大幅に進化したラグジュアリーセダン新型BMW 7シリーズを最速試乗!

新型BMW 7シリーズ最速試乗でわかった「ラグジュアリークラスで存在感を発揮する快適性能」

BMWのフラッグシップ、7シリーズがフルモデルチェンジを果たしデビュー。パワートレインはマイルドハイブリッドとプラグインハイブリッド、ガソリン/ディーゼル/ピュアEVを載せた7モデルが用意される。ハイエンドサルーンの最右翼と目される最新モデルを、モータージャーナリスト・渡辺慎太郎がレポートする。

BMW 7 Series

驚異的な進化を遂げた新型7シリーズ

BMWの新型7シリーズの試乗会参加に先駆けて、BMWジャパンがまだ持っていた広報車のM760iLを拝借した。BMWブランドとしては最後となるV型12気筒エンジンを搭載したそれは、静々とでも力強く走る上質なサルーンで、V12のあまりにも滑らかな所作に思わず「モーターみたいだな」と呟いてしまった。予習と復習のつもりで乗ったのだけれど、結果的に新型7シリーズはそれがほとんど役に立たないくらいの進化を遂げていたのである。

新型7シリーズには正真正銘のモーターを前後に積んだi7 xDrive60をはじめ、内燃機(ICE)を搭載するモデルが6種類も用意されている。パワートレインの種類が全部で“7”種類なのはどうやら偶然らしい。ICEはすべて電動化されており、735i(3.0リッター直列6気筒)、740i(3.0リッター直列6気筒)、760i xDrive(4.4リッターV型8気筒)、740d xDrive(3.0リッタ―直列6気筒ディーゼル)はいずれもマイルドハイブリッド、750e xDrive(3.0リッター直列6気筒)とM760e xDrive(3.0リッター直列6気筒)はプラグインハイブリッドとなる。日本仕様はすでに発表済みで、当面はi7 xDrive60(1670万円)と740i(1460万円)の2モデルとなる。

プラットフォームは現行3シリーズと共にデビューしたものを共有するとされる。しかし3と7ではサイズも重量も大きく異なるので、あくまでも概念的共有だろう。これまで7シリーズは標準とロングホイールベースの2種類のボディを有していたが、新型は本来ならロングホイールベース並みの3215mmのひとつのみ。これが奇しくも、メルセデスSクラスのロングボディのホイールベースとまったく同値だった。

BEV版のi7は航続距離600km超を実現

BMW i7のフロントスタイル
同時に発表された新型BMW i7。ボディサイズは760i xDriveと同寸だが、101.7kWhの大容量リチウムイオン電池を搭載するため、車重は2640kgに及ぶ。1充電走行可能距離はWLTPモードで591~625kmを計上。

事実上ロングホイールベースだけにしたのは、BEV版のi7は床下にバッテリーを積まなければならず、ホイールベース=航続距離となるからだ。バッテリー容量は101.7kWhで航続距離は約625km。参考までに、SクラスのBEV版とも言えるEQSは107.8kWh/700km。専用のプラットフォームとエアロダイナミクスに特化したスタイリングを持つEQSのほうが勝るのは、当然のことでもある。

サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リヤが5リンクで、空気ばねと電子制御式ダンパーを組み合わせたエアサスペンションが標準装備となり、後輪操舵とアクティブスタビライザーはオプション。タイヤはモデルによって19インチと20インチが標準で用意されている。アメリカ・パームスプリングスで開催された国際試乗会会場に並んでいたのはi7と760i xDriveのみで、いずれも後輪操舵とアクティブスタビライザー付き、フロント255/40R21、リヤ285/35R21のどちらにもオプションの後輪操舵、アクティブスタビライザー、フロント255/40R21、リヤ285/35R21のピレリPゼロが装着されていた。

静粛性と乗り心地に磨きをかけたショーファードリブン

BMW 760ixDriveのコクピット
スイッチ類を極力排してタッチパネル操作に集約したコクピット。エアコンルーバーもトリムの隙間に備えるなどシンプルなデザインを採用している。

