1000kmガチ試乗2/3|ホンダGB350 大好きだからこそ、異論に反論したくなる

多くのライダーが絶賛するGB350だが、業界内には異論を述べる人もいる。今回はそれを前提にして、通常の試乗記とは異なる視点でこのバイクの資質を考えてみたい。もっとも、筆者自身がGBにかなりの好感を持っているため、異論に反論するかのような形になってしまった。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

ホンダGB350……55万円

日本仕様のタイヤは現代的なパターンのダンロップGT601だが、インド仕様はミゾが多くてクラシックな雰囲気のMRF ZAPPER。

気軽にオフロードに入って行ける

 第1回目の最後に記した通り、今回は業界の友人知人から聞いた異論をベースにして話を進めるつもりだが、本題に入る前に、当企画でGB350と約1000kmを共にして、改めて感心したこのモデルならではの美点を紹介しよう。

 最初に挙げたい美点は、オフロードの走破性。と言ってもたいていの単気筒車にとって、悪路をソツなくこなせるのは普通のことで、ヤマハSRやホンダがかつて販売したCL400やCB400SSだって、オフロードはそれなりに走れた。でもGBの場合は、19インチの前輪、最新技術で設計されたしなやかなフレーム、安定指向のキャスター/トレール、長めのホイールベース、ワイドで抑えが利くハンドル、踏ん張りやすいステップなどが、絶妙な相乗効果をもたらしてくれるようで、路面の凹凸や轍に一喜一憂する場面が明らかに少ない。しかもスロットルを開ければ、どんな回転域でも優しくて濃厚なトラクションが伝わって来るから、乗り手としては転倒や滑落の絵柄を想像することなく、気軽にオフロードに入って行けるのだ。

 もちろん、前後サスストロークは120mm(オンロードバイクでは平均的な数値)しかないし、単気筒としては軽いとは言い難い車重や穏やかなエンジン特性を考えれば、オフロードをガンガン攻めるのは無理である。とはいえ、ツーリングの途中で林道に遭遇した際にUターンしたくない、淡々とでいいから通過したいと考えるライダーにとって、GBの悪路走破性は心強い味方になるに違いない。

 それに続いて述べたい美点は、積載性と燃費。まずは積載性の話をすると、今どきのネオクラシックモデルはこの点に関して、ガッカリすることが非常に多いのである。ところがGBは、荷物の積載場所であるタンデムシート面がフラットで大きく、理想的な場所に4つの荷かけフックボルトが設置されているので、シートバッグの装着もコードやネットを用いた積載もきっちり受け付けてくれる。そして燃費に関しては、エンジンかなりブン回しても30km/ℓを切らない数値と、その気になれば無給油で500km以上走れる航続距離に感心。この数値は、ツーリング中の給油をわずらわしく感じる人だけではなく、最近の原油価格の高騰を考えると、誰にとっても嬉しい要素になるだろう。

 また、僕自身はそんなに感心はしなかったものの、SR好きにとっては、高速道路を100km/h+αで巡航できることも、GBの美点のようである。もちろん今どきのシングルなら、不快な振動はある程度抑えられていて当然なのだが、バランサーを装備しないSRを愛用するライダーの視点で見ると、GBの高速巡航は夢のように快適らしい。

ヤマハSRとは完全な別物

 ここからは業界内で聞いた異論の話。具体的な言葉としては、①質感がいまひとつ、②パワーが足りない、③ロングストロークの美点がわからない、④シングルらしくない、⑤ヤマハSRのほうが魅力的、などという意見があったので、これらに対する僕の見解を記してみたい。

 ①:質感に対する意識はそれぞれだが、そう言われればそうかも?……という気はしないでもない。もっとも55万円という価格を考えると、個人的には不満はないし、高級感に寄与しそうなヒカリモノ系パーツを多用せず、各部をブラック仕上げとするのは、最近のネオクラシックのトレンドだから、現状はひとつの正解だと思う。

 とはいえ、エンジをアルミ地+クリア仕上げにして、前後フェンダー/グラブバー/灯火類のボディなどにクロームメッキを施し(インド仕様の前後フェンダーはメッキが標準)、外装を1970年代のCBシリーズのようなカラーでペイントした上級仕様が+5万円くらいで登場したら、質感に異論を述べる人はいなくなりそうだ。

