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ホンダ・Dio110……242,000円(白、銀)、245,300円(青、黒)
車体色は4種類を用意。125ccのPCXより排気量は小さいものの車重は36kgも軽いため、パワーウエイトレシオはPCXの10.6kg/psに対してディオは11.0kg/psと、ほぼ肩を並べる。
芯のあるフレーム剛性と、裏方に徹したエンジンに感心する
Dio110が発売されたのは2011年のこと。110ccなのでリード・EXの水冷エンジンを搭載していると思いきや、新設計の空冷エンジンだと聞いて驚いた記憶がある。発売当時の価格は199,500円。この前年に発売されて大ヒットとなったPCXが299,250円なので、10万円も安く登場したことになる。2015年には燃費性能に優れるeSPエンジンとなり、合わせてアイドリングストップを導入。フレームもパイプ構成を見直すなどフルモデルチェンジした。
今回試乗したのは、2021年に刷新された最新モデルだ。よりロングストローク比としたうえで圧縮比も高めた新eSPエンジン、プレス成型材を使った新型フレームなど、前作以上に手が加えられている。注目すべきは車重で、103kgだった初代から2代目の2015年モデルは100kgとなり、さらにこの2021年モデルは96kgと、モデルチェンジのたびに軽くなっているのだ。近年では稀有な存在と言えるだろう。
さて新型Dio110は、初めて乗るのにもう何年も付き合ったかのように自然だ。ステップスルーデザインなので足を後方へ振り上げることなく乗車でき、車体が軽いので直立させてサイドスタンドを払うまでの動作もスムーズ。この新型からスマートキーシステムが採用されているので、キーを携行していればハンドルロックの施錠/解除もイグニッションのオン/オフもスピーディに行える。こうしたルーティンが滞りなくできるか否かは、足代わりに毎日乗る原付二種スクーターにとって大切な要素だ。
走り出してまず感じるのがフレームの剛性感だ。ステップスルーデザインのスクーターはそのレイアウト上、ステアリングヘッド付近の弱さが露呈しやすいが、新型Dio110にそうしたネガ要素は一切なし。しなりはゼロではないが、芯のあるねじれ方なので高速域でも不安はなく、また縦剛性が高い分だけ前後サスがしっかり働いている様子も伝わってくる。これは大きな進化と言えるだろう。
ハンドリングは、前後14インチホイールによる安定成分が前面に出ており、微速域でもふらつきにくい。そして、車体は軽いけれどもロール方向の動きは軽すぎないので、安心してコーナーへ進入できる。意外と早くにセンタースタンドが接地してしまうが、そこまで寝かし込んでも標準装着タイヤは十分なグリップ力を発揮してくれる。
110ccという絶妙な排気量が軽さの源になっている可能性あり
よりロングストローク比&高圧縮比となったeSPエンジンは、空冷とは思えないほどアイドリング時から静かであり、スロットルを開けた分だけスルスルと滑らかに加速する。右手の急開に対してググッと反応したり、速度の上昇に応じて排気音が大きくなるなど、力強さを感じさせる演出はなし。ゆえにパワーが低いように錯覚しがちだが、実際の加速力は125ccスクーターに負けていない。それもそのはず、パワーウエイトレシオはPCXとほとんど変わらないからだ。そして、公道における原付二種の法定速度=60km/hに近付くほど、体に伝わる微振動と耳に届く排気音がスーッと消えていく。仕事帰りのライダーの疲労を増幅することがない、優秀なエンジンと言えるだろう。
ブレーキは、左ブレーキレバーで前後が連動するコンビシステムを採用している。左右のレバーを同時に操作するようにと公式サイトには書かれているが、実際には左レバーだけでも十分な制動力を発揮してくれる。よって、右手はスロットル、左手はブレーキに集中できるので、個人的には昔から好んでいるシステムなのだ。
剛性がアップしたフレームは125cc化への布石か? などと試乗中に思ったのだが、それによって車重が増えてしまっては本末転倒だろう。純正アクセサリーのトップボックスが装着できるリヤキャリアを標準装着したり、フルフェイスが収納できるシート下のラゲッジボックスを設けるなど、コミューターに求められる要素はほぼ全て盛り込まれている。王者PCXのプレミアム路線とは対照的であり、このコストパフォーマンスの高さは驚きというほかない。