ホンダCT125ハンターカブで500km×2日|高速道路を走れなくても余裕の一方で、気になるトコロもありました。|1000kmガチ試乗2/3

高速道路が走れない125ccで、500km×2日という行程に不安がなくはなかった。とはいえCT125は、どんな状況にも柔軟に対応でき、ストレスがほとんど溜まらないので、目標値のクリアは楽勝だったのである。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

ホンダCT125ハンターカブ……440,000円(消費税込み)

CT125の軸間距離:1255mm/装備重量:120kgという数値は、現代のホンダ製水平単気筒車の中で最大にして最重量。ちなみに、スーパーカブ125は1245mm/110kgで、最新作のダックス125は1200mm/107kg。

いつもの感覚でイケそうな予感

 第1回目に記したように、1週間~10日前後の期間で目標をクリアしている普段とは異なり、今回のガチ1000kmは一泊二日で行った。その理由は、自分が年に数回のペースで行っているハードめのツーリングと同様の使い方をして、どんな印象を抱くかを知りたくなったからである。

 もっとも、高速道路が走れない125ccで、500km×2日という行程に不安がないわけではなかった。とはいえ、常日頃から県道や農道や舗装林道がメインのツーリングに出かけている僕は、過去にCT125ハンターカブ(以下、CT125)を何度か試乗した段階で、このバイクならいつもの感覚でイケるんじゃないか、という予感がしていたのだ。

すべてが気軽だから、ストレスが溜まらない

 そして僕の予感は大正解で、一泊二日で1000kmはまったくツラくなかった。CT125はどんな状況にも柔軟に対応でき、ストレスがほとんど溜まらないので、限界を意識することなく、いくらでも走り続けられそうなのである。

 もちろん、ロングランを前提にして開発されたツアラーなら、そういう印象を抱くことは珍しくないだろう。とはいえ、乗るにあたって気構えが必要になるツアラーとは異なり、車格が小さく、スロットル操作がイージーで、燃費が驚異的に良好なCT125は、とにかくすべてが気軽で、普段は250cc以上のバイクに乗ることが多い僕は、CT125のツアラーとしての資質にしみじみ感心してしまったのだ。

 道中で最も印象的だったのは、初日の20~21時頃に走った箱根峠。伊豆半島一周を終えてカメラマンと別れ、神奈川県小田原市のコンビニで休憩した僕は、宿泊場所に関して、経費節減策として東京の自宅に戻るか、翌日の動きやすさを考えて静岡県沼津市にするかを考えた末に、後者を選択した。125ccで小田原から沼津に向かうには、標高846mの箱根峠を超えなくてはならないのだが、走行開始から15時間以上が経過していたにも関わらず、この時点での僕の心身には余裕があったのだ。ちなみに、夜の箱根峠でもCT125は至って快適で楽しく、沼津の市街地に到着したときは、ちょっとした達成感を味わうことができた。

長時間の試乗で気になった要素

 さて、ここまでの文章は第1回目に続いてベタ褒めになってしまったが、実際にロングランをしてみると、いろいろと気になる点が出てきた。具体的な話をするなら、身長182cmの僕の体格だと、シートの着座面を10cmほど後方に伸ばしたくなったし(ふと気づくと、リアキャリア前方のアシストバーに尻が乗っていることが何度もあった)、前後ショックはもう少しダンパーに仕事をして欲しい。

 また、オフロードでの坂道停車が不安なこと(ギアを入れても車体が後退してしまうので、プロ仕様のパーキングブレーキが欲しくなった)、昨今のバイクでは定番になったギアポジションインジケーターと時計がメーター内に存在しないこと、ドライブチェーンのシャリシャリ音が巡行時の心地よさを阻害することも、個人的には気になった要素である。と言っても、そのあたりは購入後のカスタムで解決できるので、声を大にして言うほどの問題ではない。

 ところで、気になる点とはちょっと違う話になるものの、CT125に対して、高速道路が走行できる126cc以上、理想的には150cc仕様の登場を期待している人が、日本には大勢いると思う。かく言う僕もその1人で、以前から自分がオーナーになったら、アフターマーケットのボアアップキットを装着して軽二輪登録しようと考えていたのだが……。

