スズキ「ハヤブサ」でバイクのクルーズコントロール初体験。簡単だったし、楽だった。でも注意しないと危ないシーンも?

ハヤブサでバイクのクルーズコントロールを初体験してみた
ハヤブサは、メーター中央部にある速度計のようなインジケーターが点灯するとクルーズコントロールが使えるようになる
近年、バイクへの搭載例も増えている「クルーズコントロール」を、スズキ「ハヤブサ」で試してみた。高速道路の巡航などで、設定した速度をキープしてアクセル操作なしに走ることができる機能だが、実に筆者は初体験だ。

クルマでは、今や軽自動車にも「ACC(アダプティブ・クルーズコントロール)」という似たような機能を持つモデルも増えており、筆者も愛車のホンダ商用バン「N-VAN」でけっこう頻繁に使っている。一方、バイクにも、最近はACC搭載車も徐々に増えてはいるが、まだまだ少数派。クルーズコントロール機能を持つバイクの方が多い。それとて、大型のツアラーやアドベンチャーモデルなど、かなり高級なバイクにしか採用されていないのだが、果たしてどれくらい便利なのか気になっていた。

そこで、ここでは、ハヤブサに搭載されたクルーズコントロールを使ってみた感想や、気になった点、どれくらい便利なのかなどについて紹介する。

REPORT●平塚直樹
PHOTO●平塚直樹、山田俊輔

クルーズコントロールとは? ACCとの違いは?

クルーズコントロールとは、前述の通り、アクセル操作なしでも、車両が自動で設定した速度をキープして走ってくれる機能だ。クルマには、かなり以前から設定モデルもあったが、バイクではここ最近、大型のツアラーやアドベンチャーモデルなどを中心に、採用例が増えている。特に、高速道路などを一定速度で巡航する際に、アクセルをずっとひねっていなくていいため、ロングツーリングでの疲労軽減などに役立つ。

ハヤブサでバイクのクルーズコントロールを初体験してみた
クルーズコントロール機能を採用しているスズキ・ハヤブサ

一方、近年は、より高級なバイクには、ACCという機能も搭載されてきた。こちらも、アクセル操作なしで設定速度をキープするのは同じ。違うのは、一定の車間距離を保ちながら前車を追従する機能も持つことだ。車両に搭載したレーダーを使い、前を走るクルマやバイクなどの車両との距離を検知することで、それを可能とする。

いわば「前車追従式」といわれるもので、例えば、前車が速度を落とすと自車も速度を落とし車間距離を維持する。しかも、クルマの場合は、ここ数年「渋滞追従機能付きACC」を採用するモデルも増えて来た。この機能は、例えば、渋滞で前車が停止した時には、自車も停止。前車が進み始めると追従を再開するといったことも可能だ。特に、日本の高速道路や有料道路は、休日の渋滞はつきもの。そんな時に、ドライバーを疲れにくくするための安全運転支援システムとして、現在では広く普及が進んでいる。

ちなみに、バイクにも、例えば、ヤマハが2023年10月に発売した新型「トレーサー9GT+」、カワサキ「ニンジャH2 SX」といったレーダー搭載モデルには、ACCの機能がある。また、輸入車でも、ドゥカティ「ムルティストラーダV4S」やBMW「R1250RT」、KTM「1290スーパーアドベンチャーS」などに採用されている。いずれも、渋滞追従機能まではないが、前車との車間距離を保って走行する点は同じだ。

ハヤブサでバイクのクルーズコントロールを初体験してみた
ACC付きモデルほどの便利さはないが、ハヤブサのクルーズコントロールもバイク旅には最適

ハヤブサのクルーズコントロール機能

前車との車間距離までは自動でキープしないものの、アクセル操作なしで設定した速度をキープしてくれるという点で、ハヤブサが搭載するクルーズコントロールも便利な機能であることには変わりない。しかも、筆者は、使うのは初めて。まずは、機能を試す前に、設定方法や基本的な動作について調べて見た。

ハヤブサの場合、右ハンドルにある速度計のようなアイコンが付いたスイッチを押すと、メーター中央部に「クルーズコントロールインジケーター」が点灯し、機能がスタンバイ状態となる。

ハヤブサでバイクのクルーズコントロールを初体験してみた
右ハンドルにある速度計のようなアイコンが付いたスイッチを押すと、機能がスタンバイ状態となる
ハヤブサでバイクのクルーズコントロールを初体験してみた
ハヤブサは、メーター中央部にある速度計のようなインジケーターが点灯するとクルーズコントロールが使えるようになる

