限定12台「ベントレー スピード シックス コンティニュエーション」が製造開始

戦前の車を忠実に再現した「ベントレー スピード シックス コンティニュエーション」が製造開始

プロトタイプを使った厳しいテストプログラムを完了し、「スピード シックス コンティニュエーション」のカスタマー用車両の製造が開始した。6.5リッター直列6気筒を組み立てるマリナーのテクニシャン。
プロトタイプを使った厳しいテストプログラムを完了し、「スピード シックス コンティニュエーション」のカスタマー用車両の製造が開始した。6.5リッター直列6気筒を組み立てるマリナーのテクニシャン。
ベントレー・マリナーにおいて、コンティニュエーションシリーズの第2弾「スピード シックス コンティニュエーション」のカスタマー向け車両の組み立てが進行中だ。プロトタイプの「スピード シックス カーゼロ」を使った3万5000kmに及ぶ実走行テストが完了。今後、限定12台がハンドメイドで製造される。

Bentley Speed Six Continuation

半年間に及ぶテストプログラムをクリア

スピード シックス コンティニュエーションは、プロトタイプを使った6ヵ月に及ぶ厳しいテストを実施。1万km以上を走破し、当時と変わらない性能が発揮されていることが確認された。
スピード シックス コンティニュエーションは、プロトタイプを使った6ヵ月に及ぶ厳しいテストを実施。1万km以上を走破し、当時と変わらない性能が発揮されていることが確認された。

現在、ベントレーは、93年ぶりに「スピード シックス」のカスタマーモデルの製作を進めている。2020年、マリナーのエンジニア、職人、技術者からなるプロジェクトチームは、英国のスペシャリストやサプライヤーと緊密に協力し、世界初の戦前車のコンティニュエーションシリーズのプログラムを立ち上げた。

最初のコンティニュエーションシリーズである「ブロワー コンティニュエーション」の製造が完了したことを受けて、「スピード シックス コンティニュエーション」のエンジニアリング車両0号車(スピード シックス カーゼロ)とファクトリーワークスを使った、6ヵ月間におよぶテストプログラムを実施。最高速度テストでは、オリジナルと同じ112mph(180km/h)を記録している。

テストが完了したことを受け、当時と同じ素材や技術を用いて、12台のスピード シックス コンティニュエーションの製造が開始された。スピード シックス コンティニュエーションは、世界初の第2次世界大戦以前の車両を製造するコンティニュエーションシリーズ。限定12台はすべて予約時点でソールドアウトしており、それぞれのカスタマーは当時を彷彿とさせる仕上げや素材から、自分の希望に合わせた車両を作り上げることができる。1台の車両の製造にはそれぞれ10ヵ月を要する予定だ。

英国が誇るレストア技術をフル活用

英国のレストア企業の協力を得て、当時のままの姿で再現される「ベントレー スピード シックス コンティニュエーション」。
コンティニュエーション・シリーズの製造には、ベントレーやマリナーだけでなく、英国が誇るレストア企業の技術もフル活用された。

戦前のベントレー工場であるクリックルウッドの環境は、清潔で整然としたマリナーのワークショップとは大きくかけ離れている。それでも、それぞれのスピード シックス コンティニュエーションは、1920年代のW.O.ベントレーとそのチームが慣れ親しんだであろう工具、材料、技術を用いて製造。今回、当時のままを再現するため、マリナーは英国が誇る高い技術とレストアの専門家のネットワークを活用することになった。

スピード シックス コンティニュエーションのシャシーは、マトロックにあるポートベロー・エンジニアリング(Portobello Engineering)がオリジナルの設計図をベースに製造。彼らが最初に行ったのは、シャシーレッグとクロスメンバーの素材となる5mm厚「S355J2」鋼をプレスするため、20t以上の金型を製作することだった。この研究開発プロセスだけで実に6ヵ月以上を要したという。

ポートベロー・エンジニアリングでプレス成形されたシャシーレッグとクロスメンバーは、トリミング、チェック、バリ取りが行われ、最終的にベントレーのクリックルウッド工場で使用されていたBSF(非メトリック)ボルトを使って組み上げられる。

スピード シックス コンティニュエーションのボディを構成するアッシュフレームは、伝統的なコーチビルドの道具と技術を駆使して、この部門のスペシャリストであるロマックス・コーチビルダーズ(Lomax Coachbuilders)によって手作業で製造。フレームがマリナーのワークショップでスピード シックスのシャシーと一体化され、オープンツアラータイプのボディワークが組み上げられる。

ル・マン24時間レース用ライトを再現

英国のレストア企業の協力を得て、当時のままの姿で再現される「ベントレー スピード シックス コンティニュエーション」。
ヴィンテージ・ヘッドランプ・レストレーション・インターナショナルは、1929~1930年のル・マン24時間で使用されたヘッドライトを当時のままに再現した。

シェフィールドのヴィンテージ・ヘッドランプ・レストレーション・インターナショナル(Vintage Headlamp Restoration International Ltd)は、ヴィンテージデザインのヘッドランプをオリジナル仕様で製作することで知られている。彼らは1929年と1930年のル・マン24時間レースで重要な役割を果たした、特徴的なスピード シックス用ヘッドランプを正確に再現した。

ビスター・ヘリテージに拠点を置くヴィンテージ・カー・ラジエター・カンパニー(Vintage Car Radiator Company)は、クラシックカーのラジエターとコンポーネントのエキスパート。戦前のラジエター構造、28種類すべてを製造する世界で唯一の企業だ。同社はスピード シックスのラジエーターコア、鏡面研磨されたソリッドニッケルシルバーのラジエターシェル、スチールと銅製の手打ち燃料タンクの製造を担当した。

キングスベリー・レーシング・ショップ・リミテッド(Kingsbury Racing Shop Limited)は、ヴィンテージ・ベントレーのレストア、準備、整備のスペシャリスト。彼らはトム・ダーク・エンジニアリング(Tom Dark Engineering)と協力し、オリジナルの図面を3Dモデルへと変換した。エンジンブロックの鋳造を含む600以上のパーツが、6.5リッター直列6気筒エンジン用に製作されている。

初期のダイノテストにおいて、6.5リッター直列6気筒エンジンは207PSを発揮。現代の素材を駆使すれば、これ以上のパワーを達成することも可能だが、コンティニュエーション・シリーズの意図は、1929年当時の姿と性能を忠実に再現すること。あえて、当時のままのスペックに留められているという。

12台すべての製造が完了した「ベントレー ブロワー コンティニュエーション」。

「ベントレー ブロワー コンティニュエーション」の最終号車が完成「スピード シックス 」の実走行テスト開始【動画】

ベントレーは「ブロワー コンティニュエーション」の最後の顧客仕様車が完成したことを受けて、「スピード シックス コンティニュエーション」の本格的なテスト段階に入ったことを発表した。各技術の品質を確認・証明するため、8000kmのサーキットテストを含め、3万5000kmの実走行テストが行われる予定だ。

キーワードで検索する

著者プロフィール

ゲンロクWeb編集部 近影

ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…