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KTM・300EXC……1,341,000円(消費税10%を含む)
エンデューロ界の頂点にあるこのKTM300EXC、2サイクル300cc(293.2cc)のケースリードバルブエンジンを搭載し、掃気ポートへ燃料を噴射するTPI、ならびに排気デバイスも装備している。
2023年モデルはカラーリングも一新して外観はさらに精悍になった。フレームはクロモリ鋼のクレードルフレーム、サブフレームは900g以下という軽量アルミ製となっている。
ハンドルバーはNEKEN製のアルミテーパーを採用し、取り付け位置は4箇所に変更可能と、ライダーの好みでポジション変更できる。サスペンションは前後ともWP製で、フルアジャスタブル。
リヤユニットはプログレッシブ・ダンピングシステム(PDS)を採用している。当然なのかもしれないけど、車体構成や装備品は全て一級品で固められており、それらのバランスがしっかり取れていることでエンデューロ界の頂点に君臨しているわけだ。
さて跨ってみると旧モデルよりも2cm弱シート高が上がったので、足つきは写真を見ての通り爪先接地がやっとの状態。跨った瞬間に「あれ?去年のモデルより足着かないよ。もしかして自分が歳で縮んだのか?」と思ったから。昨年も書いたけれど、平均的な日本人ライダーにはちょっときつい。特にトライアル的な場所を走るには。
ま、それはそれとしてセルで簡単に始動するエンジン。その吹け上がりはシャープで伸びも十分、パワーもトルクも十分以上!しかも低回転でも粘ってくれるので、言い方は極端だけどトコトコと走る事も可能だ。何より感心したのは、どんな回転でもアクセルに忠実に反応する事と、トルク特性がフラットなので扱いやすいという点。パワーバンドがとにかく広いのである。
エンデューロマシンなので、様々な路面を走らなくてはならない。モトクロッサーの様に作られたコースをハイスピードで走るだけではないから、それこそトライアル的な障害物からハイスピードまで全てをこなさなくてはならない。なので、こういうフラットなトルク特性とアクセルにどんな回転からでも忠実なレスポンスが非常に大切になるわけ。まさにこの300EXCの2サイクルエンジンがそれであったのだ。
サスペンションはやはり硬めに感じたが、これは先に書いたようにフルアジャスタブルなのでセッティングすれば解決する。取り回しは良いしハンドリングも素直。直進性は安定しているのに、曲がり始めれば素直に曲がって行く。車重は半乾燥で103.9kg(装備で110kgくらいか)なので十分軽い。その他クラッチ操作やチェンジのカチッとした感触、ブレーキのタッチなど何も不満は感じず初めてでもすぐに馴染んで乗れてしまう。シッティングでのリヤブレーキペダルは踏みづらいけど、他車でも書いたようにすぐ慣れるので無問題だ。
短い試乗時間、限定されたコースでの試乗であったが、このマシンの戦闘力の高さは十分理解出来た。私自身はトライアル肌のライダーだけど、このマシンのオーナーになれたらそれはそれは楽しいバイクライフを送れると思ったものだ。レースに出場しなくても凄く遊べるから。かっ飛ばさなくてもトレッキング的な山の中を走るの楽しいでしょ。そしてたまにはモトクロスコースを走って爽快感を味わう。そういう使い方にも適したマシンだった。もし自分のマシンになったらシート高は下げるけどね。
ディテール解説
足つき性チェック(ライダー身長172cm/体重85kg)
KTM・300EXC 主要諸元
エンジン型式:水冷2ストローク単気筒 EMS:Continental製 TPI System 総排気量:293.2cc 始動方式:セルスターター式 変速機:6速 燃料供給方式:Dell’Orto 製 スロットルボディΦ39mm サスペンションF:WP 製 XPLOR 48 倒立フォーク サスペンションR:WP 製 XPLOR PDSモノショック タイヤF / R:90/90-21” / 140/80-18” 車輌重量:約103.9kg(半乾燥) ※ 競技専用車輌
ライダー紹介
村岡 力
1956年生。
70年代スタントマンから雑誌業界へ入り、ずっとフリーランスのライター&カメラマン。2輪メインですが4輪もし時々航空関係も。モータースポーツは長年トライアル1本で元国際B級。現在は172cm85kgの重量級。業界ではジッタのアダ名で通ってます。