新型「MINIクーパー3ドア」のガソリン車とEVを比較試乗

新型MINI 3ドアの「クーパーS」と「クーパーSE」に比較試乗してエンジン車とEVの良さをそれぞれ検証

新型MINIクーパー3ドアのエンジン車「S(右)」と電気自動車「SE(左)」。
新型MINIクーパー3ドアのエンジン車「S(右)」と電気自動車「SE(左)」。
新世代MINIファミリーが続々と発表される中、ようやく本命? ともいえる3ドア・ハッチバックが日本に上陸。新たに「クーパー」のサブネームが与えられることになったこの4代目、そのエンジン車「S」と電気自動車「SE」を同時に試乗して比較した。(GENROQ 2024年10月号より転載・再構成)

MINI Cooper S & Cooper SE

実はプラットフォームが異なる2台

2.0リッター4気筒ターボを積むクーパーSは、従来のスポーティなイメージから一転。高級路線と呼んでもいい質感の高い乗り味になった。スポーツ路線はJCWが一手に請け負うということか。
2.0リッター4気筒ターボを積むクーパーSは、従来のスポーティなイメージから一転。高級路線と呼んでもいい質感の高い乗り味になった。スポーツ路線はJCWが一手に請け負うということか。

EVモデルと内燃機関(ICE)モデルを、別仕立てのプラットフォームでラインナップする現行MINIシリーズ。その3ドアモデルにおける高性能版「クーパーSE」(EV)と、「クーパーS」(ICE)が日本上陸を果たし、早速これを乗り比べた。今回の試乗で一番興味深かったのは、ICE仕様のクーパーSが、EVであるクーパーSEに乗り味を“寄せてきた”ことだった。

その話をする前にまず両者のスペックを比べると、クーパーSEは54.2kWhのバッテリーを床下に搭載し、218PS/330Nmのモーターで前輪を駆動するピュアEVだ。ディメンションは全長3860×全幅1755×全高1460mmと実は小柄で、クーパーSと比べると全長は15mm短く、全幅で10mm、全高で5mm長いだけである。対してホイールベースは2525mmと30mm長く取られており、171cmの筆者が後部座席に座ると、クーパーSより若干膝周りに余裕があり割と快適だった。

対してクーパーSは、2.0リッター直列4気筒ターボに7速DCTの組み合わせ。その出力は204PS/300NmとクーパーSEに一見見劣りするが、車重は1320kgと320kgも軽いから、性能的に不足はない。

外観は先代のマイナーチェンジ版から採用されたバンパーインのシングルフレームグリルが踏襲された。また実に細かい違いだが、クーパーSEは空気抵抗を低減するためだろうドアノブやウインドウモールがフラッシュサーフェース化されている。それ以外は実に似ていて、パッと見ではその区別がつかないだろう。

走りは上質な高級路線に

クラムシェル型ボンネットを開けるとエンジンが顔をのぞかせる。ICEのラインナップはほかに1.5リッター3気筒ターボの「クーパーC」がある。
クラムシェル型ボンネットを開けるとエンジンが顔をのぞかせる。ICEのラインナップはほかに1.5リッター3気筒ターボの「クーパーC」がある。

そして実際の走り味も、両者は実によく似ていた。まず通常の走りだが、“エンジン付き”でもクーパーSはとても静かだ。そして「グリーン」モードに入れるとエンジンを積極的に止めにかかるから、さらに静粛性が高まる。その出足も低速からブーストが効いており、とても快適。横並びに比較すればもちろんEVの方が静かだが、ときおり聞こえる軽やかなエンジン音や小気味良いDCTの変速がむしろ心地良いくらいだ。

ハイライトは「ゴーカート」モードで、“Woo-hoo!”というかけ声と共に、それまで猫をかぶっていたエンジンが、がぜんパワーを漲らせる。ただエンタメ性でいうとクーパーSEの方がアグレッシヴなのは、ICEとEVの過渡期を感じさせた。宇宙船のようなデジタルサウンドに好みはあれど、明らかにEVの方が演出が派手なのだ。クーパーSは音を外にまき散らせない弱みもあるが、高回転まで回さないとサウンドも控え目で、ちょっとさみしい。せめてゴーカートモードだけは、もっとスピーカーで音を車内側に増幅させたり、バブリングを疑似的に作り出すくらいしてもよかったと思う。

またクーパーSはその走りも、冒頭で述べた通りかなりクーパーSEに寄せている。せっかくEVとガソリンを2本立てするのだからもっとメリハリをつけてくるのかと期待したが、サスはしなやかで乗り心地も良く、かつてのようなパキパキとした操舵レスポンスは得られない。

洗練された走りこそ本質

もっともMINIは先代からハンドリングをリニア特性に方向修正しており、これが今のMINIテイストだともいえる。端的にいえば可変ダンパーを付ければアジリティは容易に高められるはずだが、それはJCWの役目なのだろう。それよりも残念なのは、EVにしろガソリンにしろ、今回の試乗車にパドルシフトがないことだった(ICEのJCWトリムにのみ設定)。

まとめると、MINIクーパーはSもSEも、極めて快適で上質なコンパクトカーに仕上がっていた。446kmという航続距離、実質7掛けだと考えても、クーパーSEはコンパクトカーとして実用上十分に走ることができる。自宅に充電設備さえ整えられれば本当にお勧めだ。そして、その選択ができずともクーパーSならEVに匹敵する静粛性と質感、そしてエンジンを回す楽しさが得られる。そう考えると両者がキャラを揃えてきたことには、納得が行く。この洗練された走りが、最新世代MINIの本質なのだ。

PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2024年10月号

SPECIFICATIONS

ボディサイズ:全長3875 全幅1745 全高1455mm
ホイールベース:2495mm
車両重量:1320kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1998cc
最高出力:150kW(204PS)/5000rpm
最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1450-4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前ストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後215/45R17
0-100km/加速:6.6秒
最高速度:241km/h
車両本体価格:465万円

ボディサイズ:全長3860 全幅1755 全高1460mm
ホイールベース:2525mm
車両重量:1640kg
モーター
最高出力:160kW(218PS)/7000rpm
最大トルク:330Nm(33.7kgm)/1000-4500rpm
トランスミッション:1速固定
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前ストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後205/50R17
0-100km/加速:6.7秒
最高速度:170km/h
車両本体価格:531万円

【問い合わせ】
MINIカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-329-814
https://www.mini.jp

3つのパワートレインを設定する新型MINI。システムアウトプット218PS/330Nmを誇る高性能BEVモデルにバルセロナで試乗してきた。

新型MINIの新本命?フル電動「MINI Cooper SE」に試乗「ゴーカートフィーリングはどうなった?」

新型MINIの本命とも言えるBEVモデル、その高性能版であるクーパーSEに試乗してきた。そこには従来のゴーカート路線は身を潜め、新たなMINI像を提示する前向きな姿があった。(GENROQ 2024年8月号より転載・再構成)

キーワードで検索する

著者プロフィール

山田弘樹 近影

山田弘樹

モータージャーナリスト。自動車雑誌『Tipo』の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した…