「公道最速」なのにお気楽系ツアラー| 伝説のスズキ「ハヤブサ」が気軽なバイク旅も楽しめる理由を350kmの旅で確かめてみた。

ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
「公道最速」伝説を持つスズキ「ハヤブサ」が、気軽なバイク旅も楽しめるワケを検証
スズキの「ハヤブサ」といえば、1999年に登場した初代モデルが、完全ストック状態で「市販量産車初の実測300km/h以上」をマークしたことで、「公道最速マシン」という伝説を持つバイク。

そのためか、なにかと動力性能に注目が集まりがちだが、実は、「普通にツーリングをするのも楽しい」バイクといった評価も高い。特に、2021年に登場した現行の3代目モデルは、最新の電子制御システムを数多く搭載することで、最高出力188PSもの大パワーを扱いやすく調教。街乗りから高速道路、ワインディングまで、さまざまなシーンでライディングを楽しめ、ロングツーリングも快適なバイクとなっているという。

そんな現行モデルのハヤブサだが、実際に、どんな点がツーリングに最適なのだろうか? 
総走行距離350kmのバイク旅で探ってみた。

REPORT●平塚直樹
PHOTO●平塚直樹、山田俊輔

のんびりと1泊2日のツーリングを実施

今回は、1泊2日ながら、あまり走行距離を伸ばすのではなく、ゆったりめのツーリングを計画した。

プランは、1日目の午後に東京都内を出発し、首都高速道路を経由し、東名高速道路や小田原厚木道路(有料道路)を経由、国道1号線で沼津まで行き1泊。

翌日は、朝から伊豆スカイラインやアネスト岩田ターンパイク箱根(箱根ターンパイク)といったワインディングを堪能した後、再び有料道路や東名高速道路を使い、午後に東京都内へ帰るといったルートだ。

1泊2日のツーリングとしては、かなり時間や距離に余裕がある旅だったが、その分、ハヤブサの乗り味をじっくりと堪能することができた。

ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
今回試乗したハヤブサ
ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
伊豆や箱根といった関東の人気ツーリングスポットを巡った

2人乗りが快適で、荷物も載せやすいリヤシート

ツーリング・ユース目線でハヤブサを見た場合、まず気づいたのがリヤシート。広くて平らな形状で、クッション性もいいため、2人乗り走行でも、タンデムライダーが快適に座れそうだし、長距離でも疲労度は少ないことがうかがえる。また、荷物を積む際も、安定性がとても高そうだ。固定方法にもよるが、かなり大きな荷物を積んでも、走行中にずれにくいことがうかがえる。

ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
積載性が良さそうなハヤブサのリヤシート

筆者は、かつて2008年型の2代目ハヤブサ(輸出仕様車)に乗っていたが、やはりリヤシートの荷物積載性はかなり高かった。現行モデルも、その優位性は継承しているようで、今回は試せなかったが、2日以上のロングツーリングをする際も、さまざまな荷物を積んで旅を楽しめそうだ。

ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
筆者が所有していた2代目ハヤブサ(2008年型の輸出仕様車)

気になったのは、ヘルメットホルダーが使いにくかったことだ。現行ハヤブサでは、リヤシート裏側に装備してあり、ヘルメットのストラップにある金具をフック状のホルダーに通し、リヤシートを車体にセットする方式だ。

試しにやってみたが、ヘルメットを裏のフックにセットした状態だと、リヤシートをシートカウルに戻すのにコツが必要なようで、かなりやりづらかった。2代目ハヤブサの場合は、固定用のフックがシートカウル内の小物収納スペースにあるタイプで、装着はとても簡単だった。

特に、ハヤブサに限らず、最近のバイクはリヤシートの着脱にコツが必要だったり、ヘルメットホルダーが使いづらいモデルもある。昔のバイクなら、ヘルメットホルダーはタンデムステップ付近などにあり、脱着は簡単だったのだが、見た目の問題や防犯上の理由なのか、そうしたモデルは減っている気がする。

その点は、現在の愛車であるホンダ「CBR650R」も同様だ。しかも、CBR650Rの場合、車載工具入れのバッグに入っているケーブルを使うタイプなので、装着がかなり面倒。そのため、ダイヤルキーが付いたケーブルを使い、トップブリッジに固定するようにしている。

ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
筆者が現在所有するホンダ・CBR650R(初期型)

