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箱根は雪か凍結か
朝8時、平塚のビジホを出てモンキー125のキーをひねる。トリップメーターは69.7km、フューエルメーターは残4目盛り。西を目指して出発だ。
それにしても寒い。気温は3度、タカハシの貧弱な装備では、使い捨てカイロを体じゅうに貼りつけても、まだ寒すぎて歯の根が合わない。
走り出して間もなく海に寄り道することに。国道1号沿いの梅沢海岸には、砂浜とも道路ともつかないダート広場にクルマをとめ、思い思いに釣りを楽しむ人がずいぶんいた。
梅沢海岸を後に国道1号をしばらく走ると、雲に切れ目がみえ、寒さが少しゆるんできた。これから向かう箱根の山も、ちょっとは暖かくなってくれるといいんだが。
箱根・七曲りにアタック!
小田原をすぎると、道は箱根の峠にさしかかる。美しく整備された箱根新道こと国道1号と、旧街道にあたる県道732号が分岐するのもここからだ。「東海道」を標榜する企画だから旧街道を……とかいった志はカケラもなく、少しでも寒くないようゆっくり走りたい一心で、迷わず狭い県道732号を選択した。
県道732号はやがて七曲りに差し掛かる。長いあいだ徒歩でしのぐしかなかったこの東海道最大の難所を連続ヘアピンでクリアし、なんとかクルマを通せるこの道が作れたのは、わずか50年ほど前のことだったという。
先人が苦心を重ねて供用にこぎつけた七曲りだが、残念ながらバイクには通行規制があるから覚えておこう。その意図はよくわからないが、どっちにしても自動二輪は、季節や時間帯、排気量によっては走れない。この規制をクリアして七曲りの走りを楽しむには、まず初めに金持ちになり、規制のかからない550cc以上の自動二輪を購入するのがいちばんだ。それなら無罪放免、いつでも自由に七曲りを走れるはずだ。
箱根の甘さここにあり
七曲りを過ぎると、右手に甘酒茶屋が見えてくる。江戸時代から続く名店だ。死ぬほど寒くて甘酒が飲みたかったが、こんなところでのんびり油を売ったり糖分を吸ったりしていたら、燃費ツーリングに狂った鬼編集 ヒゲ山田モジャオくんにどんな大目玉をくらうかわからない。泣く泣くあきらめ、芦ノ湖畔をめざした。
寒気にガタガタ震えながら芦ノ湖畔に到着。そろそろ昼過ぎだから、コンビニで小休止をとることにした。ついでに缶入り甘酒を買って体をあたためることに。
昭和の流行歌『お座敷小唄』には「富士の高嶺に降る雪でも、京都の街に降る雪でも、雪にかわりはない」みたいな超乱暴な主張を繰り広げる一節があったが、箱根の名店の甘酒でも、コンビニの甘酒でも、(中身はぜんぜん違うけど)甘酒にかわりはないのもまた事実。バカ舌のタカハシに限っては、まあまあこれで十分なのだ。
三島へのスーパー・ダウンヒル
午後2時、箱根をあとに国道1号の爽快なワインディングを下り、三島市街をめざした。晴れてさえいれば、この道は季節を問わず絶景ルートと呼ぶにふさわしい。
沼津バイパス入口から国道1号を離れ、海沿いを走る静岡県道380号へ乗り換えた。見渡す限りの松原を抜けてひたすら西へ。少しずつ日差しが黄色くなりはじめる頃、ようやく富士市にたどりついた。
夕やみ迫る田子の浦
夕やみ迫る海辺の道を、タカハシとモンキー125は田子の浦港へ。ぐるっと港を回り込み、「ふじのくに田子の浦みなと公園」に入ったところで、フューエルメーターの残目盛りがついにラスイチに。トリップメーターは162.0kmをさしていた。
田子の浦を発ち、駿河湾を見晴らす海沿いの国道1号で、落日に追いすがるように静岡市内へ。ビジホに入ったときにはもうすっかり夜になっていた。
日本橋からの距離186.9km、本日の走行距離92.3km、フューエルメーターは点滅なしの残1目盛りだった。