6代目「メルセデス・ベンツ Eクラス」の恐るべき完成度を試乗で確認

最新メルセデスの意匠を纏った6代目「メルセデス・ベンツ Eクラス」の恐るべき完成度

フルモデルチェンジの大義は「伝統と革新の架け橋」という6代目となるW214型Eクラス。
フルモデルチェンジの大義は「伝統と革新の架け橋」という6代目となるW214型Eクラス。
メルセデス・ベンツのEセグメントモデル「Eクラス」が6代目へと進化を遂げた。最新のメルセデスの意匠を纏った新型は、広大な室内と刷新されたインフォテインメントシステムを採用。メルセデスの中核を成す主力サルーンの実力を早速試す機会に恵まれた。(GENROQ 2023年10月号より転載・再構成)

Mercedes-Benz E-Class

メルセデス・ベンツにとって乗用車の歴史そのもの

タイトなコーナーで機敏な回頭性をみせつつ、タイヤが路面を粘っこく捉え続けるなど、ハンドリングは安定性を軸足に適切な敏捷性を備えたメルセデスらしい味付け。

メルセデス・ベンツのラインナップにおいてはC/E/Sクラスのフォーメーションこそがコアであることに異論を挟む向きは少ないだろう。とりわけ、パーソナルユーザーのみならず法人需要も幅広く取り込むEクラスは、核心的なモデルといえる。

メルセデス自らも、そのルーツは第二次大戦前のW136に遡るというほどだから、彼らの乗用車の歴史そのものといっても過言ではないだろう。そんなミディアムカテゴリーのフルモデルチェンジはカスタマーのみならず、同業の関係者にとっても大きな注目を集めてきた。

初めてその名が世に出たのはW124後期の1993年。そこから数えると6代目となるW214型Eクラスが掲げるフルモデルチェンジの大義は「伝統と革新の架け橋」という。ここでいう革新とは大胆なデジタライゼーション、その一例としては、ソフトウェアを介した継続的付加価値の提供に大きく舵を切ろうということになるだろうか。

自動車メーカーの未来の収益構造の一翼

実際、新しいEクラスには助手席モニターをガラスで一体化したセンタースクリーンをオプション設定する。BEV向けのサブブランドとなるEQシリーズの上位モデルにも同種のオプションは用意されるが、新型Eクラスはさらにこのモニター環境を活かすインフォテインメントのオペレーションに、2026年以降に搭載予定となるメルセデスの車載OSの一部を先行採用しているという。

これにより、社外アプリによる能力の追加や音楽・映像コンテンツの供給など、様々な機能拡張が5Gを介してオンデマンドで入手することが出来る。試乗車にはその一例として、ZOOMのアプリを介してテレビ会議が行える環境が整えられていた。多様なユーザーが想定されるEクラスだからこそ、機能のパーソナライズは重要なポイントとなる。一部OSの先出しという決断の裏側にはそういう事情もあるのだろう。こういったソフトウェアの部門だけでも2025年には10億ユーロの売上げを見込んでいるというから、未来の自動車メーカーの収益構造の一翼になるとみられるソフトウェア・ディファインドの道を、メルセデスも着々と歩んでいることが伝わってくる。

新型EクラスのプラットフォームはW213型も用いるMRA2の進化版となる。サスは前がダブルウィッシュボーン、後がマルチリンクを継承し、オプションでエアサスが選択できるのも前型と同様だ。さらに新型ではエアサスに最大4.5度の同逆相操舵となるリヤステアシステムや電子制御可変ダンパーを組み合わせ、ドライブモードや走行状況に応じて減衰力を各輪個別制御するシステムをテクノロジーパッケージとしてオプションで提供される。

パワートレインは全て電動化

パワートレインは48VのISGを搭載するマイルドハイブリッドのガソリン&ディーゼル、そしてガソリン&ディーゼルのPHVと全ユニットが電動化を果たした。エンジンはいずれも2.0リッター4気筒だが、後に直6+ISGユニットもプレミアムグレードとして追加される予定だ。もちろんAMGモデルも、同等のパワートレインを使うことになるだろう。

