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ヤマハ・MT-03……567,000円
ヤマハのMTシリーズは4気筒1000ccのMT-10を筆頭に2気筒250ccまでの5機種がラインナップされたスポーツネイキッド。アップしたバーハンドルの装備は自然体で楽なライディングポジションを提供。決して大き過ぎない車体はマスの集中設計が徹底されエンジン回りにギュウッと凝縮されたデザインが印象的。実際の取り回しも軽く扱いやすい。
段差のついたセパレートシートとヒップアップテールはなかなかスポーティ。アルミ製アシストグリップを標準装備する等、二人乗りへの考慮も少しはある。見栄えはスパルタンな仕上がりだが、全体的なボエリューム感は使い勝手の良い標準的なスポーツモデルである。
さて冒頭でMT-25との違いは排気量のみと書いたが、実はそれに伴う細かな相違点にも注目したい。簡単に言うとボア・ストロークの差と、6速トランスミッションのギヤレシオが異なっている事についてだ。
搭載エンジンは水冷DOHC 4バルブの直(並)列2気筒。MT-25は60×44.1mmというショートストロークタイプの249cc。一方MT-03は8mmボアアップされて320cc。ボアは68mmまで拡大されたので、ショートストローク(オーバースクエア)の度合いは1.36から1.54に高まった。
一方ギヤレシオは一次二次減速比、そしてタイヤサイズも共通。しかしミッションのギヤレシオは各速ともそれぞれオリジナル設定され、MT-03は高めのレシオが選択されているのだ。つまりトルクに優位性があり、エンジンの常用回転域が低めに設定されている事が理解できるのである。
実走燃費は31.3km/L
走り始めるとこれらの違いが直ぐに実感できる。実に魅力的なハイパフォーマンスの発揮に、思わずニンマリである。プラス70ccの差と絶妙のマッチを魅せたギヤレシオからもたらされる乗り味がとても心地よい。
スロットルレスポンスはどんな場面からでも小気味のよい吹き上がりを発揮。何とも元気ハツラツで楽しげである。ちょっと近所まで走り出すだけでも、ライダーを爽快な気分にしてくれるだろう。
ロ-ギヤでエンジンを5000rpm回すと速度は約26km/h。MT-25だと同じく24km/hだ。たかが2km/hの差でしかないのだが、操作フィーリングとしては、結構大きな違いがある。セカンドへのシフトアップを急かされる感覚が少ない。
バイクに期待(求める)通りの加速力を発揮させる上でMT-03はトルクに勝る分、スロットル開度も少なくて済む。つまりあまり頑張る必要が無いのである。逆に高速100km/hクルージング時のエンジン回転数もトップギヤで約6300rpm。MT-25だと同じく7200rpmも回っている。
この差がライダーの気持ちに大きなゆとりを生み、常に快適な走りを楽しませてくれるわけだ。断っておくがMT-25のパフォーマンスも十分満足できエンジンを回して乗りこなす楽しさもある。しかし、MT-03の走りを知ると「ああ、これが本来の仕上がりだな」と理解できるだろう。高回転域の伸び感でもMT-03の方に優位性がある。
車両本体価格で3万円の価格差はちっとも高く無いと思えたのが正直な感想だ。実際に購入するとなるとMT-25(軽二輪)で“我慢”すべきかどうかが何とも悩ましい。ただ、MT-03にすれば、あえてそれを選んだ自分自信の考え方にも、いつも満足できることだろう。
操縦性はとても親しみやすく、足代わりからロングツーリングまでオールマイティな使い勝手が楽しめる。同じエンジンを搭載するR3のように走る事自体がスポーツになる心構えの違い(体重負担の多くがシートに加わる)からか、120km程の走行で尻が痛くなった事や、前後サスペンションの作動特性が感覚的に忙しすぎる(ゆったり感に欠ける)点が少し気になったが、ライトウエイトなスタンダードスポーツとして魅力的なバイクだと思えた。
満タン法計測による実走燃費率はトータルで31.3km/L。高速では主に速い流れに乗って走行。普通の流れと郊外路を走った区間ベストでは34km/Lをマークした。