただし、思いのほかフツーに走れるではありませんか。
低回転からトルクがあり、スロットルワークと体重移動で自在にマシンコントロールできます。車体の向きを変えるときは、シートにどっしり座ったままではなく、お尻をずらして荷重を積極的に掛けていけば身のこなしが軽くなり、さすがはスーパースポーツと唸りたくなります。
スゴイのは、やはりエンジンでしょう。ピックアップが鋭く、低中速域からもうパワフル。MotoGPで開発された可変バルブシステム「スズキレーシングバリアブルバルブタイミング(SR-VVT)」などの恩恵でしょう。まず、SR-VVTはインテークバルブの開閉タイミングを低回転域と高回転域とで変化させるシステムですが、遠心力を利用し、シンプルで軽量コンパクト。複雑な仕組みを用いていません。
「スズキエキゾーストチューニング-アルファ(SET-A)」はサーボ制御のバタフライバルブをエキパイの連結管に設け、低回転域ではバルブを閉じてトルクを増強し、高回転時にはバルブを開いて容量増加、排圧低減、排気脈動効果によってハイパワーを実現します。
「スズキデュアルステージインテーク (S-DSI)」は可変長インテークファンネルのように作動し、スムーズなパワーデリバリーに貢献。低中速域では長いファンネルのように作動し、トルクを向上させ、高回転域では短いファンネルになって、トップエンドのパワーを引き出すのです。
乗ってみると全域パワーバンドといったフィーリングで、低中速域から高回転域へのスムーズなパワーデリバリーのおかげで、街乗りというリッタースーパースポーツではアクセルをほとんど開けられない状況でも、マシンをコントロールしてられるのでした。
電子制御もストリートで威力を発揮
高度な電子制御システムは街乗りやツーリングにだって、ありがたいです。車両の動きと姿勢を検知するIMU(イナーシャル・メジャーメント・ユニット)は、ピッチ、ロール、ヨーの角速度(3軸方向)と加速度(前後、左右、上下)の6方向を検知する最新式。トラクションコントロール、ブレーキング、コーナリング制御を正確かつ効果的に制御し、走行モード「スズキドライブモードセレクター(S-DMS)」とリンクして、ライディングをアシストしてくれます。
たとえ難しいことはわからなくても、ライダーは左ハンドルバースイッチにより、A・B・Cの3つの走行モードから任意のモードを選び、トラクションコントロールも10段階の介入レベルを設定でき、直感的にいろいろと試すことができます。
ドライブモードの設定を変えると出力の立ち上がりが変化し、「A」はシャープなレスポンスで全回転域および全スロットル開度域において最も高出力な特性に。「B」はスロットル中間開度域までのレスポンスをソフトにした特性です。そして「C」はレスポンスがソフトで穏やかになります。
また、レース技術よりフィードバックされたSHOWA製「BFF(バランス・フリー・フロントフォーク)」と「BFRC lite(バランス・フリー・リア・クッション・ライト)が足まわりには組み込まれ、これらはサーキットで高負荷がかったときにこそ真価を発揮する高性能サスペンションであるものの、低速時には減衰を減少させるので、しなやかに動いて欲しい街乗りでも、その動き、衝撃吸収性は卓越したものがあります。軽快な取り回し性を感じさせるのでした。
対向4ピストンのブレンボ製モノブロックラジアルマウントキャリパーとφ320mmディスク、ラジアルポンプマスターシリンダーなどサーキットスペックのブレーキも、制動力はもちろんコントロール性に優れ、ストリートやワインディングでその性能をいかんなく発揮してくれ、安心材料となります。
高速道路でも直進安定性が高く、こうした性能の高さは公道を走っても感じられ、すべてに余裕を感じます。昔のレーシングマシンでしたら、街乗りなんてしたら走りにくくて仕方なかったはずですが、最新スーパースポーツは無難にこなしてしまうのでした。
サーキットへ行っても行かなくても、最高峰のバイクに乗る楽しさは間違いなくあることがわかりました。「究極スペックの1台が欲しい」「サーキットデビューしてみたい」「カッコイイから」、購入するのにあたって、理由は何でもありなのかもしれません。