ただし、ギヤが2速以上でエンジン回転数2000rpm以上、速度は約30km/h以上の時でないと機能を設定できない。つまり、走行中である必要があるのだ。維持したい速度の設定は、左ハンドルにあるセレクトスイッチの下側「DOWN/SET/-」を押すだけ。押した際の速度が記憶されると、メーター内にある「SET」表示が点灯し、アクセルを戻してもその速度を維持して走ってくれる。

ハヤブサでバイクのクルーズコントロールを初体験してみた
速度設定などは、左ハンドルにあるセレクトスイッチの「DOWN/SET/-」と「UP/RES/+」を使う

設定速度は変更することも可能だ。設定速度を上げたいときは、左ハンドルにあるセレクトスイッチの上側「UP/RES/+」を押す。短く押せば約1km/hずつ速度が増し、長押しすると連続して速度がアップする。

一方、設定速度を下げたい場合は、セレクトスイッチの「DOWN/SET/-」を短く押せば約1km/hずつ減速、長押しで連続した減速を行うようになっている。

さらに、以下の操作を行えば、設定速度での走行をキャンセルできる。

●アクセルを全閉位置から、さらに閉じる方向へ回したとき
●クラッチレバーを握ったとき
●ブレーキレバーやブレーキペダルを操作したとき
●エンジン回転数が2000rpmを下回ったとき
●ギヤが1速になったとき
●シフトチェンジをしたとき
●坂道などで、セットした速度に長時間到達できないとき
●タイヤが空転したとき
●右ハンドルのクルーズコントロールスイッチを押したとき(機能の解除)

ハヤブサでバイクのクルーズコントロールを初体験してみた
クルーズコントロールのキャンセルはアクセルでも可能
ハヤブサでバイクのクルーズコントロールを初体験してみた
アクセルを全閉位置から、さらに閉じる方向へ回すとクルーズコントロールがキャンセルされる

なお、ハヤブサのクルーズコントロールには、レジューム機能も搭載する。これは、機能をキャンセルした後に、セレクトスイッチの「UP/RES/+」を押せば、再び設定速度を維持してくれるというものだ。例えば、機能作動中に、前車との車間距離が詰まるなどで、一旦は機能をキャンセル。その後、前車が別の車線に移るなどで、前を走るクルマがいなくなり、再び設定した速度で巡航したいときなどに便利だ。

ちなみに、レジューム機能は、

●エンジン回転数が2000rpmを下回ったとき
●メインスイッチをオフにしたとき
●クルーズコントロールスイッチを押したとき

には使えない。これらの場合は、機能自体が解除となるからだ。再度、設定したい場合は、最初からやり直す必要がある。

クルーズコントロールのいい点・注意すべき点

ハヤブサに搭載されているクルーズコントロールの使い方を覚えたところで、高速道路で使ってみた。特に、便利に感じたのは、高速クルーズ中に、登り坂でアクセルを開けたり、下り坂でアクセルを戻すなどの操作がいらないこと。基本的に、バイクが勝手に出力を調整してくれるため、かなり走行が楽だ。

ただし、クルマのACCに慣れていると、注意が必要なこともあった。例えば、車間距離。いつもよりも多めに取っておかないと、機能のキャンセルと再設定といった操作を、頻繁に行わないといけないことになる。

例えば、前車が一定速度で走らず、速度が遅くなったり、ペースを上げるといったことを繰り返す場合。そうした際、ハヤブサのクルーズコントロールには前車との距離を自動で保つ機能はないため、車間距離が詰まると機能をキャンセルして自車の速度を落とし、車間距離が広がればまた設定しなおすという操作を繰り返すことになる。

そうなると、とても面倒。特に、前車のペースが一定でないような場合は、車間距離がいつ詰まるのか、維持できるのかが読めないため、結果的に機能のキャンセルと再設定の操作を連続して行うケースもある。前車との距離を可能な限り十分に開けておけば、渋滞などで前のクルマがかなりの減速を行わない限り、今回のテストでは、さほど機能をキャンセルすることもなかった。当然ながら、安全を確保するためにも、車間距離を十分に取ることは重要だといえる。

また、例えば、ICやPA・SAの加速車線を走るクルマが本線に合流する際、自分のバイク直線に割り込んでくるような場合にも、機能をキャンセルして減速する必要があった。

