リトルカブのタイヤ交換手順|スパイクタイヤを履かせるのに四苦八苦! 【カブだって雪道を走りたい】

モーターファンBIKES編集担当の山田から「雪道を走りましょうよ!」と言われて始まったリトルカブのスパイクタイヤ装着。前回は車体から前後のタイヤを外す手順を紹介した。今回は古いタイヤを外して新しいスパイクタイヤを履かせる手順を追ってみよう。

REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

好き好んでバイクで雪道を走るなんて、どう考えてもまともな大人のやることではない。いかにスーパーカブが世界中のあらゆる道を走っているからとしても、4輪ですらスリップ事故を起こす雪道で安定するわけがない。おまけに筆者は暑い・寒いと言い訳してバイクに乗る機会がめっきり減った中年男性。それでも「カブなら何とかなるか」と思えてしまうから不思議。というわけで前回の記事ではリトルカブから前後のタイヤを外した。今回はいよいよタイヤ交換である。普通ならバイクショップやタイヤショップで交換してもらうところだが「読者の役に立つ情報なので」とモーターファンBIKES編集担当の山田は自分たちでやろうというのだ。おまけにリトルカブだけでなく山田のカブにもスタッドレスタイヤを履かせるときた。そこでこの日の作業は筆者だけでなくモーターファンBIKESライターの北さんに助っ人として遠路はるばる来てもらうった。え、肝心の編集部山田は……撮影に専念するそうだ。

古いタイヤを外す

エアバルブからムシを外す。

まず古いタイヤをホイールから外そう。手順としてはタイヤから空気を抜きビードと呼ばれるホイールリム内側に潜り込んだ部分を落とすことから始める。空気を抜くには細いマイナスドライバーなどをエアバルブの内側へ入れることでも可能だが、今回は「ムシ回し」と呼ばれる専用工具を使った。キャップを外したバルブ内へムシ回しを差し入れ、反時計回りに回すとバルブの中にあるムシが外れて空気が抜けるのだ。

空気が抜けたらタイヤのビードをホイール中央に向けて落とす。

空気が抜けたらタイヤの片側だけでいいのでビードを落とす。ホイールリムは中央部分が窪んでいるので、ここへ向けて片方のビードを落とし込む。するとリムとタイヤの固着が取れるというわけだ。

タイヤレバーの片方を軸にしてもう1本でビードをめくり上げる。

落としたビードを持ち上げると内側にチューブが入っていることが確認できるはず。チューブを傷つけないように注意しながらタイヤレバーをエアバルブのある位置と反対側へ差し入れ、ビードをリムの外側へ捲る。その状態を保持したまま、もう1本のタイヤレバーを差し入れ徐々にビードを捲る範囲を広げていく。ある程度(残り10cmほど)まで広がったら手の力で片側をリムから外せるはずだ。

全周をホイールからめくりチューブのバルブをホイール内側へ押し込む。

片側のビードが外れた状態ならリム内へ手を入れるスペースが生まれる。この状態で先に内側にあるチューブを外へ引き出すことにする。エアバルブからナットを外して手で押し込むとリム内へ潜らせることができる。そこからチューブを引っ張り出すのだ。

チューブをタイヤから引き出す。

チューブを引き出すのにコツなどは不要。ひたすらエイヤッと引っ張り出すが、何かに引っ掛けてチューブを傷つけないように気をつけたい。

残りのビードはタイヤレバーで支点を作りプラハンで叩いて外す。後は手でも外せる。

ホイールリムに残っているもう片方のビードをめくろう。上写真のようにタイヤレバーを1本だけ差し入れてビードをリムの外側へ向ける。この状態で5〜10センチほど離れた場所をプラスチックハンマーなどで叩く。するとズルッとビードが落ちてくれるので、残りは手の力でホイールからタイヤを外すことができる。

スパイクタイヤを組み込む

14インチ用のリムバンドは新品を用意した。

タイヤを組み込む前にリムバンドの痛み具合を確認しよう。今回は山田が気を利かせて新品のリムバンドを用意してくれていた。遠慮なく使わせてもらおう。

リムの中央部が凹んでいるのでリムバンドを装着する。

前述したようにリムの中央付近は他の部分より凹んでいる。ここへリムバンドを入れてスポークの突起などでチューブをパンクさせないように保護するのだ。凹みにリムバンドを入れたらエアバルブの穴の位置を合わせておくこと。

スパイクタイヤのビードにワックスを塗る。

タイヤは外す時と逆の手順で片側ずつリムにはめることになる。まず入れる側のビードの表側へたっぷりとビードワックスを塗っておく。こうすることでビードとリムが滑りやすくなり、作業をラクにしてくれる。ビードワックスではなく台所用石鹸や石鹸水で代用できる。ホイールの上へタイヤを置いたら手と膝を使ってタイヤを押し込むと、タイヤレバーなどを使わなくても片側はリム内に落ちてくれる。

