気分はスポーティ。足を前方に踏ん張れるフロアデザインが良い!

フレッシュで若々しい、スタイリッシュなゼロハンスクーター|スズキ・アドレスV50試乗

アドレスV50のルーツを辿ると1887年にさかのぼる。当時は2ストロークエンジン搭載車。元気の良いスポーツスクーターとして登場したアドレスが初代だ。そして現在はホンダタクトやヤマハJOGといったライバル各社の人気シリーズとともに、50ccスクーターを牽引する存在となっている。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)/近田 茂(CHIKATA Shigeru)

※2019年03月09日に掲載した記事を再編集したものです。
価格や諸元、カラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。

スズキ・アドレスV50……174,960円

 今回の試乗車は2018年12月21日にレッツと共にブルー系の追加色を発表。新色はマットステラブルーメタリック。他にトリトンブルーメタリック、グラスシャインブラック、そして試乗車のスプラッシュホワイト、以上4色が揃う。
 このアドレスV50はレッツの兄弟車だ。エンジンやフレーム、足周り等の基本部分は共通。しかしボディパーツは全てオリジナルデザインである。スラントしたノーズに始まり、ヒップアップでフィニッシュするボディサイドのキャラクターラインは綺麗なV字を描く。フロントフェンダーもカウル一体型のフレームマウント式。その第一印象はスタイリッシュで若々しい。スズキの広告展開でもスマート&スポーティをアピールしており若い人がメインターゲットだろう。

 搭載エンジンはSEP(スズキ・エコ・パフォーマンス)と命名された同社独自の先進技術投入を誇る。燃焼効率と、ムービングパーツの抵抗削減を徹底追求したのが特徴。長いコンロッドの採用はピストンがシリンダーの中で往復運動する時の摺動抵抗が軽減できる。ボア・ストロークは39×41.8mmのロングストロークタイプ。強制空冷式SOHC2バルブの単気筒だ。ホンダやヤマハのライバルと比較するとパワー/トルクは控えめなデータだが車両重量は装備で74kgとそれほど重くないのが特徴。ボディサイズもコンパクトで親しみやすいのである。

性能はレッツと同じだけど気分はスポーティ

 取り扱いは実に軽快。ライディングポジションにつくとハンドルグリップが若干手前に絞られた印象で、気持ち脇が閉まる感じ。フットボードはフラット面が前下がり傾斜でステップスルータイプだが、センター部分は前後長が狭い。しかし両足を置く左右部分は前方の上り斜面まで含めると前後長が長く、足の置き場に自由度がある。
 両足を前方に突っ張ると、急制動時でも上体を支えやすくなる点が見逃せない。ニーグリップの利かないスクーターではこれが重要なポイントだ。

 足を突っ張る事と腹筋と背筋のバランスでハンドルから力を抜く正しい操縦操作が可能となる。これが叶わないと、いざという時に上体を支えるにはハンドルにしがみついてしまい自由な操舵が阻害される。
 その意味でアドレスV50はライダーが積極的にスクーターをコントロールしようという意志に応えてくれるだけの素養が備わっている。早い話スポーティな走りを楽しみたい気分になるし、それを許容してくれるだけの操縦性が備わっているわけだ。

 決して推奨するわけではないが、チョットばかりハードなコーナリングやブレーキングも危なげなくこなすことができるのである。これはライダーとスクーターとの一体感を高めることを可能としたライディングポジションの成せる技。スポーティスクーターとしてのキャラクターを保ってきたアドレスV50らしいポイント。

 市街地走行のどんな場面でも扱いは軽快そのもの。動力性能的にはごく普通のレベルながら、走っている時が単なる移動時間ではなく、スクーターの操縦を楽しむ時間に変えてくれたのが印象的だった。改めてゼロハンスクーターに乗るワクワクを再認識させられた想いがしたのである。

ディテール解説

フロントのフェンダーはカウルと一体化されたフレームマウント方式。10インチサイズのスチールホイールにはドラムブレーキを採用。ワンカムのリーディング&トレーリングシュータイプだ。
燃焼効率とフリクションロスの低減化が徹底されたSEPエンジン。レッツのパワーユニットと共通だ。
跳ねあげられてフィニッシュするサイドのヒップアップラインと斜めに降りてくるストレートフェンダーが印象的。後輪は左側片支持方式。右側のすぐ脇にマフラーを備える。
フロントインナーラックの許容重量は1.5kg。たっぷりと余裕のスペースがある。フロントフックも1.5kgまでOKだ。
白い文字盤に黒い文字表示と赤い針。速度計と燃料計を並べたシンプルなデザインでなかなか見やすい。3000Km毎のオイル交換時期を知らせてくれる工夫もある。
シート下のメットインスペース。底面に収納方法が図柄で表示されている。
ヘルメットはいつものSHOEI製 J-FORCE Ⅳ。ご覧の様に横向きで収納する。例外はあるが、フルフェイスでも入れられる。積載時の許容重量は10kg。
いたって一般的なハンドル左側スイッチ。上から順にヘッドライトの光軸上下を切り替えるディマースイッチ。プッシュキャンセル式のウインカースイッチ。そして下の丸いのがホーンボタンだ。
ハンドル右側は一つの丸いスイッチのみ。エンジン始動用のスターターボタン。ブレーキレバーを握ったまま操作する。キルスイッチは無い。
クリアレンズが採用されたテールのコンビネーションランプ。標準装備されたリヤキャリアは細めのスチールパイプ製。許容荷重は3kgだ。

足つき性チェック(ライダー身長170cm/52kg)

シート高は710mm。車体の幅もスマートに仕上げられているので、ご覧の通り足つき性は問題ない。車重も軽く、車体を支える感覚はとても気楽だ。

主要諸元

型式 2BH-CA4BA
全長 / 全幅 / 全高 1,670 mm / 620 mm / 1,005 mm
軸間距離 / 最低地上高 1,150 mm / 105 mm
シート高 710 mm
装備重量 74 kg
燃料消費率
 国土交通省届出値:定地燃費値 66.0 km/L (30km/h) 1名乗車時
 WMTCモード値 53.4 km/L (クラス1) 1名乗車時
最小回転半径 1.8 m
エンジン型式 / 弁方式 A409 ・ 強制空冷 ・ 4サイクル ・ 単気筒 / SOHC ・ 2バルブ
総排気量 49 cm3
最高出力 2.7 kW 〈3.7 PS〉 / 8,500 rpm
最大トルク 3.4 N・m 〈0.35 kgf・m〉 / 7,000 rpm
燃料供給装置 フューエルインジェクションシステム
始動方式 キック ・ セルフ併用式
潤滑油容量 0.8 L
燃料タンク容量 4.8 L
クラッチ形式 乾式自動遠心シュータイプ
変速機形式 Vベルト無段変速
フレーム形式 アンダーボーン
ブレーキ形式(前 / 後) 機械式リーディングトレーリング
タイヤサイズ(前 / 後) 80/90-10 35J
乗車定員 1 名
排出ガス基準 平成28年国内排出ガス規制に対応

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…