いちばん小さなレクサス!「LBX」に試乗

過去イチ小さなレクサス「LBX」の実力を試乗して確かめた「高級感も軽快さもすべてがちょうどいい」

11年の長きにわたり販売された、レクサスCTの生産終了から約1年半。新たにラインナップのボトムレンジを担うレクサスLBXが発売された。時節柄エントリーモデルのボディタイプがハッチバックからSUVになったわけだが、レクサスが唱える走りの質感は、このもっともコンパクトなLBXにも受け継がれているのだろうか。

Lexus LBX

メイン市場は日本とヨーロッパ

レクサスLBX Relax AWD。ボディカラーは写真の「レッドスピネル」を含む全6種類が用意される。
レクサスLBX Relax AWD。ボディカラーは写真の「レッドスピネル」を含む全6種類が用意される。

開発陣と話していて驚いたのは、このレクサスLBX、北米と中国では販売しないんだそうだ。ということは日本、欧州そして中国以外のアジアに向けて作られたクルマということになる。レクサスのマーケットの実に25%という、少数のターゲットに向けて作り込まれたクルマ。日本で乗っていろいろとしっくりくるのは、そんなところも関係しているんだろうなぁと思った。

さて、そのレクサスLBX。ベースはヤリスクロスと聞いていたけれど、乗ってみてソイツが脳裏をかすめるシーンはほとんどない。聞けば専用設計のフロントカウル、センターピラーなどへの高強度なホットスタンプ材の採用、さらに構造接着剤を多用するなどしてボディを高剛性化。足まわりもトレッドを+50mm、ホイールベースを+20mm拡大したり、ハブナックルを鍛造アルミニウム製に置き換えたり……と、目指す走りの質感や乗り心地に合わせ、だいぶ手が入れられている。

パワートレインは1.5リッター直列3気筒エンジン+モーターのハイブリッドと、言葉にすればヤリスクロスやアクアと同等だが、モーターは出力のアップした最新世代にアップグレード(80PS/141Nm→94PS/185Nm)。AWDのリヤeアクスルも同様だ(5.3PS→6PS)。なお、バッテリーはヤリスクロス同様のリチウムイオンではなく、アクアと同じバイポーラ型のニッケル水素となる。

ラインナップは3種類、追加バージョンも予定

用意されるラインナップは現状3種類だが、そこにヒエラルキーが存在しないのも面白い。インテリアの素材やホイールのデザインが異なるだけで、エンジンや足まわりのセッティングは同一なのだ。その3種類とは、スポーティ&スタイリッシュな「Cool(クール)」、ラグジュアリーな「Relax(リラックス)」に加え、カラーコーディネートやトリム素材などを自由に選ぶことのできる「Bespoke Build(ビスポーク・ビルド)」。価格は「Cool」と「Relax」が460万円(FWD)と486万円(AWD)で同じ、「Bespoke Build」はそれぞれ550万円、576万円となる。なお、すでに発表されている「Elegant(エレガント)」「Active(アクティブ)」「Urban(アーバン)」については後日追加される模様。これらは「Cool」や「Relax」よりも手ごろな価格になるようだ。

しっかりラグジュアリー、ほどよくスポーティ

アシがよく動き、ハンドリングは軽快。乗り味はドイツ系というよりはフランス系コンパクトに近いシットリ系といえる。
アシがよく動き、ハンドリングは軽快。乗り味はドイツ系というよりはフランス系コンパクトに近いシットリ系といえる。

では実際に乗ってみた感じはどうか? 最初に試乗したのは「Relax」のAWDだった。試乗会場となった横浜・みなとみらいの市街地を流しいていて印象的なのは、静粛性の高さと乗り心地のよさ。信号青でクルマの流れをリードするような場面でも、エンジンの始動時やアクセルを開けていった時の騒音や振動が少なく、レクサスのベーシックモデルとはいえブランドに期待するスムーズな乗り味は十分に確保されている。太い18インチタイヤを履く割に路面からの突き上げも小さい。このあたりは「ルックス重視で大径タイヤを履くことを前提に、ボディや足まわりを作り込んでいった」という開発陣の努力を証明する事実といえそうだ。