片側だけリム内に落としたらエアを少々入れたチューブをタイヤ内へ入れる。

片側のビードがリムに落ちたら、タイヤの内側へタイヤチューブを入れる。チューブを入れるときは軽く空気を入れて丸い形状を保てるくらいにしてからだとよれずに入れることができる。

ここが難しいのだがエアバルブをリムの穴に通す。

実はこの作業が一番大変かもしれないのが、エアバルブをリムの穴に通すこと。このスパイクタイヤはなぜだかビードが硬くて指を入れづらいことから、何度も試してうまくハマらず挫折しそうになったことを白状しよう。エアバルブを穴へ通す時はチューブ全周をタイヤ内へ入れる前に行うこと。またこのタイヤにはなかったが、タイヤのサイドウォールに軽点マークと呼ばれる丸い印があることがある。この印をエアバルブと合わせることでタイヤのバランスが取れることになる。

バルブにナットを素早くかけて、外れないようにする。

気長にチャレンジして30分くらいかかっただろうか……。ようやくバルブを穴へ通すことができた。ここでの注意点はバルブが少しだけ出た状態から次の作業へ移行しないこと。この時点でしっかりバルブを出しておかないと、続きの作業中に十中八九チューブを噛んでパンクさせてしまうのだ。バルブが少しでも出てきたらナットをはめて潜り込むのを防止しつつ、さらに手をれてバルブを突き出すようにしよう。

残りのビードの裏側にワックスをたっぷり塗る。

チューブが無事に入ったら、再度ムシを外して空気を抜いておく。チューブの噛み込みを予防するためだ。続いて残りのビードの内側へたっぷりとビードワックスを塗る。

タイヤレバーを支点に5cmほど間隔を開けて手でビードを落とす。

エアバルブと反対側からビードをはめていく。指の力ではめてしまう人もいるようだが、このタイヤが硬いためかまるで入れることができない。そこでタイヤレバーがチューブと噛まないように気をつけながら差し込み、捲れてこないよう膝で押さえる。さらに5〜10cmほど離れた場所を手のひらで押し込んでいくとビードが徐々にはまってくれる。この時点でタイヤレバーは外しておくこと。

最後の最後はタイヤレバーを使って少しずつビードを収める。

両手でビードをはめていくと半周を過ぎたくらいから手の力では入ってくれなくなる。そこで再度タイヤレバーの登場だ。まずビードが捲れてこないよう膝で押さえながら、やはり10cmほど離した場所へタイヤレバーを入れて指の力で押し込んでいく。

エアバルブをしっかり固定して空気を指定空気圧まで入れた。

両サイドのビードがリムへ収まってくれたらエアバルブにムシを戻してエアを入れる。この時にエアが抜けてきてないか耳を傾け、チューブを傷つけていないか再確認しよう。

車体へタイヤを戻す

タイヤ交換を終えたフロントから車体に戻すのだが、今回のフロントタイヤは純正よりも太いため、そのままではフォークに干渉して入らず……。一旦空気を抜いて、アクスルシャフトを通してから、また指定空気圧まで入れることに。

これにてタイヤ交換作業は終了だ。タイヤ交換を終えたらブレーキパネルを戻してフロントフォークへタイヤを差し入れる。ブレーキパネルにある溝とフォーク右側にある突起を重ねるようにして差し入れ、アクスルシャフトを通す。

スピードメーターケーブルとブレーキロッドを戻す。

外した時と逆の手順でブレーキロッドとスピードメーターケーブルを元通りに組み直す。これにて完了だ。

失敗談

二人で作業したのはリトルカブとスーパーカブの2台ともタイヤ交換をしたから。一人がフロントタイヤを交換しつつ、その様子と撮影。残りの一人が残りのリヤタイヤを交換するという流れだ。前述のようにフロントタイヤを交換する模様を撮影しながら、残りの一人がリヤタイヤを交換していた。ここで事件が起こる。

撮影時間を考えて2人で作業したが、サイズの太いリヤタイヤで苦戦した。

リヤタイヤを外すのに手こずり、フロントタイヤを交換し終えた時もまだ作業中。そこで二人で作業してようやく外れた。さらに新品のスパイクタイヤを組み込んだところ、なんとエアを入れるとシューっと音がする。チューブを傷つけてしまったのだ。また同じ作業を繰り返して元のチューブを組んでみたところ、こちらもシューっと音がしてパンクしていることが発覚。この時すでに夕方近くになり、そろそろ陽が落ちる。残りの撮影を考えてリトルカブのリヤタイヤはサイクルショップでパンク修理してもらうことにした。

すっかり暗くなった頃にリヤタイヤを車体へ戻すことができた。

またしてもお粗末なことになってしまったが、結果的にプロに頼んで正解。わずかな時間と料金(1500円)で素人が途中で放り出した作業を完成させてくれた。とっぷりと暗くなってから車庫へ戻り、リトルカブのタイヤ交換は終了したのだった。さて、次回はいよいよ雪道を走ることになりそうだ。

キーワードで検索する

著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…