【Betaクロストレーナー250試乗】扱いやすさピカイチ! 初心者から上級者までカバーする“クロトレ”ってどんなバイク?

トライアルバイクで知られるイタリア「Beta」の2ストのメインストリームはRR2Tだが、これをベースによりフレンドリーに仕立てたのが「X-trainer」シリーズだ。全日本ライダーの濱原 颯道選手が250モデルをレポート!
取材協力:BETA motor Japan
PHOTO:山田俊輔

Beta・X-Trainer250 MY24/117万4800円(LDも同価格)

バイクにも“アウトドア”の波が到来!?

最近はキャンプや釣りなどのアウトドアな趣味が旺盛ですよね! それはバイクでも似たような現象が起きていて、オフ車の人気が少しずつ高まってきていると感じます。その中で「難しいコースにチャレンジしてみたい!」とか「良い景色を見ながら走りたい」という理由でエンデューロを楽しむ人も増加しています。

一口にエンデューロと言っても、ある程度高いスピードレンジで山道やゲレンデなどの広大なステージを巡るクロスカントリーと、難所をグイグイ突っ込んでいくハードエンデューロという二つのジャンルに大きく分けられます。このハードエンデューロに関しては軽くて走破性の高いトライアルバイクが最適ですが、特殊な形状からシートに座ることも難しいし、燃料タンクも小さいので1日タップリと山道を走ることは困難です・・・・・・。

前置きが長くなりましたが、そこで活躍するのが今回紹介するBetaの「X-trainer250(クロストレーナー)」です! この“クロトレ”が他のエンデューロマシンとどう違うのか、わかりやすく説明しましょう。なお250のほかに300ccモデルもラインナップされています!

ビギナーも扱いやすい上級な2スト250オフ!

さて、Betaには定番の「RR2T」シリーズと「X-trainer」の2種類の2ストエンデューロモデルが存在します。クロトレは基本的にRR2Tと同じパワーユニットなのですが、チャンバーを細く絞って出力を抑えているのが特徴です。その分フラットなパワー特性で、パワーバンドに入った時の2ストの猛烈な加速力に抵抗がある人にとって非常に扱いやすいのがメリット! スロットルを開けた際も過敏に反応しすぎず、落ち着いた出力特性と言えるでしょう。

キャブレターはKEIHIN PWK36をセット。Betaの2stモデルは基本的にPWK36で他メーカーだとPWK38を採用しているケースが多い。口径を絞る事により更に扱いやすさを高めている。リードバルブはV FORCEを装着しており、本来これだけで4万円近くするシロモノだ!

一方でエキスパートにはちょっと物足りなく感じてしまう面も……。なんて思っちゃったんですけど、RR2Tのチャンバーがそのまま装着できるそうなので交換することでさらにパワーがでるようになっているみたいです!

ボクがオフ車ビギナーだったら、まずはノーマル状態でじっくりとしゃぶり尽くして、車体と仲良くなれたらその後、RR2Tの排気系に変更してパワフルな走りを堪能しますね。段階を踏んで楽しめるのが嬉しいところだと思います。

コンパクトな車格がもたらすメリットは多い!

クロストレーナーのシート高は910mmで、RR2Tシリーズと比べて20mmも低いです。とにかく座面位置が高いオフ車でこれは大きいですね。さらに、ここから前後30mmのローダウンキットが組み込まれたモデル(LD)もラインナップされています。足つきを考慮しているのもビギナー向けのクロトレらしいところですね。

シート自体は硬めだが基本的にエンデューロバイクはスタンディングで乗る機会が多いので気にならなかった。乗り心地を優先してシートスポンジを柔らかくするとリヤタイヤの接地感がわかりにくくなることもあるから、そこは競技向けの作りなのかもしれない。ちなみに工具を一切使わずボタン一つで簡単に取り外しが可能だ。

ホイールベースは1467mmと同クラスのRR2T250よりも15mmショートで、コンパクトな印象のRR2T125よりも10mm短いです。車重も約99kgと100kgを下回り(RR2T250は103kg)、前後長とシート高がほかのエンデューロマシンと比べて一回りコンパクトで軽量とくれば、これはもうトライアルバイクに近いんですよね。先に申し上げた通り、ハードエンデューロではトライアルバイクが最適なので、オフ車として重要な魅力を引き立たせているわけです!

