125ccなのに全長2195mm、車重167kgはデカいです!|キムコ・X-Town CT125試乗

今回は異色モデルの参考試乗。実は国内販売のラインナップにはまだ登場していない。新型モデルに違いはないが、国内導入検討中と言うことらしく、価格や販売計画、発売時期等、詳細については明らかになっていないのである。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●キムコジャパン株式会社

キムコ・X-Town CT125…….価格未定

 X-Town CT125は、EICMA 2018(ミラノショー)でワールドプレミアを果たしたキムコのブランニューモデルである。
 水冷の新型エンジンを搭載し、LEDランプの採用や、USB端子を含むアクセサリー電源ソケットの標準装備等、当時洗練されたデザインを披露。親しみやすい乗降性と移動道具としての快適性が訴求されていた。
 車体は全長が2,195mm。ホイールベースが1,513mm。前後ホイールは13インチサイズを履く堂々のフォルムを誇る。その大きさは250ccのホンダ・フォルツァを凌ぐレベルにある。もっとも車体サイズで勝負するのなら、キムコ・ダウンタウンの方がさらに大柄なのだが、X-Town CT125も十分に大きい。いずれも兄弟モデルにミドルクラスエンジンを搭載する同モデルを持っているので、バリエーション展開のひとつとして、大きな車体サイズと小さなエンジンとの組み合わせは、さほど不思議な事ではないのかもしれない。
 X-Townの特徴は、むしろフラットなステップスルー構造が採用された点にある。おかげでライダーは車体を跨ぐように足を大きく上げる必要はなく、サイドからスルッと楽々と乗車ポジションに着座することができてしまう。大きなサイズで構築された容易な乗降性と125ccエンジンをマッチングしたユニークな組み合わせで、実に興味深いモデルに仕上げられたのである。
 ちなみに搭載エンジンは、水冷OHC4バルブの単気筒。排気量は124.8ccで、公表された諸元表によると最高出力はダウンタウンよりも高出力な11kw/9,000rpm、最大トルクもそれを凌ぐ11.6Nmを7,000rpmで発揮。CVTを介して167kgの車体を走らせる。
 
 なお、欧州市場では既にマイナーチェンジされたX-Town 125と300 CITYが投入されているようだが、冒頭に記した通り、今回試乗したX-Townの販売について、今後日本でどのような展開になるのかは現在も未定である。

フラットなステップスルー式のラージスクーター

 試乗車を目の当たりにすると、ラージサイズスクーターと言える堂々のサイズ感がある。125cc と言う小さなエンジンとの相性は直感的な見た目の印象として、少々違和感を覚える。なぜなら、これまで知る同クラスのスクーターは、たとえ小さくても250cc以上の排気量がマッチされているのが普通だと理解していたからだ。
 それだけに、CT125と言うエンブレムや、リヤのピンクナンバーを確認すると、なるほどこう言う組み合わせも成立するのかと、良い意味で新鮮な驚きがあった。
 さらに、このタイプの常識に反し、フラットなステップスルーのフロアを備えたデザインがとてもユニークに感じられたのである。
 本来なら車体中央に大きな骨が通るフレーム構造が採用される例がほとんどである。実際多く見られるラージサイズスクーターは、スポーティな仕様が主流。車体剛性面でも高いレベルが要求され、結果的に地上高の高い位置を通る盛り上がったメインフレームを備えるタイプが多い。そのためライダーは、バイクに乗る時と同様に、その骨を跨ぐように乗り降りする。例えシート高が低くても、チョコンと腰掛ける様に簡単にはアクセスできないのが普通なのである。
 フロアのステップは左右それぞれにセパレートされて、ライダーの両足は左右に開き、場合によっては脛で車体を挟むようなライディングポジションを取ることになる。
 しかしX-Townの場合は、ベーシックなスクーター同様、車体の横からアクセスして直ぐに腰掛けることができ、お行儀よく両足を揃えて乗る事ができる。
 この容易な乗降性がとてもユニーク。実用上便利な使い勝手を誇れるキャラクターには、改めて新鮮な魅力が感じられる。また見た目が大きい割に扱いが軽く感じられ、車体の引き起しや取り回しが楽だった。

 さらにパワー不足が懸念された125ccエンジンは、高回転域まで伸びの良い出力特性を発揮して、市街地の自然な交通の流れと共に走るには、不足のないパフォーマンスを発揮してくれた。
 もちろんトルク感にゆとりは無く、鋭い走りは期待できないのも事実だが、CVT無段自動変速と相まって普通に走る限り加速力にストレスは感じられなかったのである。むしろ125ccのエンジンでも「不足なく使えるものなんだな~と感心させられたのが正直な感想である。信号発進等、発進加速時のエンジン回転数は、だいたい5,500~6,500rpmを使用。穏やかながらもスムーズな加速性能は、なかなか心地良く感じられた。
 スロットル全開で加速すると、メーター右側のレブカウンターは7,500rpmを示して、そこそこ元気よく加速していく。その後の伸び自体は8,000rpmをこえるポテンシャルがが期待できそう。
 ちなみに平坦路50km/hクルージング時のエンジン回転数は5,300rpmだった。エンジンブレーキも自然な効き具合で、メーターで15km/hの2,000rpmでクラッチが切れて転がり走行になる。
 ブレーキは前後連動式で、左手操作だけでもバランス良く前後ブレーキに効率の良い効力が発揮されて、濡れた路面上でも安心感の高いブレーキングが可能。思い切り良く乱暴な急ブレーキを掛けても、制動能力とその扱いやすさはなかなか優秀であった。

 唯一気になったのは、フレーム剛性のしっかり感が不足気味。直進時も悪路走行でも旋回操作でも、スタビリティ不足が感じられる。特にステアリング回りの剛性感が足りない印象で、クイックな操舵等、やや乱暴な乗り方をすると、車体に捩れが生じ、次に捩じれが戻る挙動(揺れ)が体感できる。やはりこのサイズ、この重量で厚みの薄いフラットフロアを構築するアンダーボーンフレームでは強度確保に難しさがあるようだ。
 ただ、スポーティな走りなんて無縁と思えるユーザーなら、つまり穏やかな走り方に終始し、スクーターに優しい使い方を徹するユーザーなら、特に問題が感じられないのではないかと思えたのも事実なのである。むしろ、原二スクーターにして、ゆったりとおおらかで快適な乗り味が楽しめる個性的なキャラクターに魅力を覚える人は居ると思う。
 後は“お得”と思わせる価格設定が成されるなら、なかなか侮れない商品力が備わり、人気を呼ぶのではないかと思えた。

足つき性チェック(ライダー身長168cm/体重52kg)

ご覧の通り両足は膝にも余裕をもって楽に地面を捉えることができる。シート高は765mmと低く、フラットなステップスルーフロアデザインにより乗降性が良い。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…