 高回転域を維持して走るとそれなりに過大になるエンジンの振動、高速域では盤石とは言い難い車体の安定性を考えると、現状の基本構成を維持したままの排気量拡大仕様を、ホンダが販売するのは難しいだろう。もちろん世の中には、すでにボアアップ仕様のCT125で高速走行を楽しんでいる人が存在するけれど、従来のホンダの基準で考えると抜本的な改善、エンジンはバランサーの追加やラバーマウント化といった振動対策、車体はフレーム+前後サスの強化やディメンションの見直しが必要になって、そうすると現状のCT125の魅力の何割かは失われそうな気がする。

ちょうどいい運動性能

 CT125に何を求めるかは人それぞれだが、僕が今回の試乗で改めて感心したのは、峠道における運動性能の高さだった。他のスーパーカブシリーズとは異なり、このバイクはフロントまわりの信頼性が抜群なので、コーナー進入時の自由度が高いし、高めの重心のおかげなのだろうか、旋回はクルリンという印象。そしてコーナーの立ち上がりでアクセルを開ければ、どんな回転域からでも濃厚なトラクションが体感でき、車体がグングン前に進んでいくのだ。

 また、勾配の急な上り坂で嬉しかったのは、アクセルを全開にしても、“の、のぼらない……”と感じる場面がほとんど無かったこと。気化器がインジェクションになった今どきの125ccで、そんな印象を抱くことはめったにないのだけれど、かつての4スト125ccキャブレター車を知る身としては、CT125の力強さは隔世の感がある。もっとも、上り坂で遅い4輪をサクッと抜けるかと言うと、そこまで力強くはないし、調子に乗って飛ばし始めると、徐々に足まわりが頼りなくなってくる。でもパワフル&盤石な大排気量車に乗っていると、ときとして運転が雑になることがある僕は、自分にとって“ちょうどいい”のはこのくらいの性能かもしれない……という印象を抱いた。

 そして“ちょうどいい”と言えばもうひとつ、オフロード性能である。ツーリングで遭遇する未舗装路を走るのが大好きでも、オフロードの腕前が万年初~中級の僕は、これまではヤマハのセローを理想のアドベンチャーツアラー、と勝手に位置付けていた。でもCT125は、セローより気軽に未舗装路に入れるうえに、僕の力量とペースならエンジンにも車体にも大きな不安を感じないのだ。

 と言っても、単純なオフロード性能はセローのほうが確実に上なのだが、車格が小さくて車重が軽く、転倒シーンが想像できないCT125のほうが、見方によっては融通が利く。いずれにしてもCT125のオフロード性能は、少なくとも僕のツーリングでは十分だったのである。

明日も明後日も走り続けたい

 このツーリングはもう終わっちゃうのか……。試乗2日目の帰路で自宅に向かっている最中、僕はそんな気持ちになっていた。高速道路を使って遠方に出かけるケースは別として、今回のようにチマチマした県道や農道や舗装林道をメインで走っていると、2日でお腹いっぱいになることが少なくないのだけれど、CT125の場合はまだ腹八分目。できることなら、明日も明後日も走り続けたい。

 もちろん、どんなバイクにそういう印象を抱くかは人それぞれで、CT125の性能に物足りなさを感じる人は大勢いるだろう。とはいえ、普段の自分のバイクの楽しみ方、年を経るごとに衰える自分の体力、そして我が家の財政状況などを考えると、僕にとっての現行車のベストはCT125かもしれない……という気がしているのだった。

リアキャリア下面の新気導入口と左側サイドカバー内に収まるエアクリーナーボックスは、CT110の意匠を再現。なお1960年代以前のCT/ハンターカブシリーズの新気導入口+エアクリーナーボックスは、ヘッドパイプ後方が定番だった。

主要諸元

車名:CT125ハンターカブ
型式:2BJ-JA55
全長×全幅×全高:1960mm×805mm×1085mm
軸間距離:1255mm
最低地上高:165mm
シート高:80mm
キャスター/トレール:27°/80mm
エンジン形式:空冷4ストローク単気筒
弁形式:OHC2バルブ
総排気量:124cc
内径×行程:52.4mm×57.9mm
圧縮比:9.3
最高出力:6.5kW(8.8PS)/7000rpm
最大トルク:11N・m(1.1kgf・m)/4500rpm
始動方式:セルフスターター・キック併用式
点火方式:フルトランジスタ点火
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式4段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:2.500
 2速:1.550
 3速:1.150
 4速:0.9231・2次減速比:3.350・2.785
フレーム形式:バックボーン
懸架方式前:テレスコピック正立式φ27mm
懸架方式後:スイングアーム・ツインショック
タイヤサイズ前後:80/90-17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:120kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:5.3L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:61.0km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス1:67.2km/L(1名乗車時)

著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…