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GMA T.50
史上最高のスーパーカー
スーパーカーの始まりが「ランボルギーニ ミウラ」だとしたら、それからもう58年。その間に数多くのスーパーカーが誕生したが、その中からベストの1台を選べ、となると必ずと言っていいほどトップにくるのが「マクラーレン F1」である。カッコよくてパワーがあって最高速度が速ければいい、という考えが主流だったスーパーカーの世界において、マクラーレンF1が示した「速さへの哲学」は衝撃だった。
それから30年以上が経つが、マクラーレン F1を超えるクルマは現れなかった。しかし約5年前にそのゴードン・マレーが突然新たなスーパーカーを発表したことで、業界は騒然となる。何しろゴードン・マレーだ。中途半端なものを造るわけがない。いや、この三十数年でさまざまなテクノロジーが進化していることも考えれば、マクラーレン F1を超えるスーパーカーができるのではないか、というより、そうでなければゴードン・マレーがわざわざ新しいスーパーカーを造る意味がない。
V12をミッドに載せているとは思えぬほど
「GMA(ゴードン・マレー・オートモーティブ) T.50」と名付けられたそのスーパーカーの日本上陸第1号車が、目の前にある。日本でのGMAのサービスセンターであり、PDIを担うPROSLINKのガレージで対面したT.50は、超高性能スーパーカーをアピールするような仰々しさはまるでなく、プレーンでスリークなスポーツカー、という印象だ。
それにしても小さい。とてもV型12気筒がミッドに乗っているとは思えない。改めてスペックを確認すると全長は4352mm、全幅は1850mm。今どきのV12気筒ミッドシップスーパーカーと比べると、全長で400〜500mm、全幅で200mmは小さいだろう。そして重量は脅威の997kg。これはもはや他12気筒スーパーカーの2/3だ。これらの数字を見るだけで、T.50が別次元のクルマであることがわかる。
ドアはいわゆるディヘドラル式で、エンジンカバーも中央をヒンジとしてガルウイング式に跳ね上がる。リモコンキーのボタンを長押しするとドアとエンジンカバーが同時にゆっくりと跳ね上がるという“演出”も。よく考えれば12気筒もマニュアルトランスミッションも、スーパーカーファンを楽しませる演出なのかもしれない。
かつてF1で生み出された技術
外観で目を引くのがリヤにある大型のファンだ。アンダーフロアの境界層のエアを吸い出して空気の流れを整流し、ディフューザーの効果を高めるという発想は、かつてF1でファンカーを生み出したゴードン・マレーならではだろう。クルマをリフトアップして見てみると、リヤサスペンションの前方にエアの吸い込み口が確認できた。まるでレーシングマシンのようにカーボンで精緻に作り込まれたこのアンダーフロアやサスペンション、見事な肉抜きがされたペダルなど、隅々までゴードン・マレーの哲学が徹底されていることには、軽い感動さえ覚える。
今の時代に、これほどまでに作り手の想いが込められたピュアなスーパーカーが誕生するとは思わなかった。ゴードン・マレーを超えるのは、やはりゴードン・マレーしかいなかったということか。
REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2024年12月号
SPECIFICATIONS
GMA T.50
ボディサイズ:全長4352 全幅1850 全高1164mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:997kg
エンジン:V型12気筒DOHC
総排気量:3994cc
最高出力:614kW(670PS)/11000rpm
最大トルク:479Nm(48.8kgm)/8000rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前235/35ZR19(8.5J) 後295/30ZR20(11J)
最高速度:360km/h