目次
ベータRR4T390……1,430,000円(消費税10%を含む)
2023年モデルに共通したオールレッドのカラーリング、新デザインのラジエターシェラウド、フロントサスペンションの改良などを備えている。この390は350をベースに、ボアアップではなくストロークをアップしたエンジンを搭載している。ボアは88mmで共通だが、ストロークは350の57.4mmから63.4mmへと変更。数値は発表されていないが、これによってトルクアップしているのが分かる。
DOHC4バルブ、水冷単気筒、燃料噴射にセル始動などは350と同じ。トラクションコントロール(ハードとソフト、晴れ用、雨用)も同じく装備している。長いダクトジオメトリを備えたエキゾーストヘッダーパイプへと変更もされており、低回転でのレスポンス改善と中回転でのトルクアップも実現している。これに合わせてRR4Tシリーズには新しいエンジンマッピングが採用され、パワーカーブはより均一になった。車体周りは350もこの390も共通なので、シート高は940mm車重は乾燥で107kgとなっている。さて他メーカーには無い390という排気量だが、その差は一体何なのか興味がある。
セル一発で始動し、少し図太い排気音を発する。ローでスタートするとやはり350とはまるで違う加速感だ。500ccクラスの強大なトルクや加速とは違うものの、明らかに図太い速度の乗り。
ガバッと一気にアクセルを開ければフロントは浮いて来るし、それはセカンドでも同じ。ちょっと体の体重移動をすればサードでもクラッチ無しで浮いて来る。おお、軽い車体にこのトルクとパワーは浮かうかしていられない。が、しかし凶暴では無くトルクその物は高いのだけど穏やかと言っては言い過ぎだけど、あくまでもフレンドリーなもの。つまりあくまでもフラットな特性であり、暴れる様子は感じない。
ただ、市販車のようにスロットル操作からエンジンが反応するまでのタイムラグは皆無なので、体が遅れないようにしたい。今回はグリップの悪い路面であったので、スピンしながらもグリップして前に進むけども、ラフなスロットルワークでは思ったように速度が乗らず路面をかっぽじるだけになる。低回転での粘りは強いから、回転を上げ過ぎずに中速回転までを旨く使えばグリップしやすかった。さて排気量から来る慣性力だが、車重は350と同じなのに考えているより前に進んでしまったり、アクセルを閉じた時も思ったほど減速しなかったりを感じる時があるのだ。実際には350と変わらないのだけど、感覚的に慣性を感じてしまうのだ。これは390とは言え大排気量の部類に入るエンデューロマシンなので、最初だけ頭に入れておく必要がある。少し乗り込めば体が慣れてしまうので無問題となるが。全体としてこの390は非常に乗りやすい、扱いやすいまとまりとなっている。350から一回り性能をアップし、それでいながらフレンドリーな特性と言えるのではないか。全開時に高回転まで回ると、それは強烈なパワーで飛んで行くのでちゃんと気合を入れておかないと痛いしっぺ返しに遭うのは確実。勿論素晴らしいサスペンションがあるのでマシン任せでもショックは吸収してくれるが、ライダーがなびいている状態では性能を発揮してくれない。
この390、私的には非常にお気に入りだ。エンジン回転を上げないでも楽しく走れ、それでいて速く、速度を出せないセクションでも神経質にならずに取り回せたから。いや~、ベータのエンデューロマシンの仕上がりは高い次元にあることが良く理解出来た今回の試乗でした。
足つき性チェック(ライダー身長172cm、体重85kg)
ディテール解説
ライダー紹介
村岡 力
1956年生まれ。
70年代スタントマンから雑誌業界へ入り、ずっとフリーランスのライター&カメラマン。
2輪メインですが4輪もし時々航空関係も。モータースポーツは長年トライアル1本で元国際B級。
現在は172cm85kgの重量級。業界ではジッタのアダ名で通っています。