今回のツーリングでも、これを使えばよかった。今回は、持参するのを忘れてしまったことと、純正のヘルメットホルダーを使うのがやや面倒だったため、PAやSAなどで休憩する際は、一々ヘルメットも持って移動することにした。防犯上でいえば、この持参方式が最もいいといえるが、トイレなどに行く際などはちょっとヘルメットが邪魔となりやすい。ともあれ、こうした点は、ハヤブサに限らず、ちょっと改良して欲しい点だ。

ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
ヘルメットホルダー代わりに使っているダイヤルキー付きケーブル

特に高速道路で余裕の走りを実感

ハヤブサの走りは、特に、高速道路での快適性が光った。1339ccもの大排気量の直列4気筒エンジンが生み出す大パワーや極太のトルクは、例えば、ICやPA・SAなどの加速車線から本線に合流する時も、あまりアクセルをガンガンに開けなくても、すぐに車速が伸びて流れに乗りやすい。

また、一定速度で巡航する際も、ほとんどのシーンで、ギアをトップの6速に入れっぱなしでも余裕で走ることができた。例えば、長い登り坂が続く区間でも、ギアを落とさなくても80〜100km/h程度の速度を維持できるため、トータルでみるとかなり疲労度が少なくなる。こうした余裕ある走りは、2代目ハヤブサも同様で、3代目もその点は継承していることが分かる。

ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
ハイペースはもちろん、流しても楽しいハヤブサ

しかも、現行ハヤブサでは、高速道路などで設定した速度で走行を維持する「クルーズコントロールシステム」も搭載しており、これがかなり便利。特に、同じ速度を維持して巡航する際は、アクセル操作が不要なため、長距離を走っても疲れづらい。

また、クラッチやスロットルの操作をせずにシフトアップ/ダウンができる「双方向クイックシフトシステム」が標準装備されているのもいい。ハヤブサは、2代目モデルでも高速道路を巡航するときのシフト操作は少なくて済むバイクだったが、それでも、例えば、前を走るクルマを追い越すときなどには、シフトダウンすることもある。そんな際に、クラッチレバーを握らず、スロットルも開けたままでギアチェンジができることも、疲れにくさにつながっているといえる。

ハヤブサ対CBR650R
ハヤブサは双方向クイックシフトシステムも標準装備

風や雨を防いでくれる秀逸なカウリング

カウリングの防風効果が高いことも、2代目モデルを継承しているといえる。体に走行風を受けにくいことも、疲労度の軽減にかなり貢献している。また、雨天走行時に、体が濡れにくいことも特筆すべき点だ。今回のツーリングでは、高速道路の走行中に突然雨が降り出したため、レインウエアを着用して走るシーンもあった。驚いたのは、雨中を1時間近く走り、PAに入って休憩した際。レインウエアの上着や、太もも付近があまり濡れていなかったのだ。

ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
ハヤブサのカウリングは風や雨から、ライダーをある程度守ってくれる効果もある

特に、高速道路を走行中に雨に出会うと、すぐにPAやSAなどがない場合、レインウエアを着れないまま走らなければならない場合もある。そんなときでも、ハヤブサであれば、服が雨に濡れることを最小限に留めてくれる。もちろん、降る雨量にもよるが、ハヤブサのカウリングが、最高速を出すための空力だけでなく、ライダーに優しい特性も持つことが実感できた。

ちなみに、ハヤブサには、路面状況や好みに応じて走行モードが選べる「SDMS-α(スズキドライブモードセレクターアルファ)」も搭載する。これは、出力特性やトラクションコントロールなど、さまざまな電子制御の設定を事前にセットしたモードを用意し、走行状況や好みなどに応じて選べる機能だ。

モードには、上級者が積極的に走るのに適した「A」、一般ライダーが街乗りからワインディングまで幅広くこなせるスタンダードモードの「B」、初心者や雨天走行に適したモードの「C」を用意。また、任意で設定できる「ユーザーモード」も3タイプまで設定できる。

各モードは、アクセルを全閉にすれば、走行中に切り替えることが可能だ。そこで、今回は雨の高速道路で、それぞれのモードを試してみたが、やはり雨天はCモードで走る方が安心。アクセル開度に対し、パワーがかなりマイルドに出るためだ。逆に、Aモードにすると、かなり過激ともいえる加速をするため、たとえ直線でも、濡れた路面ではちょっと不安だ。

ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
ハヤブサは、走行モードが選べるSDMS-αを装備するが、雨天時はCモードが安心だった

もちろん、現行ハヤブサには、滑りやすい路面などで後輪のスピンなどを防ぐトラクションコントロールシステムもあるし、前輪が浮くのを防ぐアンチリフトコントロールシステムなど、最新の電子制御システムが満載だ。

高い性能をマックスで引き出すAモードでも、安全性は抜群だが、それらが万能ではないことも確か。何事も過信は禁物なので、特に、雨天などの悪天候時や、路面状況が悪い時は、機能の設定にも細心の注意を払いたい。

まわりの景観を楽しむ余裕も十分

ワインディングでも、ハヤブサの走りは心地よい。ちょっとペースを上げてスポーティに走る時も、大柄な車体なのにハンドリングがナチュラルで、旋回性も高い。

また、フロントにブレンボ製Stylemaキャリパーを採用したブレーキは、前後連動のコンバインドブレーキシステムとのマッチングで、制動力が高いだけでなく、安定性も抜群。安心してコーナーへ侵入できる。2180mmという全長や1480mmという長めのホイールベースのためタイトコーナーはやや苦手だが、中高速コーナーであれば、爽快なコーナリングが楽しめる。

一方で、まわりの景観を楽しみながら流して走る際も、快適で楽しい。大排気量のエンジンはトルクもたっぷりあるため、あまりシフトチェンジを頻繁にしなくてもスムーズに走るし、前述した双方向クイックシフトシステムのおかげで、変速する場合も楽だ。ライディングの操作が煩雑でないことで、安全かつ気軽に走ることができる。

ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
大柄な車体でも旋回性が高いハヤブサ

駐車する場所に気を遣う

ただし、景観スポットが望める道路脇にある駐車場へバイクを停めた際、ちょっと苦労することがあった。それは、駐車する場所にやや気を遣うことだ。

例えば、駐車スペースの左側が下がっている場所へ停めた時。スタンドを立ててバイクを降りるときには気づかなかったのだが、再び移動するためにバイクにまたがり、車体を起こすときに、バイクが重くてかなり力が必要だったのだ。

ハヤブサのシート高は800mmで、身長165cm、体重59kgの筆者でも、足着き性は比較的いい。だが、装備重量が264kgもあるため、左側に傾いた場所など、路面によっては、車体を直立に起こすことに苦労する。こうした場合、どうしても車体を直立にできないと、サイドスタンドも戻せない。最悪の場合は、もう一度バイクを降り、立った状態でバイクを起こし、平らな場所へ押し歩いてから、再びまたがり直すといった手間がかかる。

ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
ハヤブサは。駐車する場所にやや気を遣う

また、駐車スペースの奧が下りになっている場合も、フロントから入れてしまうと、再度乗るときに苦労する。車体の左脇に立ち、サイドスタンドを戻した後、ハンドルを引きながら駐車スペースをバックするときに、やはりかなり力が必要なのだ。こんな時には、ハヤブサにも、バックギアが欲しくなる。さらに、車体が重くなり、運動性能に多少の影響は出るだろう。だが、もし重さでバックできず、その場を動けなくなるよりましだ。

ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
奧が下りになっている駐車スペースでは、バックから入れた方が、再出発の時に出やすい

こうした点は、かつて所有した2代目ハヤブサも同様で、当時は駐車場所をかなり選んで停めていたのだが、すっかり忘れていた。走れば軽快なハヤブサだが、止まっている時は、とっても重い。かなりの力自慢でないかぎり、押し歩きや取り回しには少し注意が必要だ。

ちなみに、現行のハヤブサには、「ヒルホールドコントロールシステム」が装備されている。そのため、例えば、駐車場の出口が上りの坂道で、一旦停止後に発進するなど、いわゆる坂道発進の時に楽だ。

この機能は、上り坂でブレーキをかけ完全に停止したときに作動する。IMUの情報から車体姿勢を推定し、ブレーキを放しても約30秒間リヤブレーキを自動的にかけることで、スムーズな再スタートをサポートしてくれるのだ。特に、大型二輪免許を取得したばかりとか、リターンライダーなどで、坂道発進が苦手な人には、かなり有り難いシステムといえるだろう。