発売は来春以降になるという日本仕様の詳細は未定ながら、売れ筋のE200とE220dは継続して設定される予定だ。加えて2.0リッターガソリンPHVの350eに相当するグレードも設定が検討されている。ちなみに新型EクラスのPHVは25.4kWhのバッテリーを搭載し、BEV走行距離はWLTP値で最大115kmと、通勤や買物など日々の移動ならばモーターのみで十分賄えるカバレッジを備えている。

新型Eクラスの快適性はSクラスもかくやというほどに洗練されている。上屋の上下動は綺麗に収められる一方で揺すりや突き上げなどの角も丸く……と、速度域を問わず違和感や不快要素は殆ど感じられない。すべての試乗車はオプション設定となるエアサスを装備していたことは勘案しなければならないが、MRA2プラットフォームの熟成がいよいよ完熟期にあることも感じられた。

ハンドリングも安定性を軸足に適切な敏捷性を備えたメルセデスらしい味付けだ。タイトなコーナーでも機敏な回頭性をみせながらも、タイヤは路面を粘っこく捉え続けている。パーキング系のADASとも連動するリヤステアの恩恵はもちろん無視できないが、それらがドライバーに違和感ではなくきちんと安心感として作用しているところがメルセデスらしい。制動〜旋回〜加速という一連の操作に対する挙動が自然にシームレスに繋がってくれるなど、電子制御の手懐けっぷりは相変わらず見事だと感じさせる。

欧州向けには高精細マップを搭載

見事といえば欧州向けという前提にはなるが、搭載する高精細マップのデータも織り込んだクルーズコントロールやレーンキープなどADASの制御も驚くべきものがあった。100km/hの郊外路から50km/hの市街路へと制限速度が切り替わる、その標識を目掛けて乗員に不快な減速感を一切感じさせずピタリと速度を合わせる、そして市街路を抜けたら再び100km/hまで速度を高める、その一連の動作の正確さや滑らかさは、もはやレベル2の範疇ではない。日本仕様は高精細マップの搭載が叶わないだろうが、もちろんその素地となる優れた制御品質のADASは実装されるはずだ。

伝統だけでなく、人間のアナログ感と先端のデジタルとをどう折り合いづけるのか。そういった点においても新型Eクラスは時代をリードする1台だと思う。その日本への上陸は来春以降が予定されているという。

REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/Mercedes AG
MAGAZINE/GENROQ 2023年10月号

SPECIFICATIONS

メルセデス・ベンツE200〈E220d 4マティック〉

ボディサイズ:全長4949 全幅1880 全高1468〈1469〉mm
ホイールベース:2961mm
車両重量:1825〈1975〉kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ〈直列4気筒DOHCディーゼルターボ〉
総排気量:1999〈1993〉cc
最高出力:150kW(204PS)/5800rpm〈145kW(197PS)/3600rpm〉
最大トルク:320Nm(32.6kgm)/1600-4000rpm〈440Nm(44.9kgm)/1800-2800rpm〉
トランスミッション:9速AT
駆動方式:RWD〈AWD〉
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後225/60R17〈225/55R18〉
0-100km/h加速:7.5〈7.8〉秒
最高速度:240〈234〉km/h

【問い合わせ】
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

両者とも新型となった「BMW 5シリーズ」と「メルセデス・ベンツ Eクラス」。今回比較するのは、ディーゼルエンジンに小型モーターを組み合わせたマイルドハイブリッド仕様、駆動方式はAWDだ。

新型「BMW 5シリーズ」と「メルセデス・ベンツ Eクラス」をディーゼルマイルドハイブリッド+AWDで比較

2023年の日本市場は、輸入セダンのEセグメントが熱い。同セグメントを代表するBMW 5シリーズとメルセデス・ベンツ Eクラスがそろってフルモデルチェンジし、日本上陸を果たすのだから。両車ともピュアEVやプラグインハイブリッドなど多彩なパワートレインを取りそろえるが、今回は性能が拮抗するディーゼルエンジン搭載モデルをピックアップする。

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