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BMW 7 Series
フラッグシップサルーンの進化
ついに日本におけるデビューを飾ったBMWブランドのフラッグシップ、新型7シリーズ。先代のコードネームがショートホイールベースの「G11」とロングホイールベースの「G12」だったのに対し、新型7シリーズはシャシーラインナップを従来のロングホイールベースモデルに相当する1本に絞り、シンプルに「G70」と呼称される。
G70はBMWのフラッグシップサルーン・7シリーズの7世代目であり、先代のG11/G12の誕生から7年、満を持しての登場となるが、気になるのはどれほどの進化を遂げたかということ。2019年にフェイスリフトを行ったG11/G12後期モデルを俎上に上げ、ここでは新旧7シリーズサルーンを比較検証していきたい。
ボディディメンションと重量
まずは両モデルのボディディメンションをシリーズのボトムラインである740で比較。新型7シリーズは従来で言うところのLボディ(ロングホイールベース)のみ設定しているので、旧型の比較対象もLボディ(G12)とする。ちなみに旧型のスペックは2019年にフェイスリフトを受けた後期モデルのもの。
ホイールベースは旧型から新型になって5mmの延長に留まっているのに対し、全長は126mm、全幅は50mmまで拡大したうえで、全高は59mm高くなった。数値上は若干大きくなっているが、ホイールベースの延長が僅かであることからも、車内の広さは新旧で大きく違わないだろう。
一方、車重は新型が110kg増と2トンの大台に到達している。さらにフル電動モデルのi7 xDrive60になると2640kgを計上し、車重だけ見れば大型SUV並み。約600kmという一充電での走行を可能にする101.7kWhの巨大なリチウム電池を搭載するためだ。
新旧BMW 7シリーズ:ボディディメンション&車両重量
BMW 740i(G70)
全長5391×全幅1950×全高1544mm、ホイールベース:3215mm
車両重量:2090kg
BMW 740Li(G12)
全長5265×全幅1900×全高1485mm、ホイールベース:3210mm
車両重量:1940kg
印象が大きく変わったアピアランス
ブランドを代表するフラッグシップでは、ややもすると保守的なデザインになりがちかと思えるが、逆に新時代に向けてアグレッシブで挑戦的なアピアランスを与えるのがドイツ流。振り返れば、それまでの路線から大きな変革を遂げた4世代目(E65/E66)の7シリーズが賛否を呼んだのは記憶に新しいし、ライバルのメルセデス・ベンツSクラスも代替わりの度に新たなデザインメソッドを提案している。
BMWの文字通り顔である「キドニー・グリル」は、先行してリリースされたM3/M4ともデザインエッセンスを共通させるように大型化し、対照的に薄くなったヘッドライトと絶妙なバランスを実現。3世代目から4世代目への変革よりも、今回の6世代目から7世代目へのデザインチェンジはより挑戦的に見える。
機能とデザインの両立として、ドア埋め込み式のドアハンドルを採用。空気抵抗の低減と見た目のすっきり感を演出している。リヤスタイルで際立つのは、伝統の水平基調とL字型を組み合わせたリヤコンビネーションライト。内燃機モデルであってもテールパイプをリヤバンパー内に内蔵してサイドビューと同様にすっきりとしたアピアランスを実現している。スタイリングに関しては、旧型のどちらかと言えばコンサバな風味を求めるユーザーも多いだろうから、良い悪いではなく完全に好みの問題だろう。
パワートレインの展開
新型7シリーズのパワートレインは、3.0リッター直列6気筒+マイルドハイブリッド、4.4リッターV型8気筒+マイルドハイブリッド、3.0リッター直列6気筒ディーゼル+マイルドハイブリッド、3.0リッター直列6気筒+プラグインハイブリッド、そしてフル電動モデルをラインナップ。
プラグインハイブリッドを搭載する750e xDriveとM760e xDriveの詳細なスペックは2023年に公表予定なので、まずは現在判明している新型の5ラインナップと、旧7シリーズ後期ラインナップを比較する。740での新旧比較では、新型が最高出力で40PS、最大トルクで70Nmのパワーアップ。ちなみに新型740iの燃費はWLTPモードで8.0-7.0リットル/100km、旧型740LiはWLTCモードで10.8km/リットルと公表されている。
新旧BMW 7シリーズ:パワートレイン
BMW 7シリーズ(G70)
モデル名 | パワートレイン型式 | キャパシティ | エンジン最高出力(電動モーター最高出力) | エンジン最大トルク(電動モーター最高出力) |
