メルセデス・ベンツの最新BEV「EQE SUV」に試乗

メルセデス・ベンツの最新フル電動SUV「EQE SUV」に試乗して電動AWDの実力を実感

EQE SUVはEQS、EQEなどと同じBEV専用プラットフォームのEVA2を採用。エントリーグレードのEQE350+以外は、前後に電気モーターを搭載するAWDである。今回はEQE350 4マティックに試乗した。
EQE SUVはEQS、EQEなどと同じBEV専用プラットフォームのEVA2を採用。エントリーグレードのEQE350+以外は、前後に電気モーターを搭載するAWDである。今回はEQE350 4マティックに試乗した。
メルセデス・ベンツの電動モデルブランド「EQ」から4番目のモデルとしてEQE SUVが新たに登場した。取り回しの良いボディサイズに最新ギミックを満載し、BEVのSUVカテゴリーで大きな存在感を放つ1台に試乗した。

Mercedes-Benz EQE SUV

EQシリーズ最新作はGLEに相当するBEV

今回試乗したEQE350 4マティックの合計最高出力は215kW(292PS)、最大トルクは765Nmという。
今回試乗したEQE350 4マティックの合計最高出力は215kW(292PS)、最大トルクは765Nmという。

振り返ると、メルセデス・ベンツが電動化モデルのサブブランドとしてEQを立ち上げたのは2018年と、もう5年も前の話になる。気づけばラインナップも続々と拡大しており、ほとんどのカテゴリーで内燃エンジン車かBEVか、いずれかを選択できるようになっている。

EQシリーズの最新作として昨年10月に発表されたEQE SUVは、要するに内燃エンジン車のGLEに相当するBEVだと言っていいだろう。グローバルではすでに、こちらはGLS相当となる全長5mオーバーの3列シートモデルとしてEQS SUVも発表済みだが、EQE SUVは全長4863mm×全幅1940mm×全高1685mmというサイズで、シートは2列のみとなる。

GLE相当とは書いたがサイズはもう少しコンパクトで、スタイリングの趣も大きく違っている。全体に引き締まってスラッとした印象なのは主に空気抵抗の低減を狙ったからで、細かなディテールへの配慮、床下まで徹底した空力処理、タイヤのサイドウォールの意匠まで最適化するなどした結果、Cd値は何と0.25を達成している。この数字、現行Aクラスハッチバックと同等だといえば、そのスゴさが伝わるだろうか。

プラットフォームはEQS、EQEなどと同じBEV専用のEVA2を使い、エントリーのEQE350+を除いて、電気モーターは前後に2基搭載されている。今回試乗したEQE350 4マティックの合計最高出力は215kW(292PS)、最大トルクは765Nmに達する。スペックシートにバッテリー容量は記載されていないが、聞けばEQEセダンと同様の90.6kWhとのこと。一充電航続距離は460〜551kmとなっている。

サステナビリティを重視した内装

電費向上には空力はもちろん、新採用の技術も貢献している。まずひとつめが4マティックに採用されたフロントアクスルのDCU(ディスコネクトユニット)。不要な時には前輪に駆動力を伝達しないだけでなく機械的に切り離してしまうことで、電費は6%も改善されるという。

もうひとつがヒートポンプユニット。電気モーター、インバーター、バッテリーなどの発生する熱を室内の暖房に利用することで、約10%の電費向上に繋がるということだ。

室内に乗り込むと、デザイン自体は最近のメルセデスに共通の雰囲気でまとめられている。注目は、そのマテリアルである。実はEQE SUVの内装材はサステナビリティを重視したもので、ダッシュボードやドアトリム、シート表皮などには合成皮革を採用。フロアカーペットは廃棄漁網からのリサイクルで作られているといった具合である。

実は他にもアンダーフロアの整流板などにはリサイクルプラスチックを、ドアノブには廃タイヤ由来の素材を用いるなど、サステナビリティへの配慮は徹底されている。単に電動化しただけでなく、クルマ全体に高い環境意識が貫かれている。そんな風に言っていいはずだ。

重量級だが軽やかな身のこなし

気になる走りっぷりは、見た目に違わず軽やか。車重は2.5tを超える重量級だが、発進する時の転がり出しからして重さをまるで意識させないのだ。有り余るほどパワフルなわけではないが、必要十分な力を即座に、軽やかに引き出せる。

COMFORTモードで走っているとディスプレイ表示ではDCUが前輪への駆動力を頻繁に遮断しているのが分かる。一方、常時AWDとなるSPORTモードでは、意外なほど前輪の駆動力を活用していることが分かり興味をひいた。とは言え、車両の挙動にそうした切り替え感は無く、走りは至極スムーズである。

3030mmという長いホイールベースのおかげで直進性は良くピッチングも少ない。重量バランスの良さも相まって乗り心地も文句ナシだ。それでいて、いざコーナーに入れば身のこなしはこちらも軽やか。ステアリングホイールを切り込むと、面白いように向きが変わるのだ。

これには素性の良さはもちろん、最大10度まで操舵を行うリヤホイールステアの効果も大きい。切り返しの反応の小気味良さなど、SUVであることを忘れさせるほどである。

電動で制御されたAWDの走り

EQE SUVは3030mmという長いホイールベースを持つ。重量バランスの良さもあり、乗り心地も文句ナシという。
EQE SUVは3030mmという長いホイールベースを持つ。重量バランスの良さもあり、乗り心地も文句ナシという。

走行モードを任意で切り替えることができるダイナミックセレクトには「OFF ROAD」モードも用意されている。試乗ルートには海沿いのフラットなダートも含まれていたので真価を発揮できるかと思ったのだが、実際にはデフォルトのCOMFORTモードでも難無く走破できてしまった。やはり電動AWDの走りは見事と言うほかない。

5年という月日を経て、EQシリーズの走りのクオリティは格段に磨き上げられてきたなと、今回の試乗では大いに実感させられた。EQE SUV、まさしくBEVの旨味が存分に活きた1台である。

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)
PHOTO/Mercedes-Benz Group AG
MAGAZINE/GENROQ 2023年6月号

SPECIFICATIONS

メルセデスEQ EQE 350 4マティック

ボディサイズ:全長4863 全幅1940 全高1685mm
ホイールベース:3030mm
車両重量:2580kg
モーター:永久同期式磁石
最高出力:215kW(PS)
最大トルク:765Nm
バッテリー:リチウムイオン電池
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前4リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
0-100km/h加速:6.6秒
最高速度:210km/h
DC充電容量:170kW
一充電走行可能距離(WLTP):460〜551km

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著者プロフィール

島下 泰久 近影

島下 泰久

1972年神奈川県生まれ。走行性能だけでなく先進環境安全技術、ブランド論、運転など、クルマ周辺のあらゆ…