リーズナブルに提供する企業努力も見逃せない!

最後の車体価格について。X-trainerは106万8000円(消費税別)でRR2T250は124万円(消費税別)です。20万円近くもリーズナブルなんです! 同排気量でもこれだけの価格差が生じるのは各部のパーツでコストを下げているからです。例えばサスペンションならRR2Tシリーズはドイツのザックス製、クロトレはスペインのオーレ製を採用しています。他にもリム(ホイール)やタイヤの銘柄など細かな個所を変えて調整し、低価格を実現しています。

クロトレのオーレ製サスペンションはやや動きが早く、ほどほどの剛性感でフロントアップやステアケース(障害物)を乗り越える際に操りやすい。ブレーキは前後ともニッシン製、タイヤはMitas製を採用している。

まぁミドルクラスで総額100万円オーバーって聞くと高額ですけど昨今のバイク市場は高値傾向ですし、クロトレはビギナー寄りと言っても高性能なマシンであることに変わりはありません。これから本格的に“オフロードバイク”を楽しみたいと思っている人は、ぜひBetaのX-TRAINERを選んでみてはいかがでしょうか?

ディテール解説

フロントと同じくリアサスペンションもオーレ製。動きもフロントと似ていてリアを振ったり走りでの操作感はかなり好感触。もちろんアジャスター機能もあるけれど慣れるまでは推奨セットからイジらない方が賢明だ。リヤタイヤは140/80-18サイズとパワーの割には太めでグリップ感にも優れ、泥避けもしっかりと機能しているのがわかる。

フットペグはRR2Tシリーズとは違った形状になっているが、とくに不満が出ることはなかった。シフトペダルとクランクケースに少し空間があるため、枝などを挟み込まないように気を使って乗ると良さそうだ。

多くのオフロードバイクはハンドルの幅が広く設定されており、肩幅やライディングスタイルによってカットする場合も。しかしクロトレは僕の身長(191cm)だと切る必要がないように感じた。小柄な人でも調整しやすいだろう。

最新のMY24からクロストレーナー250にだけ採用されたマグネット式キルスイッチ。エンデューロ競技だと身を守るためにバイクを放り投げることも日常茶飯事だが、その際にこのマグネット式キルスイッチのバンドを手首に巻いておけばバイクと離れた時にエンジンが停止してくれる。ちなみに電源は車体のバッテリーと別系統。予備の乾電池(単四2本)を持っておくべし。

主要諸元

エンジン
トランスミッション 6速
スターター セルスターター
排気量 249cc
ボア 66.4mm
ストローク 72mm
クラッチ 湿式 多板
イグニッション AC-CDI Kokusan
スパークプラグ NGK GR7CI8

シャーシ
乾燥重量 98.8kg
燃料タンク容量 8.8L(リザーブタンク1.5L)
フロントブレーキディスク径 260mm
リアブレーキディスク径 240mm
フロントブレーキ NISSIN 油圧式ディスクブレーキ
リアブレーキ NISSIN 油圧式ディスクブレーキ
ドライブチェーン 520シールチェーン
フロントサスペンション オーレ 
リアサスペンション オーレ 
フロントサスペンションストローク 270mm
リアサスペンションストローク 270mm
最低地上高 320mm
最高地上高 1245mm
全長 2157mm
ホイールベース 1467mm
ステップ高 390mm
シート高 910mm

ライダープロフィール

濱原颯道(はまはら そうどう)
1995年1月17日生まれ。身長191cm、体重約90kgとオートバイレーサーとしては規格外の体躯を持つ。2017年に全日本ロードレース選手権(JSB1000)デビュー、2021年にはランキング2位を獲得。鈴鹿8耐や全日本スーパーモト、エンデューロレースの参戦、ミニバイク誌のインプレ寄稿など豊富な経験を活かし、多方面で活躍する「モータースポーツ総合エンターテイナー」。

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