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MINI Coupé
ひょっとするとマニアも忘れかけているかも知れない
過去に取り上げたモデルを、ザッとご覧になっていただければスグにわかることだけど、マニアの気を引くモデルは新車時に“ぶっ飛んで見えた”カタチのクルマである。“なんだこりゃ!?”という思いが強かったモデルほど、天邪鬼なマニアは今になって欲しくなる。そして、そういったモデルは大抵、流通量も少ない。
そりゃそうだ、デビュー時にマニアが見ても“なんだこりゃ”だったのだから、一般人からすれば単にヘンテコな形(で買う人の気が知れない)のクルマでしかない。しかもメーカー(&デザイナー)にしても量販の4ドアモデルでそんな(無謀な)チャレンジなどできないから、たいていが2ドアだ。だから思ったほど、というか予想通りというか、そんなには売れない=レアなモデルになる、というわけだ。
そのうえデビューから10年以上経っても色あせない(街で見ない)のだから、マニアにとってはさらに好都合。物好きは必ずどこかにいらっしゃるからか、値下がり率が悪いのは玉にキズだけれど、プレミアがつくほどではないモデルもまだまだ多いのでまだしも買いやすい。いや、今のうちかも?などというスケベな心理も働いて……、というモデルを最近は紹介するようにしている。
今回のピックアップは、ひょっとするとマニアも忘れかけているかも知れない「MINIクーペ」だ。忘れそうになるのも無理はない。デビューから早12年、後継モデルはなかった。つまり1代限り。さりとて放蕩息子というわけではなかったはず。なぜならその後のMINIはバリエーションを“減らして”大成功していくのだから……。
取れそうで取れないルーフが良い
MINIクーペは、伸び盛りのブランドにとって、ちょっとした余興だったのかも知れない。2シーターのロードスター(コンバーチブルは別にあった)を投入し、すぐさま2シータークーペを出した。英国風に言えばDHC(ドロップヘッドクーペ)からのFHC(フィクスド・ヘッド・クーペ)。アイデアの精神は伝統的であり、英国流であることは間違いない。チョップドルーフなスタイルが、たとえ“なんだこりゃ”に見えたとしても。
今見ると、なかなかどうしてイケる。スパイダーだってクローズドでは同じように見えるけれど、やっぱりここは取れそうで取れないという変態さが良い。このルーフ、パカっと外せたんじゃリバーシブルみたいで贅沢さが薄れる。
真横から見ると、スピードスケーターの頭のようだ。できれば明るい色の2トーンがいい。黒っぽいカラーではスパイダーと一見同じように見えてしまうから。グリーンにシルバーとか、いいなぁ。ホワイトに赤といった日の丸クーペも今ならかえって洒落ている。
カーセンサーで検索してみると、意外に流通していて40台以上引っかかった。グレードはクーパー以上JCW以下。当然ながらJCWが高くて300万円前後。クーパーSは200万円前後で、クーパーなら100万円を切ってくる個体も。もちろん走行距離次第だが、5万km前後が多いように思えた。そこがアベレージなのだろう。
クーパーSのMTを探すというあたりが落とし所
嬉しいことに3ペダルだからといって相場にあまり差のないこと。JCWあたりなら力もあるし、2ペダルで楽に流して楽しむのもいいけれど、クーパーは3ペダルで一生懸命に操った方が楽しそうだ。クーパーSのMTを探すというあたりが落とし所かも知れないけれど。
とにかくMINIのなかで最もスパルタンな乗り味だったというのが、うっすら記憶に残るMINIクーペの印象だ。おそらくクーパーSとJCWに試乗したことがあったと思うが、いずれもなかなか硬派で、剛性の塊をドライブしているような気分だったように思う。5万km走った個体でも、おそらくさほど変わらないのではないか。もっと距離の伸びた個体でもアシのリフレッシュで十分に現役フィールを取り戻せるはず。
このスタイリングはMINI史随一のユニークさである。二度と出てこない=長く乗れます。