ほかにも、駐車関連では、ハヤブサは重たいバイクのため、サイドスタンドを立てるときに注意が必要だ。筆者が2代目モデルに乗っていたときは、路面がうねっている場所などで、バイクにまたがったままサイドスタンドを出した際、きちんと路面と接地しておらず、バイクから降りた時にスタンドが跳ね上がり、そのまま重さを支えられず立ちゴケしたこともあった。

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現行ハヤブサのサイドスタンド先端

これは、2代目ハヤブサのサイドスタンドは、先端にある路面との接地面が比較的小さいことも関係していたようだ。その点、今回乗った現行ハヤブサでは、あまりそうした心配は無用だった。スズキから公式のアナウンスはないため、あくまで筆者の私見だが、ひょっとすると、スタンド先端の接地面を広げるなどの改善が行われたのかもしれない。

もちろん、車体が重たいだけに、現行モデルでも過信するのは危険だ。もし、スタンドを立てたつもりで跳ね上がってしまうと、車体を支えて起こすのが一苦労なだけに、今回も、駐車時には細心の注意を払った。こうした点は、ハヤブサに限らず、重量級モデルならどのバイクも同じだが、大切な愛車に傷を付けないためにも、用心するに越したことはない。

燃費は16.6km/Lを記録

ハヤブサは、大容量20Lの燃料タンクを持つ。そのため、航続距離もかなり長いイメージもあるが、参考までに、今回の燃費を紹介しよう。

今回は、1日目の夕方、走行距離168kmの時点で1度給油。その後は、無給油で185kmを走ってゴールした。総走行距離は353kmで、メーター内の燃費計は16.6km/Lを示していた。

ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
1回目の給油後に走った距離と燃費
ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
今回の総走行距離と燃費

ちなみに、ハヤブサのメーターには、残りのガソリン残量で走行可能な距離も表示される。今回のゴール時点で、走行可能な航続距離は117kmだったので、「初日の給油後に走った距離185km」+「残りの走行可能距離117km」で、1回の満タン給油で「トータル302km」を走ることができる計算となる。

もしろん、こうした数値は、走行状況などによって変わるが、特に、ガソリンスタンドの数が少ない地方の道を走る際などは、給油のタイミングを予測する際にかなり便利だといえるだろう。

ともあれ、冒頭で述べたように、ツーリングバイクとしても、かなり秀逸だといえるのがハヤブサだ。その意味で、「市販車最速バイク」という伝説やイメージだけでない、奥深さを持ったモデルだといえるだろう。

ハヤブサで350kmツーリングしてみた感想
ハヤブサはツーリングバイクとしても秀逸であることを実感した旅だった

スズキ・ハヤブサ主要諸元

型式:8BL-EJ11A
全長×全幅×全高(mm):2,180×735×1,165
軸間距離(mm):1,480
最低地上高(mm):125
シート高(mm):800
車両重量(kg):264
燃料消費率(km/L):20.2(60km/h) 2名乗車時
WMTCモード値(km/L):15.4  1名乗車時
最小回転半径(m):3.3

エンジン型式:DXA1・水冷4サイクル・直列4気筒
弁方式:DOHC・4バルブ
総排気量(㎤):1,339
内径×行程(mm):81.0×65.0
圧縮比:12.5
最高出力(kW / rpm):138(188ps)/ 9,700
最大トルク(Nm / rpm):149(15.2kgf・m)/ 7,000
燃料供給装置:フューエルインジェクションシステム
点火方式:フルトランジスタ式
始動方式:セルフ式
バッテリー容量:12V-11.2Ah (FTZ14S)
潤滑方式:ウェットサンプ式
潤滑油容量(L):4.1
燃料タンク容量(L):20
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
変速機形式:常時噛合式6段リターン
変速比:
 1速  2,615
 2速  1,937
 3速  1,526
 4速  1,285
  5速  1,136
  6速  1,043
減速比(1次/ 2次):1,596 / 2,388

フレーム形式:ダイヤモンド
キャスター(度):23
トレール(mm):90
ブレーキ形式(前/後):油圧式ダブルディスク(ABS)/ 油圧色シングルディスク(ABS)
タイヤサイズ(前/後):120/70ZR-17 M/C (58W)/190/50ZR-17 M/C (73W)
舵取り角左右(度):30
乗車定員(名):2

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著者プロフィール

平塚直樹 近影

平塚直樹

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなど…