ヤマハのニューフェイスは王者PCX160に肉薄できたのか?

ヤマハXフォースか、それともホンダPCX160か。細部を見比べながら、じっくりと試乗してみた。

2022年6月、ヤマハからリリースされた軽二輪スクーターのXフォース ABS。155ccの新世代ブルーコアエンジンは可変バルブ機構VVAを採用し、これを原付二種のシグナス グリファスをベースとした鋼管フレームに搭載する。この新顔であるXフォースを、軽二輪スクーター界でトップの販売台数を誇るホンダ・PCX160と対決させてみた。果たして結果やいかに。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

まずはXフォースとPCX160の違いをチェックしよう

台湾のフォース2.0が車名をXフォース ABSに変えて日本のラインナップに登場。発売日は2022年6月28日で、価格は39万6000円。ホイールベースはPCX160より25mm長い1,340mmだ。
2021年のフルモデルチェンジでPCX150からPCX160へ。2022年はカラーバリエーションを変更している。価格はXフォースより1万1000円高い40万7000円で、ヤマハ・NMAX155と同額。
Xフォースは可変バルタイ機構や前後独立式ABS、スマホ連携機能がアドバンテージと言える。対するPCXはシート高が51mmも低いほか、燃料タンク容量が2ℓ多いこと、メットインスペースの広さ、アイドリングストップやスマートキーの採用などでXフォースをリード。

スタートダッシュのPCX160、VVA効果で中速域から伸び上がるXフォース

原付二種のシグナス グリファスに続き、軽二輪クラスにXフォース ABSというニューモデルを投入したヤマハ。幅の広いバーハンドルやフラットなフロアボード、アグレッシブなスタイリングなどが特徴で、同系の155ccブルーコアエンジンを搭載するNMAX155とうまく差別化を図っている。

そんなXフォースを、軽二輪スクーター界でトップを快走するホンダ・PCX160と直接乗り比べることで、立ち位置を明確にしようというのが今回の企画だ。ちなみに国内での年間販売計画台数は、PCX160の8,000台に対してXフォースは3,000台と発表されており、その開きは小さくはない。

まずはエンジンから。両車ともスターターモーターとジェネレーターの機能を一体化したシステム(ホンダ:ACGスターター、ヤマハ:スマートモータージェネレーター)を採用しているため、始動時の音は非常に静かであり、その後に続くアイドリング時のサウンドも、交通量の多い場所では聞こえないほどに抑えられている。なお、PCX160はオンオフ可能なアイドリングストップシステムを採用するが、Xフォースには装備されていない。ちなみに同系エンジンのNMAX155は採用しているので、単純にコストの問題だろうか。

停止状態からスロットルを開ける。どちらもすぐに遠心クラッチがつながり、そこでの不快な振動はなし。PCX160はハンドルポストをラバーマウントしているからか、体に伝わる微振動がより少ない印象だ。停止状態からの加速感はPCX160の方が力強く、スロットルレスポンスがいいこともあってキビキビと反応してくれる。対してXフォースは、VVAがローカムからハイカムへと切り替わる50km/h付近から伸び上がるような加速を見せ、その勢いは80km/hあたりでやや穏やかになるものの、このエンジンフィールはスポーティと表現できるものだ。

なお、全速度域において耳に届くノイズが少ないのはPCX160の方であり、裏方に徹した上質なエンジンと言える。対するXフォースは、パワーフィールを含めてエンジンの主張が強く、それを操ることをダイレクトに楽しめるのが特徴だ。


シャシー剛性に大差。Xフォースはライダーの操縦に対して従順だ

エンジン以上に違いを感じたのは、フレームを中心としたシャシー剛性の違いだ。Xフォースを初めて試乗したときはそれほど気にならなかったが、PCX160と乗り比べたことでステアリングヘッドのブレの大きさを実感することに。特に荒れたアスファルトでは、フロントフォークが作動する前にステアリングヘッドが前後左右に動いてしまい、路面からの振動がダイレクトにハンドルを通じて伝わってくる。これに対してPCX160は、同じ場所を走っても常に落ち着いており、フロントフォークが整然と動いてショックを吸収しているのが分かる。フロアトンネルの有無がそのままフレーム剛性の違いに現れており、この2機種に限らずスクーターを選ぶ際に知っておいて損はないだろう。

加えてハンドリングも大きく異なり、メーカーの考え方の違いが如実に表れている。ホンダのPCX160は、小難しい操縦方法を考えなくても、視線を送りさえすればコーナーを曲がれるほどイージーであり、どんなに体が疲れていても必ず目的地に着けるという安心感が最大の特徴だ。これに対してヤマハのXフォースは、イン側のハンドルグリップを軽くプッシュしたり、荷重移動を意識するなど何かしらの操縦が必要であり、それによって旋回力の高低をコントロールできる点は「ヤマハハンドリング」と言えるのかもしれない。もちろん、濡れた路面などに萎縮して車体を倒せないでいると当然曲がらないわけで、コンディションが悪化するほどPCX160のイージーさが際立ってくる。それに、ホイールベースが25mm短いこともあってか、旋回力もPCX160の方が高いと感じることが多かった。

ブレーキについては、ABSをフロントのみに採用するPCX160に対し、Xフォースは前後独立式なので、安心感という点ではXフォースが一歩リードする。PCX160は、Xフォースよりもブレーキディスクが小径ながら、軽いレバー入力でも高い制動力を発揮してくれ、握力の低いライダーでもしっかり減速してくれる。これに対してXフォースは、同等の制動力を発揮するにはある程度強めのレバー入力が必要で、PCX160からの乗り換えるとその差に驚く。とはいえ、コントロールエリアの広さが狙いであれば、Xフォースのブレーキ特性も正解と言えるだろう。