 ②:パワーに関して印象的だったのは、「トップギアで高速道路を走っていると、長い上り坂でスピードが徐々に落ちて来るでしょう。あれは残念だった。やっぱりパワーがないよね」という意見。そんなときは、ギアを1段落とせばいいんじゃないだろうか。また、複数台のバイクと一緒に走ると、他車について行けないという意見もあったのだが、同行者が全員エキスパートライダーでない限り、まったく太刀打ちできないことはないと思う。それどころか、見通しと路面状況が悪い峠道なら、余裕シャクシャクでついていけるはず。いずれにしても僕自身は、20psの最高出力に物足りなさは感じなかった。

 ③:ロングストロークの美点と言ったら、良好な燃費と低速トルクの太さというのが定説だが、GBの低速トルクは太いと言うほどではないし、ホンダの技術を持ってすればショートストロークでも、現状のGBと同様の低速トルクと燃費は実現できそうな気がする。ただしGBの低中回転域には、呼吸が深いと言うのか充填効率が高いと言うのか、しっかり燃焼している感があって、それこそがロングストロークの美点ではないかと僕は思う。もっとも第1回目で述べたように、チョイ乗りでの印象は至って普通だった。

 ④:シングル=ヒラヒラ&キビキビというイメージを持っている人は、GBのハンドリングをモッサリ&マッタリと感じるだろう。でもホンダは、意図的にそうしたのだと思う。今の時代に多くのライダーが欲しているのは、ワインディングで真価を発揮するスポーツシングルではなく、何にでも使えるベーシックシングルなのだから。なおスポーツ仕様のGB350Sは、スタンダードと比べるとやや軽快だが、だからと言ってヒラヒラ&キビキビではない。

 ⑤:SRとGBは比較されることが多いものの、この2台は完全な別物で、昔ながらのフィーリングを求める人や、カスタムを思いっ切り楽しみたい人は、すでに新車は存在しないけれど、SRを選んだほうがいいんじゃないだろうか。もっとも今の僕は、最新技術を用いて常用域がすこぶる楽しいキャラクターを構築し、ロングツーリングが快適にこなせる、GBのほうに魅力を感じている。

スパッと割り切ったキャラクター

 さて、ここまでの原稿を振り返るとほぼ大絶賛になってしまったけれど、真面目な話、僕はGBにかなりの好感を抱いている。改めて振り返ると過去のホンダ製ビッグシングルは、オフロードのXL/XR系を除くと、本来の性能を抑えている感が強く、何となく中途半端な印象だったのだが、GBはいい意味でスパッと割り切ったキャラクターで、だからこそハマる人にはハマるのだろう。そして日本市場における大人気ぶりを考えると、GBにハマる人、ハマってみたい人は、相当に多かったのだ。

フレームはセミダブルクレードルで、スイングアームはピボット部内側のプレートとステップブラケットで共締め。HONDAのロゴが刻まれたエンジン左右のカバーは、1970年代のCBシリーズを思わせる雰囲気だ。

主要諸元 

車名:GB350
型式:2BL-NC59
全長×全幅×全高:2180mm×800mm×1105mm
軸間距離:1440mm
最低地上高:166mm
シート高:800mm
キャスター/トレール:27°30′/120mm
エンジン種類/弁方式:空冷4ストローク単気筒/OHC2バルブ
総排気量:348cc
内径×行程:70.0mm×90.5mm
圧縮比:9.5
最高出力:15kW(20PS)/5500rpm
最大トルク:29N・m(3.0kgf・m)/3000rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ点火
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式5段リターン
クラッチ形式:湿式多板
ギヤ・レシオ
 1速:3.071
 2速:1.947
 3速:1.407
 4速:1.100
 5速:0.900
1・2次減速比:2.095・2.500
フレーム形式:セミダブルクレードル
懸架方式前:テレスコピック正立式φ41mm
懸架方式後:スイングアーム・ツインショック
タイヤサイズ前後:100/90-19 130/70-18
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:180kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:15L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:49.5km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス2-1:41.0km/L(1名乗車時)

著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…