735i | 直列6気筒DOHCターボ | 2998cc | 272PS/5000-6500rpm(18PS) | 400Nm/1750-4500rpm(200Nm) |
740i | 直列6気筒DOHCターボ | 2998cc | 380PS/5200-6250rpm(18PS) | 520Nm/1850-5000rpm(200Nm) |
760i xDrive | V型8気筒DOHCターボ | 4395cc | 544PS/5500rpm(18PS) | 750Nm/1800-5000rpm(200Nm) |
740d xDrive | 直列6気筒DOHCディーゼルターボ | 2993cc | 286PS/4000rpm(18PS) | 650Nm/1500-2500rpm(200Nm) |
i7 XDrive60 | 交流同期 | 101.7kWh | システム最大:544PS | システム最大:745Nm |
BMW 7シリーズ(G12)※後期モデル
モデル名 | パワートレイン型式 | キャパシティ | エンジン最高出力(電動モーター最高出力) | エンジン最大トルク(電動モーター最高出力) |
740Li | 直列6気筒DOHCターボ | 2997cc | 340PS/5500rpm | 450Nm/1500-5200rpm |
740Ld xDrive | 直列6気筒DOHCディーゼルターボ | 2992cc | 320PS/4400rpm | 680Nm/1750-2250rpm |
745Le xDrive | 直列6気筒DOHCターボ+プラグインハイブリッド | 2997cc | 286PS/5000rpm(113PS/3170rpm) | 450Nm/1500-3500rpm(265Nm/1500rpm) |
750Li xDrive | V型8気筒DOHCターボ | 4394cc | 530PS/5500rpm | 750Nm/1800-4600rpm |
M760Li xDrive | V型12気筒DOHCターボ | 6591cc | 609PS/5500rpm | 850Nm/1550-5000rpm |
ショーファードリブンの証、豪華な居住スペース
BMWブランドの頂点を担うフラッグシップ7シリーズは、VIPをリヤシートに迎え、お抱え運転手がハンドルを握るショーファードリブン。走行性能はもちろん、後席の快適性や居住性はなによりも優先される項目だろう。
旧型では前後アクスルにセルフレベリング付きエアサスペンションを備え、フロントウインドウに設置したカメラが路面状況を検知して適切なサスペンション調整を行うエグゼクティブ・ドライブ・プロを採用。新型は旧型からアップデートを果たした「オートマチック・セルフレベリング・コントロール付きアダプティブ2アクスル・エアサスペンション」と「電子制御ダンパー付きアダプティブサスペンション」を標準装備とし、引き続きエグゼクティブ・ドライブ・プロを搭載したうえで、7シリーズでは初採用となる「アクティブ・ロール・コンフォート機能」も加え、快適性を向上する電子制御ギミックを満載。乗員への配慮は益々高まっている。
また、AI技術を活用したBMWインテリジェント・パーソナル・アシスタントの搭載や、「ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援システム」、35km/h以下での走行時に直近の50m軌跡を記憶し通った道を自動で後退可能な「リバース・アシスト」を含む最新の運転支援システムを搭載。新型ではさらに精度と正確性を増した「ドライビング・アシスト・プロフェッショナル」や完全自動駐車が可能になる「パーキング・サポート・プロフェッショナル」を採用している。
エンターテインメント性も大幅に向上。旧型は運転席と助手席のシートバックに10インチのカラーディスプレイを与える「リヤシート・エンターテインメント・エクスペリエンス」を用意していたが、新型では8K対応31インチのタッチスクリーンディスプレイを用いた「BMW シアター・スクリーン」を新たに装備。圧倒的なエンターテインメント空間を創出する。
感性の域にあった旧型から正常進化した新型7シリーズ
フラッグシップサルーンに相応しい快適性を重視した走行性能と、快適性を極めた後席の居住空間。BMWの総力を挙げて開発された7シリーズは旧型ですら既に完璧の域に近い出来栄えを誇っているが、新型はさらにそれぞれのベクトルを大幅に伸ばして正常進化を遂げた。もちろん最新であればあるほど良くなっているのは当たり前の話だから、積極的に新型を選ぶ理由はあるものの、旧型の魅力が完全に褪せてしまったとは言えない。
ボディ形状やパワートレインなど、7シリーズは新旧合わせれば多用な選択肢がある。コストや納期、必要な機能と好みのデザインなどなど、選ぶ自由度が大幅に広がった今こそBMW 7シリーズの“旬”なのかもしれない。