「これはちょうどよい安さ!」軽い、小さい、125ccスクーター、キムコGP125 VCBSを試乗

125ccの原付2種クラスにキムコは現在、4モデルをリリースしています。ツアラー的な要素が強いゴージャスなX-TOWN CT125、ラージホイール採用のTersely S125、スポーツモデルのRacing S125、そして、もっとも軽量コンパクトで普段の足として使いやすいGP125 VCBSというラインナップになっています。それぞれに異なる特性となっていますから、あらゆるライダーに最適なモデルを選ぶことができます。ユーザーにはうれしいですね。今回はGP125 VCBSで都市部の道路を走行してみました。
協力:キムコジャパン
小回り、Uターンがしやすく、住宅地の路地を走るのも苦労しない

KYMCO GP125 VCBS……224,950円(消費税込み)

軽い、小さい車体!これが誰にでも親しみやすい理由

コミューターとしてもっとも使い勝手がいいのが原付2種スクーターです。中でも125㏄モデルはパワー的にも過不足なく、通勤、通学、ショッピングにと高い機動性を発揮してくれ、大活躍です。そして実際に需要が多いため、国内外のメーカーから多くのモデルが発売されています。従来から日本市場に参入している台湾のキムコも、数多くのスクーターをラインナップしていて、ユーザーをしっかり獲得しています。キムコは欧州でも高い人気を誇っていますが、品質がたしかで安価という点が最大の特徴で支持を得ています。日本国内においてもその評価は同じです。GP125 VCBSは、現行モデルの中でもっとも安価なスクーターで、ボディも軽量、コンパクトで扱いやすさを前面に押し出しているのが特色です。実はこのモデル、2018年にデビューしているのですが、スポーティでベーシックなスタイルに古さを感じる要素はまったくなく、老若男女だれが乗っても似合うデザインだと思います。ABSこそ装備していませんが、道路運送車両の保安基準の改正に対応するべく、前後連動ブレーキのVCBS(バリアブル・コンバインド・ブレーキ・システム)を搭載し安全性を高めています。
見てわかるとおり、GP125 VCBSのボディはフラットフロアを採用しています。そのため乗り降りがしやすくて、足元も広々としています。車体自体がコンパクトなのでゆったりとした乗車感ではないのですが、ポジションに窮屈さはありません。またシート高も735㎜と低いので、足つき性も抜群です。車重も110㎏なので取り回しに苦労することもありません。駐輪場など限られたスペースに留めるにも、このサイズならばすんなりと出し入れできると思います。

足つき性チェック(ライダー身長:178cm)

コンパクトなボディのため一見すると窮屈そうに思えるが、意外とラクな乗車姿勢がとれる。乗降性がいいフラットフロアは足元が広く自由度がある。シート高も745㎜なので、小柄な女性ライダーにも安心して足が着けられる。また。足を下ろしたときにフロアがじゃまになることもない

搭載するエンジンは空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒のベーシックなもので、最高出力は9psを発生します。9.2Nmの最大トルクも5500rpmで発生させる低中速型エンジンは、このクラスのスクーターの中ではパワーを抑えられた部類に入ります。ただ、トルク特性からも理解できるように、低中速を多用する日常域での使用に的を絞ったエンジンなので、実際にスタートしてみると、出足、加速に不足はありません。信号発進で他の車に後塵を浴びせることは容易でした。

とはいうものの、ダッシュ力を誇示する特性ではなく、あくまでもスムーズにレスポンスし、扱いは非常に優しいものとなっています。アクセルオンオフでの挙動も穏やかで、ギクシャクした落ち着きのない走りにはなりません。スムーズに加速し、スムーズに減速するジェントルな走りを見せてくれるのです。

