ガソリン価格の高騰で、JAFが主張するガソリン税の「当分の間税率の廃止」や「Tax on Taxの解消」とは?

ガソリンの二重課税と特例税率とは?
ガソリン価格の高騰で、JAFが主張するガソリン税の「当分の間税率の廃止」や「Tax on Taxの解消」とは何かを解説
ガソリン価格が高騰するなか、ガソリン税に関して見直しを要望する声も増えている。例えば、ロードサービスを手掛けるJAF(日本自動車連盟)では、2023年8月31日に、ガソリン小売価格の高騰を受けて、政府や関係省庁などに対し声明を発表している。

それによれば、現行のガソリン税について、「当分の間税率の廃止」と「Tax on Taxの解消」を行うべきだと主張。JAFでは、これらは、「ユーザーが到底理解・納得できない仕組み」だとし、「一刻も早く解消するべき」だと考えているという。

では、JAFが主張するこれら税制度とは、一体どんなもので、何が問題なのだろうか? ここでは、ガソリン税に関わる問題点について紹介する。

REPORT●平塚直樹
PHOTO●写真AC
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「当分の間税率」とは特例税率のこと

まず、JAFの主張する「当分の間税率の廃止」について。これは、特例税率(暫定税率ともいう)と呼ばれているものだ。

そもそもガソリンの小売り価格には、ガソリン税(揮発油税と地方揮発油税)が課税されているが、本来の税率(本則税率)は28.7円/L。ところが、現在は、特例税率として25.1円/Lが上乗せされており、合計の税率は53.8円/Lとなっている。

この特例税率とは、もともと道路財源の不足を補う目的で設定されたもので、一時的に課税されるもの。つまり、目的が達成されれば課税されなくなるはずなのだ。それをJAFでは、「当分の間税率」と表現している。

実際に、この特例税率は、2010年に一旦は廃止された。だが、すぐに同額分の特例税率が創設されており、今でもガソリン税への上乗せは続いている。

しかも当初の目的は道路財源だったのに対し、現在は一般財源に充てられていることで、以前からこれを問題視する声は多かった。使っているのが道路ではないことや、「当分の間」が延々と続いていることに異論を唱えるといった意見をよく聞く。

ともあれ、現状の税制度では、この特例税率が続いていることで、ガソリン1L当たりにユーザーが収めている税金は「25.1円/L高いまま」という状態が続いているといえる。

ガソリンの二重課税と特例税率とは?
「当分の間税率」とは特例税率のこと

「Tax on Tax」は消費税の二重課税

一方、「Tax on Taxの解消」について。これは、ガソリン小売り価格のうちに含まれている消費税の課税方法が「二重課税」となっていることを指摘しているといえる。

現在、ガソリンの小売り価格は、

「ガソリン本体価格」+「ガソリン税53.8円/L」+「石油石炭税(地球温暖化対策税も含む)2.8円/L」の合計額に「消費税10%」をかける

といった仕組みになっている。そして、この方式が税金に税金をかける二重課税、JAFのいう「Tax on Tax」だというのだ。

実際に、これら制度により、ガソリン小売価格に対し、どれくらいの税金がかけられているのだろう。例えば、レギュラーガソリンの小売り価格が185円/Lの場合で試算してみよう。

レギュラーガソリン小売り価格:185円/L
本体価格:112.4円/L
ガソリン税(本来の税額):28.7円/L
ガソリン税(暫定税):25.1円/L
石油石炭税:2.8円/L
消費税:16円/L

上記はあくまで参考例なので、消費税額は小数点以下の処理により(切り捨て・切り上げ)多少変わるかもしれないが、試算の場合でいえば、税金が72.6円/Lかかっていることになる。つまり、1Lあたり39%、「約4割が税金」となっているのだ。

ガソリンの二重課税と特例税率とは?
ガソリン価格に含まれる消費税は二重課税という指摘もある

ガソリン税の見直しで価格高騰は抑えられるか?

JAFでは、これら問題について、これまでも政府や行政機関である関係省庁へ訴え続けてきたが、ガソリン価格の高騰という現在の状況から、改めて強く要望するという。

確かに、「当分の間」のはずの特例税率がいつまでも続いており、しかも、使用目的が当初の道路財源から一般財源となっているのは、バイクやクルマのユーザーにとっては「なぜ?」と疑問に思ってしまい、なかには納得できない人も多いだろう。

また、消費税に関して、国税庁では、ガソリン税や石油石炭税はガソリンのメーカーや販売者に対して課せられるもので、販売価格の一部。一方、消費税は消費者に課せられたものであるから二重課税ではないといった見解を示しているという。

だが、本来メーカーや販売者が支払う消費税分を、最終的にユーザーが支払っているというのも、ちょっと納得しにくいと思う人が多いのも確かだ。

ただし、このガソリン税の見直しについては、慎重論もある。それは、例えば、ガソリンに関する税金を下げても、結局は「そのほかの税金が上がるのでは?」といった声だ。確かに、政府が一定の税収を確保するためには、もしガソリン税を見直しても、減った分の税収を補うために、何かほかのものを増税する可能性があることは一理ある。

税金はもちろん、原油価格の高騰や円安など、さまざまなファクターが絡んでいるのがガソリンの価格だ。そのため、現在のような高止まりを根本的に解消する方策は、なかなかないのが現状だろう。

ガソリンの二重課税と特例税率とは?
ガソリンの価格には、税金はもちろん、原油価格の高騰や円安など、さまざまなファクターが絡んでいる

ガソリン補助金も実は税金

現在、政府では、ガソリン価格高騰の抑制について、本来2023年9月末で終了する予定だった補助金(燃料油価格激変緩和補助金)を2023年12月末まで延長し、支給額も拡充する対策を行っている。

これにより、2023年9月4日時点で186.5円/Lまで高騰したレギュラーガソリン全国平均価格は、2023年9月19日時点で182.0円/Lと徐々に価格が低下してきている。ちなみに、政府では、2023年10月中には175円/L程度の水準になるよう目指す方針だ。

こういった対策はユーザーとしては有り難いといえる。だが、補助金も税金から出ているだけに、ユーザーが本当の意味で助かっているとはいえない。そう考えると、なかなか出口の見えないガソリン価格の問題だが、一刻も早い価格の沈静化や対策を望みたい。

【関連リンク】
JAF公式ホームページ
https://jaf.or.jp/common/news/2023/20230831-001

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著者プロフィール

平塚直樹 近影

平塚直樹

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなど…