やっぱりフロントホイールは21インチがいい! スズキ・アドベンチャーツアラーの最高峰、Vストローム1050DE試乗記

V ストロームは冒険心が駆り立てられるスズキの旅バイクとして知られている。その上位機種に位置付けられているのが同1050。しかしさらにヘビーデューティーかつ上級の仕上がりを誇る最高峰モデルが、今回の1050 DE である。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●株式会社 スズキ

スズキ・Vストローム1050DE…….1,716,000円(消費税10%込み)

ブリリアントホワイト/パールビガーブルー

チャンピオンイエローNo.2/マットソードシルバーメタリック

既報のVストローム800 DEで記した通り、ネーミング末尾の“DE”は「デュアル・エクスプローラー」から由来したそう。日々の移動手段からツーリングまで、利便性の両立を果たしたモデルと言われている。
クチバシをイメージさせるフロントアッパーフェンダーを持つ一連のスタイリングは同シリーズ共通ながら、やはり1050は立派なスケールを備えロングツーリングも快適にこなせる存在。
そんなVストローム1050については先に報告済みだが、それと比較しても同DEは、さらに堂々たる車体の大きさを誇っている。
まず決定的に異なっているのは前後ホイールがキャストではなくスポークタイプを採用している点。しかも前輪のホイール径は19ではなく21インチの本格的なサイズを履いている。サスペンションの長さも異なりハンドル幅も広い。結果的にVストローム1050DEは同1050より全長は25mm、軸距は40mm長く、全幅は20mmワイド。そして全高、地上高、シート高もそれぞれ35、25、30mm高い。車重も10kg増しの252kg あり、そのボリューム感はひときわ圧倒されるレベルなのである。
また、ホワイトを加えたツートーンのカラーリングを採用。スチールパイプ製のエンジンガードや、アルミアンダーガード(スキッドプレート)が標準装備され、タイヤの選択も含めてオフロードを走る上での機能性が高められている。       
もうひとつ違う点は、フロントスクリーンが小型化された。1050はウインドプロテクションの高い快適性重視のサイズが奢られ、上下位置が簡単に11段調節できる機能も装備されていたが、DEではライディングアクションの邪魔をしない配慮が成された設計。セット位置の高さ調節(3段)は可能だが、調整作業には工具が必要となっている。
その他ダイヤモンドタイプのフレームや、1036ccのV ツインエンジンとミッションは基本的に共通だが、最新の電子制御デバイスであるS.I.R.S (スズキ・インテリジェント・ライド・システム)はより充実した内容が奢られているのである。

軽い操舵フィールと足の良さが光る。

試乗車を目の前にすると、20Lタンクやスケールの大きな車体サイズが印象的。やはり堂々たるボリューム感には圧倒される。
普段使いならスタンダードな1050の方が親しみやすいと思えたのが正直な感想だが、ひと目で区別できるスポークホイールとゴールドのフロントフォークを持つDEのフォルムはまた魅力的。
やはりアドベンチャー系モデルに憧れるライダーならより本格的なDEに乗りたいと思う気持ちも理解できるのである。
足つき性チェックを参照頂きたいが、筆者がDEに跨がると、バイクを支えるのがギリギリの感じ。路面の安定した平地ならOKだが、凹凸や傾斜、滑りやすい場所ではかなり慎重な扱いが必要になり、立ちゴケに対する不安がつきまとう。
ライダーの体格次第では何も問題ない話ではあるが、筆者の体格では、シート高が低めなスタンダードの1050の方が安心感があり、通常のツーリングならこちらをチョイスする。これは偽り無い正直な感想である。
しかしこの足つきの部分を無視できれば、足の長いサスペンションとフロント21インチホイールの装備が大きな魅力を産み出していることも見逃せないのである。
それは悪路へ行かなくても、乗り心地の良さに一段と磨きが掛けられた快適性を実感することができるからだ。
舗装の傷んだ大きめな凸凹に遭遇することは多いが、ギャップ通過時の衝撃吸収性が素晴らしい。スタンダードの1050でも何も不満は感じられなかっが、DEに乗り換えると一段と快適性が増すことに気付く。
舗装路を外れて不整地を行くなら、それが頼り甲斐のある武器となることも想像に難くないのである。さらにワイドなハンドルバーのおかげで、操作性はとても軽快。
取り回しも含めて操舵トルクが軽く、仮に狭い林道でUターンしなければならないようなシーンでも以外と扱いやすかった。操舵感に素直さがあり、狙い通りのラインに乗せて行きやすい感覚。最小回転半径はスタンダードの3mに対して3.1mだが、実用上の扱いやすさに大差は無い。

エンジンや車体にかかわる電子制御系は最新のデバイスがフル装備されている。坂道で停止するとブレーキ力がキープされる装置(ヒルホールドコントロール)もある。クイックシフターやオートクルーズコントロールも当たり前に装備されている。トラクションコントロールにはGモードが加えられた他、後輪ABSの解除もできるから、ライダーの好みに応じて余計な制御介入を排除できる点も嬉しいだろう。
ロードクリアランスも余裕が大きくなっており、スキッドプレートも標準装備されているから、かなりの走り屋でもダートをより本格的に攻め込む楽しみも大きそうである。
装備面で足りないと思えたのは、ETC機器とグリップヒーターぐらい。アドベンチャーツアラーとしての総合性能はかなり高いレベルに仕上がっていると思えた。                           
エンジンはスムーズで穏やかさが感じられる出力特性だが、全域にわたって十分なトルクと粘り強さを発揮する柔軟性があり、とても扱いやすい。
レッドゾーンは9,250rpmからだが、その気になればVツインは難なく吹け上がる。後輪のトラクションが安定しており、峠道での切り返しや、滑りやすいダートでもじつに扱いやすい。
加えて前述の軽い操舵感が相まって、ワクワクとスポーツライディングを楽しみたい気持ちになってくるから不思議。
実用上の機能性や舗装路ツーリングでの快適性を冷静に判断するとスタンダードの1050をお薦めしたいのが本音だが、DEにはアドベンチャー最高峰モデルとしての価値とポテンシャルの高いサスペンション性能を備える魅力が侮れない。そう思えたのもまた正直な感想だ。
ちなみにローギヤでエンジンを5,000rpm回した時の速度は43km/h。6速トップギアで100km/hクルージング時のエンジン回転数は3.700rpmだった。これはスタンダードと同じである。

足つき性チェック(身長168cm/体重52kg)

シート高は880mm。ご覧の通り、両足はギリギリの爪先立ち。しっかりと踏ん張ることが難しいので、平坦な路面を選び、車体の垂直堅持で何とか支えることができる。市街地での扱いは慎重になり、ついつい歩道段差などの足場(踏み台代わり)を探してしまう。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…