行ってきました雪国へ! スパイクタイヤを履いたリトルカブなら雪道も安心! 【カブだって雪道を走りたい】

豪雪地帯出身のモーターファンBIKES編集担当の山田により、スーパーカブとリトルカブの2台へスノータイヤを履かせる企画が勃発した。前回までの記事でリトルカブのタイヤ交換手順を紹介しつつ、スパイクタイヤを履かせた。今回はいよいよ雪道に連れ出してスパイクタイヤの実力を試してきたぞ!

REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

確かに雪国での郵便配達員は見事なテクニックで雪道を郵政カブで走っている。習熟度合いや運転技術を備えているのはもちろんだが、物理的に通常の夏タイヤで走るのは難しくスノータイヤやチェーンを装着している。スノータイヤなら一般のライダーでも雪道を走行することは可能なのだろうか。そんな思いから今回の企画が始まった。モーターファンBIKES編集担当の山田は豪雪地帯出身であり、雪道を走る郵政カブは身近な存在でもあったのだろう。片や筆者は都内出身であり雪道を走るのはスキーに向かう道中か、数年に一度降るかどうかの積雪時のみ。雪道を走るのはいわば非日常である。まるで見方の異なる二人だが、雪道をカブで走るとどうなのだろう?という思いは同じだ。

少々太いスパイクタイヤを履いた姿が頼もしいリトルカブ。

そんなわけで山田が言い出した「カブで雪道を走りましょう」という提案に面白そうだなと思って賛同した。前回までに「備えあれば憂いなし!雪対策のリトルカブにスパイクタイヤを履かせてみた」「リトルカブのタイヤ交換手順 スパイクタイヤを履かせるのに四苦八苦!」と記事を展開。我がリトルカブにスパイクタイヤを履かせて、あとは雪が降るのを待つだけという状況だった。ところが年末年始は天気が良く、しかも暖かそうな予報。暖冬だとドカ雪が都内でも降ることが多いから期待していたのだが、どうも期待薄そう。だったら雪のある場所までカブをトランポで運んでしまえばいい!

テストコースに選んだのは広大な圧雪駐車場。

ということでやってきました新潟県。豪雪地域として有名な土地であり、数多くのスキー場があることでも知られる。しかも都内からのアクセスは悪くなく、関越自動車道を使えば2〜3時間もあればたどり着ける。さすがに2台のカブで自走するには遠いが、トランポに積んでしまえばアッという間に行けてしまう。そこで日和ったと言われてしまうと返す言葉もないが、目的は「カブで雪道を走る」こと。しかも走るのは経験もテクニックもない一般ライダーと同じような二人。ここはひとつ、普通のライダーが雪道をカブで走ることができるのかどうかに焦点を当てよう。

初めての雪道にビビリながらも走り出す。

いかにスキー場が多い新潟県とはいえ、一般道はほぼ除雪されていた。そこで選んだのは圧雪されたままの広大な駐車場。一般道とは若干条件が異なるものの、凸凹した雪が積もったシチュエーションは擬似雪道と考えていいだろう。おまけにテクニックのない二人がいきなり公道を走るより危険ではないはず。トランポから2台のカブを降ろしてイザ走り出そう。初めはおっかなびっくりだったものの、ほんの数メートル走っただけで「これはイケル!」との感触を得た。スパイクタイヤの威力は絶大で、滑りやすい路面を走るのと変わらない感覚で運転することができた!

傾けると転びそうになるのでハンドル操作で曲がることに。

圧雪状態なのでスピードはせいぜい30km/h前後。発進時に1速を使うものの、すぐさま2速へシフトアップしたら、そのまま走ることにした。というのも3速まで上げるとトルクが薄くて走りづらいのだ。2速であればスロットル操作に対して素直に反応してくれる。問題はブレーキングとコーナリングだろう。ひとまずブレーキを使わず向きを変えてみる。通常の操作のようにバンクさせるとすぐさまリヤタイヤだけでなくフロントタイヤも滑り出す。そこでハンドル操作で向きを変え穏やかなスロットル操作をすると、何事もなく曲がってくれた。_

車体が埋まるほどの積雪路へ突っ込んでみた。

何度かコーナリングを試しているうち、スピードも上がる。すると曲がりきれないアンダーステア状態になるわけだが、ここでスロットルをワイドに開けると適度にリヤタイヤが滑って向きを変えられることを発見。内側の足を路面に突き出してセンサー代わりのようにしつつ、スロットルにより向きを変える操作は何やらスキーをしているみたいで楽しい。次第にバンクさせるようになるのだが、角度がつくにつれマシンの安定度は下がる。やはりスピードはホドホドが気持ち良い。すっかり楽しんでいたら重装備だったものだから汗ダクになってしまった。

若干ハンドルが取られるものの直進してくれた。

ちなみにブレーキングはどうだったのか。結論から言えば何事も起こらず普通にブレーキ操作をすることができた。スピードが低いこともあり、急制動に近い操作をしてみたのだが、ズルッと滑り出すことはなくしっかり止まってくれる。これは絶大な安心感につながり、物は試しとコーナリング中にブレーキングしてみた。フロントブレーキはマシンを倒していないだけにしっかり減速できたが、駆動力をかけた直後にブレーキングするリヤは外側へ滑り出す。ただ恐怖心はなく、なんとかスライドをコントロールできる。やはり雪道でのスピードは低いことが鉄則だ。

圧雪された状況には慣れた。では新雪がそのまま積もっている場所ではどうだろう。マシンが埋まってしまうような場所へリトルカブを進めると、意外なことにグイグイとリヤタイヤは雪をかき分けてくれる。やはりフロントタイヤは逃げてしまうことが多く進路に細心の注意が必要だが、埋もれてしまうことはなかった。ちなみに何度か試して転びそうになり雪の中で停止してしまった。ここから脱出するには大変そうだと思いつつスロットルを捻るも、やはり前へ進まない。フルスロットルにしつつ左右の足で雪の上を歩くようにすれば、なんとかリトルカブは前進してくれた。

転びそうになりながらもリヤタイヤは雪を掻き出してくれる!

雪道アタックをした日は外気温が3℃から4℃で快晴。防寒対策を万全にしてきたからさらに気温が下がっても大丈夫だったのだが、定常円旋回をしてみたり新雪が積もった場所へのアタックを繰り返していたら全身汗まみれになった。もはやスポーツしているのと同じようなもので、撮影時以外上着を脱いでいた。

数時間乗っていたら汗ダクになったけれど楽しい!

凸凹の圧雪路でこれだけ走ることができるのだから、アイスバーン以外は問題なく走行できることが確かめられた。気温が氷点下まで下がり圧雪が凍り出すとさらなる試練が待っていることだろうが、テスト日のような状況なら運転が大いに楽しめることも発見だった。もう数時間走っていれば、さらにリヤをスライドさせて向きを変える醍醐味とテクニックを習得できたことだろう。思いのほか雪の上を走ることが楽しく、気がつけば想像以上に時間が過ぎていた次第。ただ、刻々と状況が変わる一般道では楽しんでばかりいられないことも事実。とはいえスパイクタイヤを履いたリトルカブなら自信を持って走り抜けられることが確認できた!

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…