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Porsche 911 GT2 RS Clubsport 25
「911 GT2 RS クラブスポーツ」をベースに開発
「911 GT2 RS クラブスポーツ 25」は、2018年に発表されたポルシェ 935と同様に、515kW(700ps)を発生する3.8リッター水平対抗6気筒ツインターボエンジンを搭載したタイプ991の「911 GT2 RS クラブスポーツ」をベースに開発。7速ポルシェ・デュアルクラッチ・ギヤボックス(PDK)を介して、後輪を駆動する。
911 GT2 RS クラブスポーツ 25の特徴的なエクステリアデザインは、これまでサーキットで活躍してきたポルシェ製レーシングカーに搭載されていたデバイスや、今後投入を予定しているモータースポーツ用パーツが数多く採用された結果導き出されたもの。テクノロジーとエアロダイナミクスの面で、タイプ991とタイプ992のギャップを埋める1台だと言えるだろう。
ポルシェGTレーシング部門のディレクターを務めるマティアス・ショルツは、911 GT2 RS クラブスポーツ 25について次のように説明した。
「ポルシェ・モータースポーツとマンタイ・レーシングは、25年前にチームが設立されて以来、ニュルブルクリンク24時間レースで7回の優勝を果たすなど、多くの勝利や選手権タイトルを獲得してきました。2013年以降、両社はさらに密接な関係を築いています。ユニークな特別仕様の911 GT2 RS クラブスポーツ 25を投入したことで、この成功したパートナーシップは次のレベルへと一段上がりました」
「911 GT2 RS クラブスポーツ 25は、マンタイ・レーシングとポルシェ・モータースポーツが世界中で培ってきた、モータースポーツでの経験が活かされています。野心的なプライベートドライバーにとって、完璧なサーキットレーシングカーとなるでしょう」
マンタイの象徴「グレロ」をカラーリングに採用
911 GT2 RS クラブスポーツ 25のインスピレーションの源となったのが、ニュルブルクリンク24時間レーシングで活躍したマンタイ・レーシングのポルシェ 911 GT3 R。蛍光イエローの特徴的なカラーリングは「グレロ(Grello)」と呼ばれ、ファンから高い人気を集めている。今回、このグレロをエクステリアのアクセントカラーとして採用した。
エアロパーツに関しては、マンタイ・レーシングが過去四半世紀にわたってモータースポーツで培ってきたノウハウが存分に活かされることになった。そして全体的なデザインを、スタイル・ポルシェのグラント・ラーソンがまとめている。ラーソンは911 RSRや911 GT3 R、さらには現代に蘇った935など、伝説的なレーシングカーをデザインしてきた人物だ。
「911 GT2 RS クラブスポーツ 25のデザインは、ポルシェ・モータースポーツとマンタイの長年にわたる協力関係を表現しています。それぞれが持つ強みを1台のレーシングカーへと集約し、同時に911のタイプ991とタイプ992のギャップを埋めました」と、ラーソン。
「今回、マンタイ・レーシングが基本的なコンセプトと技術的なアイデアを提供し、ポルシェが最終的なデザインを担当しました。私たちは、マンタイの『グレロ』の特徴的なカラースキームを採り入れて、このマシンの特徴的なパーツをアピールしています」
サーキット走行用に大幅に改善されたクーリング
前述のように、911 GT2 RS クラブスポーツ 25は、タイプ991の911 GT2 RS クラブスポーツをベースに開発された。技術的なハイライトとなったのが、センターに配置されたラジエーターだ。911 GT3 Rと同様に、最適なフレッシュエアをラジエーターに安定供給することで、幅広い速度域でエンジン温度を安定させることが可能になった。さらにラジエーター位置を変更したことで、衝突時のダメージに対する保護性能も向上させている。
完全に再設計されたフロントエプロンには、最適なエアフローを確保するため中央にインレットを装着。外側に設けられたダブルフリックが、フロントアクスル周辺のダウンフォースを増化させる効果を持つ。さらにボディ下部のエアフローを安定させるべく、クローズドアンダーボディも採用した。
カーボンファイバー製フロントリッドも、デザインを一新。911 GT3 Rと同様、センターで区切られた2基の大型ベントが、ルーフ上の熱気をリヤウイングへと送り込む。また、ボンネット中央に配置されたNACAダクト(ポルシェのエンブレム付き)からは、フレッシュエアがコクピットへと供給される。
新たなクーリングコンセプトが採用されたことで、ホイールアーチ内のラジエーターを廃止。これにより、フロントブレーキへのエアフローが改善され、安定したブレーキングが可能になった。935と同様、フレア形状のホイールアーチには、熱排出のための縦型ベントを採用。また、リヤフェンダーには2基のパーツで構成された、大型エアインレットも設けられた。
935と同じボディ一体型リヤスポイラー
メインレーシングヘッドライトは、ル・マン24時間レースでクラス優勝を果たした911 RSRをベースに、911 GT2 RS クラブスポーツ 25のために専用開発。特にサーキットでの照射効率が大幅に向上している。省スペース化のためウインカーはメインライトと一体化された。FIA規定に準拠したセーフティロールケージが組み込まれたインテリアには、限定モデルであることをアピールする専用バッジを配する。
足まわりは、現代版935のコンポーネントをキャリーオーバー。センターロック式18インチホイールをオフセット装着したことで、ベースとなった911 GT2 RS クラブスポーツよりもワイドトラックとなっている。
リヤウイングは、新形状のサイドプレートとスワンネック・サポートブラケットを採用し、よりスムーズなエアフローを実現している。935と同形状のボディ一体型リヤスポイラーは、ラップアラウンド・セパレーション・エッジとして機能。これは、ポルシェ911(タイプ996)をベースにマンタイ・レーシングが開発した初代「MR」にも採り入れられていた形状だ。
リヤウインドウ下部に設けられた新しいエアアウトレットは、エンジンルーム内の空気循環をさらに促進する。マンタイ・レーシングは、リヤディフューザーのデザインを最適化し、新設計のエキゾーストシステムと組み合わせた。リヤの視覚的なハイライトとなるセンター出しテールパイプは、新型911 GT3 Cup(タイプ992)にも採用されている。
マンタイ・レーシングのポリシーを体現
マンタイ・レーシングのマネージングディレクターを務めるニコラス・リーダーは、911 GT2 RS クラブスポーツ 25の発表に喜びを隠さない。
「ポルシェ・モータースポーツと共同開発した911 GT2 RS クラブスポーツ 25によって、マンタイ・レーシングは25年という新たな節目を迎えることができました。これは、私たちが掲げてきた『Closer to Perfection(完璧に近づく)』を、パーフェクトな形で具現化したものです」
「すべての改良点に関して技術的な機能が優先されました。だからこそ911 GT2 RS クラブスポーツ 25は、他にない独自のキャラクターを持っています。それは私たちのブランド価値に細心の注意を払いながら、妥協は一切しないことも反映されています」