「TRANS・ALP」はアルプス超えを意味する造語。新型アドベンチャーツアラー、ホンダXL750トランザルプを生で見てみた!|大阪・東京モーターサイクルショー2023

かつてラリーレイドマシンのレプリカモデルとして人気だった「トランザルプ」が、最先端のアドベンチャーツアラーとして帰ってきた! 昨年11月の「EICMA2022(ミラノショー)」で発表された「XL750トランザルプ」が、第39回大阪モーターサイクルショー2023にて国内公開されたのだ。完全新設計の水冷OHC(ユニカム)4バルブ並列2気筒754ccエンジンは、軽量・コンパクト・高出力という最新スペック。兄貴分のCRF1100アフリカツインと同格のサイズ感だが、はるかに軽量な仕上がりとなっている。待望の国内販売は5月25日で、価格は126万5000円だ。


REPORT&PHOTO●川島秀俊
NC750Xよりも軽量&ハイパワーに仕上げられたXL750トランザルプ。オフロード性能を高めたオールラウンドモデルで、雄大なスケールのツーリングが楽しめる。

ホンダ・XL750 TRANSALP……1,265,000円(消費税込み)

高速道路も未舗装路も快適にツーリング、最新スペック満載のオールラウンダー

「トランザルプ」という車名を聞いて、懐かしく思う人も多いことだろう。1987年に登場した初代「トランザルプ600V」は、当時人気のパリ・ダカールラリーで活躍したラリーレイドマシン「NXR750」からフィードバックした技術を盛り込み、国内300台限定で発売された。その後、国内専用の400ccモデルが発売されたが、続く2モデルは海外専用だったことから影が薄くなり、2008年デビューの「XL700Vトランザルプ」でシリーズ販売は終了。アルプス超えを意味する造語「TRANS・ALP」の車名は、長らくホンダからラインナップされなかったのだ。そんな歴史あるアドベンチャーモデルが完全新設計のエンジンとフレームを得て復活! 激戦区のミドルクラスで、注目される存在となっている。

エンジン屋のホンダらしい新設計の高性能ユニットを搭載、充実した電子制御とスマホ連携で快適な旅が楽しめる

XL750トランザルプの魅力は、既存のコンポーネントを流用したモデルではなく、完全新設計のエンジンとフレームを採用していることだ。新開発された754cc並列2気筒エンジンは高効率な4バルブヘッドだが、競技モデルのCRF450Rと同じOHCユニカムバルブトレインを採用することで小型・軽量化を実現。カムが1本なのでバルブレイアウトの自由度が高く、高効率なダウンドラフト構造の吸気ポートで91psというハイパワーを実現する。これには吸入気流の速度を高める新機構の渦ダクトやCBR1000RR-Rと同じ高燃圧インジェクター、F1等にも使用するNi-SiCメッキシリンダーでフリクションを低減するなど、数々の最新技術も貢献。二次振動をキャンセルできる270°クランクに効率よく2つのバランサーを組み込み、クランク側も軽量・コンパクトに仕上げているのだ。新設計のフレームはシートレールにも高張力鋼管を用いて軽量化を追求。単体重量はNC750Xが22.2kgなのに対して18.3kgという軽さを実現する。

電子デバイスも最新のスペックで、快適なライディングをアシストする4つのプリセットモード+ユーザーモードからライディングモードを選択可能。リヤブレーキのABSをキャンセルすることもでき、意のままにオフロード走行を楽しむことができる。スマホとBluetooth接続して連携する「ホンダスマートフォンボイスコントロールシステム(HSVCS)」も便利な機能で、ヘッドセットからの音声入力やハンドル左手の4wayスイッチから通話、ナビ、音楽、メッセージの送受信が可能。ETC2.0車載器やUSBタイプC電源ソケットも標準装備するなど、ツーリングに必要な装備は万全だ。なお、クイックシフターは必要な人だけに提供できるようオプションにて設定。軽快なシフトワークを楽しみたい人は、忘れずに装着しよう。大柄に見えても機敏に走れる軽量・ハイパワーな車体は、予想外にフレンドリーな仕上がりとなっている。気になる車両価格は126万5000円で、車体カラーはロスホワイトのみの設定だ。

細い路地や林道でも気軽にUターンできる車格と取り回し性を実現。大柄だが車重は208kgと軽く、ハンドル切れ角42°で最小回転半径は2.6mだ。
新設計の水冷4ストロークOHC(ユニカム)4バルブ並列2気筒754ccエンジンを搭載。91psというハイパワーを誇り、オンロードからオフロードまで緻密な電子制御で快適に走行できる。
フェイス周りは、NC750Xのオフロード版という雰囲気。純正オプションにてハイスクリーンも装着可能だ。前後輪の速度センサーから旋回を感知し、自動でOFFにしてくれるオートキャンセルウインカーを装備する。
フロントにはショーワ製φ43mmSFF-CA倒立フォークを採用し、200mmのストロークを確保。ホイールはオフロード走破性を考慮した21インチのスポーク仕様だ。
リヤサスペンションはホンダ伝統のプロリンクで190mmのストロークを確保。セミブロックパターンのリヤタイヤは150/70-18というサイズを装着する。
機能的でデザイン性にもこだわったアルミリヤキャリアを装備。テールランプはLED仕様で、光を立体的なレンズで拡散する。

主要諸元

通称名:XL750 TRANSALP
車名・型式:ホンダ・8BL-RD16
全長×全幅×全高(mm):2,325×840×1,450
軸距(mm):1,560
最低地上高(mm)★:210
シート高(mm)★:850
車両重量(kg):208
乗車定員(人):2
燃料消費率(※6)(km/L):
国土交通省届出値 定地燃費値(※7)(km/h)…34.5(60)<2名乗車時>
WMTCモード値★…(クラス)(※8)22.8(クラス3-2):<1名乗車時>
最小回転半径(m):2.6
エンジン型式・種類:RD16E・水冷 4ストローク OHC(ユニカム)4バルブ
直列2気筒
総排気量(㎤):754
内径×行程(mm)87.0×63.5
圧縮比★:11.0
最高出力(kW[PS]/rpm):67[91]/9,500
最大トルク (N・m[kgf・m]/rpm):75[7.6]/7,250
燃料供給装置形式:電子式<電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)>
始動方式★:セルフ式
点火装置形式★:フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式★:圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L):16
クラッチ形式★:湿式多板コイルスプリング式
変速機形式:常時噛合式6段リターン
変速比:
 1速3.000
 2速2.187
 3速1.650
 4速1.320
 5速1.096
 6速0.939
減速比(1次★/2次):1.777/2.812
キャスター角(度)★/トレール量(mm)★:27°00´/111
タイヤ:前…90/90-21M/C 54H、後…150/70R18M/C 70H
ブレーキ形式:前…油圧式ダブルディスク、後…油圧式ディスク
懸架方式:
前…テレスコピック式(倒立サス)
後…スイングアーム式(プロリンク)
フレーム形式:ダイヤモンド

■道路運送車両法による型式指定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
■製造事業者/本田技研工業株式会社

※6 燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象、渋滞など)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
※7 定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です。
※8 WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。

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著者プロフィール

山田 俊輔 近影

山田 俊輔

Motor-Fan BIKES 編集長1981年生まれ。身長180cm(モジャモジャを足すと185cm)。初めて…