Xフォースは、アグレッシブなスタイリングに合致したスポーティなエンジン特性やハンドリングを有しており、PCX160とは明らかにコンセプトが異なることを確認した。車体構成や各種装備などを考えると、PCX160の直接のライバルはNMAX155ではあるが、乗り降りがしやすいフラットなフロアボードが好きという人にとっては、Xフォースは魅力的な1台に映るだろう。


ディテール比較

ホイール径はXフォースが前後13インチ、PCX160はフロント14/リヤ13インチ。フロントのブレーキディスクはXフォースの方が大径だが、軽いレバー入力でもしっかりと制動力が立ち上がり、直感的に利くと感じられるのはPCX160の方だ。さらにPCX160はフロントフォークの中心線よりも車軸が前方にあるリーディングアクスルを採用している点にも注目を。
Xフォース:6,000rpm付近を境に吸気カムをローとハイに切り替える可変バルブ機構のVVAを採用。NMAX155と同系エンジンではあるが、アイドリングストップは非採用。トラコンはオンオフ可。
PCX160:2021年のフルモデルチェンジでSOHC2バルブから4バルブへ。さらにボア×ストロークも変更され、排気量は149ccから156ccへと微増している。最高出力は15psから15.8psへと向上。
Xフォース:フロント左側に給油口あり。コンビニフックがあるのはフラットなフロアボードを持つスクーターの特権だ。メインキーはシャッター付きで、その右側にアクセサリー電源を備える。
PCX160:スマートキーを採用しており、シートおよびフューエルリッドのロック解除はシーソーボタンで行う。ハンドルポストはこのPCX160からラバーマウントとなり、微振動を軽減する。
Xフォース:シート下のラゲッジスペースの容量は約23.2ℓ。シートヒンジの両サイドにはヘルメットホルダーを装備する。純正アクセサリーでETC車載器を用意している。
PCX160:ラゲッジスペースの容量は30ℓで、ヘルメット以外にもレインスーツなどが余裕で収納できる。荷室の側面に見えているのは純正アクセサリーのETC2.0車載器だ。
Xフォース:フロントポケットはフタのないタイプで、500mlのペットボトルをこのように収納できる。アクセサリー電源が外部にあるので、雨天時のスマホ充電には注意が必要だ。
PCX160:こちらはリッド付きで、ロック機構がないので開閉は容易だ。同じく500mlのペットボトルが収納できる。アクセサリー電源はこのポケットの左上に設けられている。

ヤマハ X FORCE ABS 主要諸元

認定型式/原動機打刻型式 8BK-SG79J/G3S5E
全長/全幅/全高 1,895mm/760mm/1,120mm
シート高 815mm
軸間距離 1,340mm
最低地上高 125mm
車両重量 130kg
燃料消費率 国土交通省届出値 
定地燃費値 48.1km/L(60km/h)2名乗車時
WMTCモード値 40.9km/L(クラス1)1名乗車時
原動機種類 水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ
気筒数配列 単気筒
総排気量 155cm3
内径×行程 58.0mm×58.7mm
圧縮比 11.6:1
最高出力 11kW(15ps)/8,000rpm
最大トルク 14N・m(1.4kgf・m)/6,500rpm
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 1.00L
燃料タンク容量 6.1L(無鉛レギュラーガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式 12V、6.5Ah(10HR)/GT7B-4
1次減速比/2次減速比 1.000/10.208 (56/16×35/12)
クラッチ形式 乾式、遠心、シュー
変速装置/変速方式 Vベルト式無段変速/オートマチック
変速比 2.281~0.717:無段変速
フレーム形式 アンダーボーン
キャスター/トレール 26°30′/99mm
タイヤサイズ(前/後) 120/70-13 53P(チューブレス)/130/70-13 57P(チューブレス)
制動装置形式(前/後) 油圧式シングルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック/ユニットスイング
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ ハロゲンバルブ(12V、55W×2)
乗車定員 2名
製造地 台湾

ホンダ PCX160 主要諸元

車名・型式 ホンダ・2BK-KF47
全長(mm) 1,935
全幅(mm) 740
全高(mm) 1,105
軸距(mm) 1,315
最低地上高(mm) 135
シート高(mm) 764
車両重量(kg) 132
乗車定員(人) 2
燃料消費率(km/L)
 国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 53.5(60)〈2名乗車時〉
 WMTCモード値(クラス)45.2(クラス 2-1)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m) 1.9
エンジン型式 KF47E
エンジン種類 水冷4ストロークOHC4バルブ単気筒
総排気量(cm3) 156
内径×行程(mm) 60.0×55.5
圧縮比 12.0
最高出力(kW[PS]/rpm) 12[15.8]/8,500
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 15[1.5]/6,500
始動方式 セルフ式
燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
燃料タンク容量(L) 8.1
変速機形式 無段変速式(Vマチック)
タイヤ
 前 110/70-14M/C 50P
 後 130/70-13M/C 63P
ブレーキ形式
 前 油圧式ディスク(ABS)
 後 油圧式ディスク
懸架方式
 前 テレスコピック式
 後 ユニットスイング式
フレーム形式 アンダーボーン
製造国 ベトナム

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…