軽快なハンドリングで高い機動性を発揮。混雑する都市部の道もスイスイ走れる

スムーズで扱いやすいエンジンは、それこそビギナーにも不安なく走ることができる良さがありますが、軽快なハンドリングとの相性もバッチリです。前後10インチの小径タイヤはとにかく小回りが利きます。俊敏に切り返すこともできます。素早く向きが変えられるので、住宅街の狭い十字路でも大回りになることなく行きたい方向に走らせることができます。ただし、小径タイヤは路面の影響を受けやすく、段差があるような箇所では不安定になりがちです。また無茶な操作をすれば転倒につながりやすいのも事実です。機動性の高さを生かすには、ムリのない運転をする必要があります。

小径タイヤでホイールベースも短いことから、直進安定性はどうなんだろう?という危惧があったのですが、車体がしっかりしているので不安定な走行にはなりませんでした。原付2種スクーターの場合、一般道を60km/h前後のスピードで走ることが多いと思いますが、そうした走行状況で軽快かつ安定した走りができたのが印象的でした。フロントディスク、リアドラム式のブレーキも、効きに不足はないし、操作性にも違和感がありませんでした。

自転車感覚で乗れるというとちょっと大げさですが、手軽に乗れて行動範囲を広げてくれるのはたしかです。加えて22万円台という低価格も大きな魅力だと思いました。

ディテール解説

空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒エンジンはスムーズなパワーフィーリングで扱いやすい。パワー、トルクが取り立てて強いわけじゃないが、低中速特性としているので、日常域での発進加速に大きな不満はない
フロントブレーキはペタルディスク+ピンスライド片押し式2ピストンキャリパーをセット。前後連動のVCBSを装備するが、右レバー操作ではフロントのみに制動力が働く
リヤショックは片持ち1本式でスポーティな赤色スプリングを採用。リヤブレーキはオーソドックスなドラム式。左レバー操作は握り始めはリアブレーキのみ作動し、握りこむにつれてフロントも作動する前後連動システム
ヘッドライトはハンドルマウントのハロゲン
ホワイトレンズ採用のコンビネーションテールランプ。LEDを採用
レッグシールド内側にはペットボトルなどの小物の収納に便利な大型のグローブボックスを採用。左側にはスマートフォンなどの充電に便利なUSBソケットを標準装備。中央には荷掛けフックが装備される
メーターは多機能液晶ディスプレイとアナログタコメーターを組み合わせたコンビネーションタイプ。液晶にはデジタルスピード・オドメーター・トリップメーター・時計・燃料計が表示される
シート前方の下部にも荷掛けフックが装備してある
標準装備のリアキャリアはトップケースを装着可能なウイングタイプとなっている
ツートーンの表皮を採用したダブルシートは、快適なタンデム走行を可能としている
メインスイッチの操作でヒンジ部分に設けられたギアとスプリングによってシートは自動でオープンする。シート下は収納スペース
アルミ製のペグ式タンデムステップは可動収納タイプ。使用時はボタンを押すことでワンタッチでオープンする

主要諸元

エンジンタイプ:空冷4ストローク SOHC 2バルブ単気筒
燃料装置:フューエルインジェクション
総排気量:124.6cc
内径 × 行程:52.4 × 57.8mm
圧縮比:9.6
最高出力:6.6kw / 7,500rpm
最大トルク:9.2Nm / 5,500rpm
変速機型式:CVT
始動方式:セルフ式
車両重量:110 kg
装備重量:N / A
全長 × 全幅 × 全高:1,810×705×1,100mm
シート高:745mm
軸距:1,210mm
燃料タンク容量:5.0リットル
タイヤ(前):100 / 90-10
タイヤ(後):100 / 90-10
ホイール:アルミニウム
サスペンション形式(前):テレスコピック式
サスペンション形式(後):ユニットスイング
ブレーキ形式(前):ぺタルディスク
ブレーキ形式(後):ドラム+VCBS
キャリパー(前):ピンスライド 2ピストン
カラーラインナップ:
 パーリーホワイト(NH193PA)
 ゴールデンブラック(NH001SA)
メーカー保証:3年保証(距離無制限)
生産地:中国

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…