運転席に座ってみる。目の前に広がるのは、わずかに湾曲した14.9インチのディスプレイやセンターコンソールに鎮座するトグル式のシフトスイッチなど、一部の装備はiXからスタートしたBMWの新しいインターフェイスである。

それにしてもずいぶんスッキリとした印象を受けるのは、エアコンの吹き出し口が見当たらないからだ。探ってみたら、トリムの隙間にうまく埋め込まれていた。後席にも座ってみる。普通はドアハンドルやアームレストになっている部分に5.5インチのタッチ式ディスプレイが埋め込まれ、エアコンやシートの調整が出来るようになっていた。

そして圧巻なのは、そのスイッチを操作すると天井から起き上がってくる31.3インチの液晶スクリーンだ。後席のほぼ左右いっぱいのサイズで前方はほとんど見えなくなる。当然のことながら運転席からの後方視界も遮られ、リヤビューミラーはまったく使い物にならなくなるため、サイドミラーかカメラを使うしかない。バッテリーが収まっているはずのフロアは思っていたよりも底上げされておらず、前後ともに余裕あるスペースが確保されていて、快適な空間であることは間違いない。

パワートレインはすべて電動化

BMW 760ixDriveのエンジン
新型7シリーズのパワートレインは、3.0リッター直列6気筒+マイルドハイブリッドの735i/740i、4.4リッターV型8気筒+マイルドハイブリッドの760i xDrive、3.0リッタ―直列6気筒ディーゼル+マイルドハイブリッドの740d xDrive、3.0リッター直列6気筒+プラグインハイブリッドの750e xDrive/M760e xDriveをラインナップ。

i7 xDrive60はシステムパワースペックが最高出力544PS、最大トルク745Nm、760i xDriveは544PS/750Nmで、出力とトルクがほぼ同値である。アクセルペダルの動きに対するクルマの反応の速さや4輪へのトラクションのかかり方などは似ているものの、加速感に関してはi7のほうがジェントルでスムーズ、760iは少しアグレッシブな印象を受ける。

この差は主に370kgに及ぶ重量の違いと、やはりエンジン音のあるなしが影響していると思う。もちろん、どちらのパワートレインでも動力性能に不満はまったくない。アクセルペダルを深く踏み込めば望外な加速が体感できる。

初期ラインナップ7モデル、国内導入は740iとi7 xDrive60からスタート

BMW 760ixDriveの走行シーン
当面日本国内に導入されるのは、740iとi7 xDrive60の2モデル。追ってi7もシリーズに追加される見通しだ。

ハンドリングもまた、おそらく意図的に似たような味付けになっている。ターンインでステアリングを切ってから旋回挙動が落ち着くまでの過渡領域における、タイヤのコーナリングフォースの立ち上がり方やばね上の動きなどが、スポーティに片足を突っ込んでいるくらいのセッティングだった。このクルマのキャラクターを考えれば丁度いい塩梅だ。スポーツモードを選ぶとばね上の動きが抑えられると同時に、ステアリングの切り始め直後からノーズが向きを変え始めるようになる。これぞまごうかたなきBMWの操縦性である。

自他共に認める永遠のライバルのSクラスには、これまで乗り心地や静粛性など快適性の部分でやや後塵を拝してきた7シリーズも、今回は真っ向勝負に出られると思う。日本ならS 500 vs 740iなんて面白い。どちらも3.0リッター直6のマイルドハイブリッドだし、4駆しかないSに対して後輪駆動の7がどんな場面で魅力を発揮できるか楽しみだ。一方で、i7 vs EQSというのはなんかちょっと違うような気が自分なんかはするのである。

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)
PHOTO/BMW AG

新型BMW 7シリーズの走行シーン

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著者プロフィール

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渡辺慎太郎

1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、1989年に『ルボラン』の編集者として自動車メディアの世界へ。199…