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250 GTシリーズ、最も美しい1台
1960年代、フェラーリが250 GTOでGTを、そして250 テスタロッサを始めとするさまざまなモデルをスポーツ・プロトタイプ・クラスでレースに参戦させていた頃、現在でも最も美しいベルリネッタ(クーペ)と評されることも多い1台のロードモデルが誕生する。
それが「250 GT ベルリネッタ ルッソ」である。最近4シーターのGTC 4 ルッソで復活した“ルッソ”のサブネームは、豪華であることの意味をもつもの。実際にこのモデルを見ると、速さとともに優雅なグランツーリズモとしての性格を強く感じる。流麗なルーフラインを描きながらテールエンドへと至る造形は、数ある250 GTシリーズの中でも特筆すべきものといえるだろう。
250 GTOの後継車「250 LM」
その一方で開発が進んでいた「250 LM」は、250 GTOの後継モデルとなるべく企画されたものだった。それは1963年に製作され、この年のル・マン24時間レースにも出場した、ミッドシップの250 Pをベースに改良を施したもので、まず250 Pではタルガトップだったルーフをシンプルなクローズタイプに変更している。同時にエンジンは車名の数字が物語るとおり、気筒あたりの排気量が250ccの3285cc。最高出力は320psを誇った。
ウインドウスクリーンの高さなどには当時のGTカーには車両規定があったが、なぜPの文字が表すようなプロトタイプがGTで競われるはずのル・マン24時間などのレースに参加できたのかといえば、それはGTのオーガナイザーが将来1台でも生産する可能性があればGTプロトタイプとして公認するとし、生産台数の規定を撤廃したからだった。
1963年のル・マン24時間レースで1位から6位まで独占
かくしてフェラーリは、ミッドシップの250 Pに、250 テスタロッサ用のエンジンをさらにチューニングして310psユニットを縦置き搭載したほか、フレームやサスペンションの強化など、さまざまな改良を実行。1963年のル・マン24時間レースでは、3台の250 Pのほかに、3台の250 GTO、4台の330 LMプロトタイプという布陣で臨み、1位から6位までを独占するという偉業を達成してみせた。
オンロードGTとして生を受けた「275 GTB」
それでは、これらのコンペティツィオーネの後継車とは別の道を歩むことになったストラダーレの「275 GTB」はどのようなモデルだったのだろうか。
もちろん、それはフェラーリ自身が描いた理想的なストーリーだった。しかし実際には275 GTBは1965年のル・マン24時間レースを始め、いくつかのレースでそのパフォーマンスを披露している。だがフェラーリにはレース参戦の意思はなく、それは運命の悪戯だったのだとすれば、250 GTOの後継車たるオンロードGT、275 GTBをスーパーカーの始祖と考えることは十分に可能だろう。
275 GTBが初めて公開されたのは、1964年のパリ・サロンでのことだった。1960年代に流行するロングノーズデザインをいち早く採用し、気筒あたりの排気量が275ccとなる3285cc仕様のV型12気筒エンジンを搭載した。最高出力は280ps。ウェーバー製のキャブレターを3基組み合わせ、ギヤボックスは5速MTが使用され、当時発表された最高速度は258km/hだった。
その他の275シリーズ
そして、ここからさまざまなバリエーションが誕生していく。
まず、1965年にはフェラーリが計画していた250 LMのGTカテゴリーのホモロゲーションが叶わなかったため、ワイドなタイヤやフェンダー、そしてエンジンの最高出力を300psにまで強化した12台の「275 GTB/C」をレース参戦を計画するプライベーターに売却している。
1966年には、遂にV型12気筒エンジンをDOHC(4バルブ)化し、さらに潤滑方式をドライサンプとした「275 GTB/4」へのモデルチェンジを行っている。その結果、最高出力は300psに到達、最高速度は268km/hへとパフォーマンスは向上した。
また、アメリカでフェラーリの輸入代理店を営んでいたルイジ・キネッティからのオーダーで10台のみが製作された250 GTスパイダー・カリフォルニア以来となった「275 GTB/4 S スパイダー(N.A.R.T.スパイダー)」もデビューしている。
解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)
SPECIFICATIONS
フェラーリ 250 GT ベルリネッタ ルッソ
年式:1962年
エンジン:60度V型12気筒SOHC
排気量:2953cc
最高出力:176kW(240hp)/7500rpm
乾燥重量:1020kg
最高速度:240km/h
フェラーリ 250 LM
年式:1963年
エンジン:60度V型12気筒SOHC
排気量:3285cc
最高出力:235kW(320hp)/7500rpm
乾燥重量:820kg
最高速度:287km/h
フェラーリ 330 LM
年式:1962年
エンジン:60度V型12気筒SOHC
排気量:3967cc
最高出力:287kW(390hp)/7500rpm
乾燥重量:950kg
最高速度:280km/h
フェラーリ 275 GTB
年式:1964年
エンジン:60度V型12気筒SOHC
排気量:3285cc
最高出力:206kW(280hp)/7600rpm
乾燥重量:1100kg
最高速度:258km/h
フェラーリ 275 GTB コンペティツィオーネ
年式:1965年
エンジン:60度V型12気筒SOHC
排気量:3285cc
最高出力:221kW(300hp)/7600rpm
乾燥重量:980kg
最高速度:282km/h
フェラーリ 275 GTB/4
年式:1966年
エンジン:60度V型12気筒DOHC
排気量:3285cc
最高出力:221kW(300hp)/8000rpm
乾燥重量:1100kg
最高速度:268km/h
投稿 ストラダーレとコンペティツィオーネの分岐点(1962-1967)【フェラーリ名鑑】 は GENROQ Web(ゲンロク ウェブ) に最初に表示されました。