続いて首都高速神奈川線へ。都市高速のジャンクションは右へ左へのタイトコーナーが連続する場面も多いが、そんなシーンでは車体がしっとりとロールしつつ、サラリと曲がっていくマナーが印象的。LBXのライバルはMINI クロスオーバーやアウディ Q2あたりになると思うが、それらがあまりロールをさせず、ガッシリ路面を捉えつつ曲がって行くのに対し、ずいぶんキャラクターが違う。このあたりは「上質な高級スニーカー」という開発コンセプトをよく表現しているといえるだろう。ハードなランニングシューズは「MORIZO RR CONCEPT」の市販版に乞うご期待、というわけだ。

高速道路での動力性能は必要にして十分というところ。合流などでのフル加速では、エンジンの回転数が4500rpmを超えてくると、3気筒っぽい「ビーン!」というサウンドが耳に入ってくる。だがここでも振動はよく抑えられており不満というほどではない。聞く人によってはスポーティとも受け取れるだろう。

AWDとFWDの違いは小さなようで意外に大きい

続いて試乗したのは「Cool」のFWD。FWDはリヤサスペンションがAWDのダブルウイッシュボーンからトーションビームになるのだが、激しく路面が荒れた箇所では少しリヤまわりがワナワナ震えるような、AWDでは気にならなかった現象がみられた。これは主に、FWDはリヤサスがボディに直付けされるのに対してAWDは間にモーターを搭載するサブフレームが追加されることが大きいと思うのだが、レクサスらしい高級感を期待するなら+26万円払ってでもAWDかなと個人的には思った。

ただ、AWDは滑りやすい路面で発進を助けるだけのE-Fourだし、80㎏重くて燃費も1.5km/L違うし、ラゲッジルーム容量もFWDが330Lなのに対してAWDは253Lになる。さらに言えばFWDでも通常の路面なら十分に快適だ。うーん悩ましい。みなさんも購入の際はぜひこのあたりについてご検討を。

LBXは過去イチ小さなレクサスだ。いわゆる小さな高級車。過去にもそんなコンセプトのクルマは多々あったが、装備が豪華なだけで走りの質感が伴っていなかったり、スポーティすぎて乗り心地がイマイチだったりと、その名に相応しいちょうどいいモデルは数少なかったように思う。本当の意味での小さな高級車であり、クラスレスなレクサスLBXは、ダウンサイザーや上級移行者、国産ユーザーから輸入車ファンまで、上から下から中から外から、さまざまな層を取り込めそうな高いポテンシャルを感じさせるクルマだった。

REPORT/市原直英(Naohide ICHIHARA)
PHOTO/Lexus International

SPECIFICATIONS

レクサス LBX リラックス AWD

ボディサイズ:全長4190 全幅1825 全高1545mm
ホイールベース:2580mm
車両重量:1390kg
エンジン:直列3気筒DOHC
総排気量:1490cc
最高出力:67kW(91PS)/5500rpm
最大トルク:120Nm(12.2kgm)/3800~4800rpm
トランスミッション:電気式CVT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ストラット 後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後225/55R18
車両本体価格:486万円

【問い合わせ】
レクサスインフォメーションデスク
TEL 0800-500-5577

【関連ウェブサイト】
レクサス公式サイト
https://lexus.jp

新型コンパクトラグジュアリーSUV「レクサス LBX」のエクステリア。

新型コンパクトSUV「レクサス LBX」がワールドプレミア「サイズとヒエラルキーを超えた次世代モデルは秋登場」

レクサスは、イタリア・ミラノで行われたメディア向けイベントにおいて、新型 コンパクトラグジュアリークロスオーバー「LBX」を世界初公開した。最新ハイブリッドパワートレインを搭載し、日本での発売は2023年秋以降を予定している。

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