【05】アフリカに行って砂漠を走ってみた。前歯が欠けた。|田中愛生のアフリカ・エコレース

こんにちは! 田中愛生です。
ご存じの通り、私は2024年開催の「アフリカ・エコレース(AER)」出場を目指して活動しているのですが、なんとスタート時期が当初想定していた2024年3月から今年の12月末に変更されてしまい、大慌てで準備を進めているところです。そこで、今年1月から2月にかけて砂漠走行のトレーニングのためにエジプトへ行ってきました。今回はそのレポートをお届けしたいと思います!

PHOTO・REPORT:田中愛生
こちらが今回のトレーニングで使用したKTM 400EXC。AER本番ではKTM 500EXC-Fを駆る予定です。

アフリカ・エコレース出場を目標にしてからというもの、これまで数多くのパリ・ダカ出場ライダーのもとを尋ねアドバイスを頂きました。皆さんが口を揃えて言うのが「アフリカの砂漠は走ってみないと分からない」ということ。

もともと本番前の事前トレーニングとしてモンゴルやバハ・カリフォルニアに行くつもりだったのですが、どうやら同じ砂漠といってもサハラ砂漠とは砂質がまったく違うみたいなんです。

モトクロスやエンデューロ競技を長くやっていたなら、ぶっつけ本番でも完走することが可能かもしれませんが、正直、いまの私のスキルを考慮すると事前に近い環境でトレーニングしておきたいところです。

どうしようかと悩んでいると、本番で車両をサポートしてくれることになったKTM JAPANに代理店のKTM 埼玉をご紹介そんななか、ラリー車両を購入するため「KTM埼玉」のショップへ行ったら思いがけない展開が待っていました。何とこちらのオーナーさんは過去にファラオラリーに出場されている方で、毎年お客さんを集めてエジプトの砂漠を走るツアーを開催しているというのです。すぐさまアフリカエコレースのため、事前にサハラの砂を体験したい旨を伝えると、現地に車両もあるのでトレーニングにぜひ活用してください、と言っていただきました。。気になる費用を聞いてみたところ、往復の航空券込みで約30万円もあれば二週間滞在できるとのこと。ちょっと信じられないような金額でしたが、実際に調べてみると確かにそれぐらいの費用で何とかなりそうでした。こんなチャンスを逃す手はないと、大急ぎで旅の準備に取り掛かることに。資金捻出のため、オフロード練習用に所有していたホンダ CR150Rも手放しちゃいました。泣

エジプト・カイロまでの航空券はなんと往復10万円のものをゲット。これは恐らく1年でもっとも安い航空券だと思います。ただし、スイスのチューリッヒで約17時間のトランジットがあるので時間はかかります。

トレーニングの拠点となるのはカイロからもっとも近いオアシスとされている(それでも400㎞ぐらい南下する)バハリア・オアシスという場所。ホテルがまた格安で朝夜の食事付きで1日50ドルでした。

現地で用意されていたマシンは「KTM 400EXC」。両足が地面に着かないほどシート高が高く最初は苦戦しましたが(いわゆる「ガストン乗り」で対応しました)、一度走り出してしまえばこっちのもの。ライディングコーチはアミンさんというデザートライディングのスペシャリスト。このアミンさんは67歳でダカールラリーを完走した伝説的なライダー、フランコ・ピコのサポートもしていたという方で、ライディング&メカの技術が高いことはもちろん、教え方もものすごく上手です。

さて、パリ・ダカ(AER)と聞くとまずサラサラの砂漠や砂丘をイメージされる方が多いと思います。ところが実際は土漠や岩場を走ることも多く、イメージされるような砂漠は一部に過ぎず。様々な路面に対応できるスキルが必要です。

憧れの砂丘を目の前にしたときは現実感がなかったですね。なぜ自分はこんな場所にいるのだろうと(笑) 


「砂漠走行はスロットルを開け続けろ」と言われたのですが、まさか発進時からアクセル全開とは思わず、通常の路面の発進時のようにスロットルを開けると、あっという間に後輪が砂に埋まって身動きできない状態になってしまいました。こうなったときのバイクの出し方も一緒に教わりましたよ。

とくに難しいのはデューン(砂丘)の走行。高さのある砂丘を超えるときは垂直に登るのではなく、助走をつけて斜めに駆け上がるんです。砂丘のピークで止まり、向こう側の様子を確認してから斜めに降りるというのがセオリーです。フロントタイヤが砂に取られて転倒しないよう下るときもスロットルをしっかり開けます。
最初は砂丘のピークまで登るのがものすごく怖く、手前で止まってしまい何度も転倒しましたね。しかも砂丘の途中で転倒するとリスタートするのがすごく難しいんですよ。

あと砂漠の気候でビバークすることにも慣れておこうと、テントも持っていきました。日中の気温は25度ぐらいなので過ごしやすいんですが、夜は0度くらいまで下がります。ラクダの毛でできた毛布がとても温かくて気に入ったので、日本に持って帰ってきちゃいました。

大きなケガもなく(前歯が少し欠けましたが)、8泊9日のトレーニングを何とか終了。せっかくエジプトに来たのにピラミッドを見ることもなくひたすらバイクに乗るという(笑)

でも、前に柏秀樹さんがおっしゃっていた通り、日が傾いてくると砂漠がサーモンピンクに染まる美しい風景を見ることができました。風が吹くと砂が舞って空と砂漠の境界がなくなってさらに幻想的になるんですね。

本番までもう時間がないですが、可能なら11月に再訪しようと思ってます。応援よろしくお願いします!

無邪気にアクセル全開で走ろうとしたらご覧のような状態に。こうなってしまうと1人ではなかなか砂から引き出すことが難しい。このまま車体を左右に強く降り、周囲の砂をほぐしてから脱出させます。
アシスタント兼メカニックを務めてくれたアミンさん。ダカールラリーに30回近く出場している伝説的なライダー、フランコ・ピコ選手のパートナーも務める凄い方です。
固いところと柔らかいところが混在しているのが砂漠走行の難しさ。スロットル操作を誤るとたちまちスタックしてしまいます。

現地の食事。ピタパンような薄いパン「アエーシ」と野菜のペースト、煮物、牛肉の煮物などを良く食べました。美味しいです。

今回のトレーニングをサポートしてくれた皆さんとの楽しい食事風景。
砂漠でのキャンプもトレーニングのうち。住む国や言語が違っても共にたき火を囲ればすぐに打ち解けられますね。
日本人の女性が派手なバイクに乗ってきたので、現地の好奇心旺盛な子供たちが集まってきます。
憧れのデューンをついに走行。あまりの急展開だったので何だか夢でも見ているような気分で日々を過ごしていました。
デューンを走るときは登りも下りも開け開け。フカフカの砂でうっかりスロットルを緩めると前輪をとられてご覧のような状態になることも……。
ライディングギア一式をもって出発。ウェアはクシタニさんにサポートしてもらうことになりました。

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