ハヤブサでバイクのクルーズコントロールを初体験してみた
クルーズコントロール作動時は、前車との車間距離を十分に取ったほうがいい

ハヤブサはシフトダウンでの機能キャンセルも楽

ちなみに、筆者が機能をキャンセルする場合、「アクセルを戻す方向に回す」、「シフトダウン」、「ブレーキを掛ける」といったいずれかの動作を行うことが多かった。これらの方が、感覚的に操作ができる感じでやりやすかったのだ。

特に、ハヤブサには、クラッチやスロットルの操作をせずにシフトアップ/ダウンができる「双方向クイックシフトシステム」が搭載されているため、シフトダウンによるキャンセルも楽だ。ギアを落とせばエンジンブレーキも効くので、かなり急な減速が必要な場合を除き(その場合はブレーキも使う必要があるが)、シフトペダルの操作だけで、簡単に速度を落とすことができる。

ハヤブサでバイクのクルーズコントロールを初体験してみた
双方向クイックシフトシステムは、クルーズコントロールをキャンセルするときも便利

いずれにしろ、ハヤブサのクルーズコントロールは、高速道路の巡航などで、かなり重宝することは確かだ。特に、ハヤブサの1339cc・直列4気筒エンジンは、最高出力138kW(188PS)、最大トルク149N・m(15.2kgf・m)ものパワーやトルクを発揮する。高速道路でギアを6速に入れっぱなしにして、100km/h近くで巡航しても、余裕でクルーズを楽しめる。それに、クルーズコントロールを加えれば、ロングツーリングでも快適な旅が楽しめるといえる。

筆者にとって、初めて体験したバイクのクルーズコントロールだが、その効果は絶大。残念ながら、現在の愛車であるホンダ「CBR650R」には搭載されていないが、もし後付けで装備が可能であれば、ぜひ採用してみたい機能のひとつであることは間違いない。

現在、クルーズコントロールを採用する国産バイクには、ハヤブサのほかに、例えば、ホンダ「ゴールドウイングツアー」、ヤマハ「トレーサー9GT」のスタンダード仕様、スズキの「Vストローム1050DE/Vストローム1050」や「GSX-S1000GT」などが挙げられる。特に、ツーリングをメインに楽しみたいライダーにとって、これらモデルや先に挙げたACC付きモデルは、かなり魅力的だといえるだろう。

ハヤブサでバイクのクルーズコントロールを初体験してみた
ハヤブサの余裕あるパワーやトルクと、クルーズコントロールのマッチングは、ロングツーリングなどで効果絶大

スズキ・ハヤブサ主要諸元

型式:8BL-EJ11A
全長×全幅×全高(mm):2,180×735×1,165
軸間距離(mm):1,480
最低地上高(mm):125
シート高(mm):800
車両重量(kg):264
燃料消費率(km/L):20.2(60km/h) 2名乗車時
WMTCモード値(km/L):15.4  1名乗車時
最小回転半径(m):3.3

エンジン型式:DXA1・水冷4サイクル・直列4気筒
弁方式:DOHC・4バルブ
総排気量(㎤):1,339
内径×行程(mm):81.0×65.0
圧縮比:12.5
最高出力(kW / rpm):138(188ps)/ 9,700
最大トルク(Nm / rpm):149(15.2kgf・m)/ 7,000
燃料供給装置:フューエルインジェクションシステム
点火方式:フルトランジスタ式
始動方式:セルフ式
バッテリー容量:12V-11.2Ah (FTZ14S)
潤滑方式:ウェットサンプ式
潤滑油容量(L):4.1
燃料タンク容量(L):20
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
変速機形式:常時噛合式6段リターン
変速比:
 1速  2,615
 2速  1,937
 3速  1,526
 4速  1,285
  5速  1,136
  6速  1,043
減速比(1次/ 2次):1,596 / 2,388

フレーム形式:ダイヤモンド
キャスター(度):23
トレール(mm):90
ブレーキ形式(前/後):油圧式ダブルディスク(ABS)/ 油圧色シングルディスク(ABS)
タイヤサイズ(前/後):120/70ZR-17 M/C (58W)/190/50ZR-17 M/C (73W)
舵取り角左右(度):30
乗車定員(名):2

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著者プロフィール

平塚直樹 近影

平塚直樹

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなど…