守旧派にも刺さるラグジュアリーSUV選び「X7」「レンジローバースポーツ」「DBX」

【2023年個人的に感動した名車】守旧派にも刺さるSUV3選「X7」「レンジローバースポーツ」「DBX」

左からランドローバー レンジローバースポーツ、アストンマーティン DBX、BMW X7 M60i xドライブ。
左からランドローバー レンジローバースポーツ、アストンマーティン DBX、BMW X7 M60i xドライブ。
毎号、綺羅びやかなニューモデルが数多登場するGENROQ誌だが、例えその誌面を飾らなくても、素晴らしいスーパースポーツやプレミアムカーは存在する。Web担当・吉岡が感動した2023年のクルマは?

高級感のあるマジックカーペットライド「X7 M60i」

本誌を担当している頃と比べて、ゲンロクWeb専業となった2023年は試乗する機会こそ減ったが、それでも数えてみれば50台あまり試乗していた。たいていの場合は本誌取材の都合が優先するので、選択の余地は少なかった(ほとんどスポーツカーだった)が、2023年は何台かのSUVが印象的だった。

ついつい、その出自というか、そもそもの成り立ちを気にしてしまい、SUVだったら質実剛健な4WD以外認めたくなかった。しかし、40代を経て、50歳を超えてから、こういう価値観もありだなと思えてきた。つまりラグジュアリーSUVのことだ。そんな中で2023年に試乗して、感動したSUV3台を紹介したい。

まずはBMWの最高峰SUV「X7 M60i xドライブ」(1698万円)だ。いや、今はXMなんてのもあるがあれは別格ということで。新型X7のデビュー当初、深海魚を彷彿させるフロントマスクは賛否両論だったが、見慣れると、未来感があってなかなかイケていると感じていた。約20年前フィアット ムルティプラも結構好きだった。あれなんかは後期型で一気に良識派というか、プント似の普通なフロントフェイスになってひどく落胆した。このX7の場合、デビューは2018年だが、2022年にフェイスリフトを受けた後期型というムルティプラとは逆のパターンだ。

気に入ったのはデザイン云々ではなく走りだ。全長5170mm、全幅2000mm、全高1835mmの堂々たるボディサイズだが、走っていて意外と楽しい。普段は粛々と2620kg(車検証表記)のボディを前に進めるが、加速してほしい瞬間にスッと踏み込めば、4.4リッターV8ツインターボエンジンはペダルに連動してレスポンスよく最高出力530PS/5500rpm、最大トルク750Nm/1800-4600rpmを発揮してくれる。

高速道路でもエアサスとピレリPゼロ(前HL275/35R23 後HL315/30R23)が、高級感のあるマジックカーペットライドをもたらしてくれる。そもそもの直進安定性も高いが、レーンキープアシストなど最先端ADASが快適性をさらに押し上げる(当然優秀なACCもある)。3105mmという長大なホイールベースのおかげで、室内も広々しており、3列7人乗りのSUVとして3列目まできちんと使えそうだ。それでいて、燃費も8.2km/L(実際230km高速と渋滞を走行して8.0km/Lだった)というから、最近のラグジュアリーSUVに舌を巻くしかない。

空気の汚染度を表示してくれる「レンジローバースポーツ」

続いてお勧めしたいのは「ランドローバー レンジローバースポーツ」だ。2022年に登場した3代目である。こちらは誕生時からカイエンを明確にライバル視してニュル最速みたいなところを目指していたこともあって、今時の超高級、超高性能SUVのハシリといった印象を持っていた。当然新型でもそういうエクストリームな環境に持ち込んでも走ってくれるだろうが、今回はフツーにたくさん走っただけなのでその実力の程はわからなかった。全長4960mm、全幅2005mm、全高1820mmというボディサイズは先代比でわずかに拡大したが、それでも現代にあっては、走れるSUVのパッケージと言えるし、乗員も快適だ。

エンジンはガソリンが3.0リッター直6スーパーチャージャーと4.4リッターV8スーパーチャージャー、ディーゼルが3.0リッター直6ターボの3機種用意されるが、試乗したのは3.0リッターディーゼルのオートバイオグラフィD300(1533万円)だ。ちなみに価格は300PSという最高出力もさることながら、650Nmという最大トルクとWLTCモードで11.3km/Lという良好な燃費も魅力だ。実際に試乗した際も550km(平均時速49km/hで)走って14.8km/Lという、この円安から来るガソリン高のご時世に思わず頬が緩む数値を叩き出してくれた。

ところでこのレンジローバースポーツで、感心したのはエアクオリティという空気の汚染度を表示してくれる機能だ。東京ではあまりひどい排ガスを撒き散らしているクルマには巡り合わないが、首都高の山手トンネル内は恐ろしい数値が表示されていた。全長約18kmもあるし、トンネル内の温度がいつも高温だし、オープンカーやバイクで走りたくない道路で間違いなく都内ナンバーワンだ。このクルマで得た最大の学びかもしれない。

雪でも土でもガンガン走りたい「アストンマーティンDBX」

最後に紹介したいラグジュアリーSUVとは「アストンマーティン DBX」だ。2019年に550PSを発揮するAMG製4.0リッターV8ツインターボを搭載する同社初のSUVとして誕生し、いかにもゲンロクWeb風味のSUVであるが、性能はもう完全にスポーツカー。2022年にはさらにパワーアップしたDBX707もデビューした。

707は軽量化や空力まで徹底的にやった究極のスーパーSUVだ。しかし、今回紹介したいのは素のDBXのほう。アストンマーティンの人も「707」誕生以降は「550」と呼んでいたので、ここでも550と書くが、こちらも充分にスーパーである。走り出した瞬間、明確に足の硬さを感じる。操舵に対する反応はクイック。ロックトゥロックは2.5回転でSUVとしては割と早いギア比だが、初期のゲインが高いので運転感覚はスポーツカーのそれだ。全長5039mm、全幅1998mm、全高1680mmでホイールベースは3060mmもあるが、707試乗会がサーキットで開催されるほどのポテンシャルを秘めている。

室内は前述の2台と比べると、ディスプレイが小さい点などで古さを感じるかもしれないが、物理スイッチの多さはタッチパネルで盲牌できなくなった最新モデルよりもむしろ好感が持てる。

ところでなぜ550を推すかだが、価格差約600万円(DBX550=2500万円)も大きな理由だが、最大の理由は使い勝手だ。707はエアロパーツが前後左右上下の結構いい場所についているが、万が一破損してしまったら……と思わずにはいられない。やはりSUVたるもの雪でも土でもエアロパーツを気にせずガンガン走っていきたい。というわけでDBX550を購入して差額600万円でもう1台何か遊べるクルマを買えたらなあ、という提言をシメにしたい。

今や私のライフワークというべき東京〜京都のテストドライブ。新型車ばかりではなく、道中が楽しみになるクルマ選びを心がけた。

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仕事柄、多種多様なニューモデルに触れてきたモータージャーナリストが2023年試乗した中で隠れた名車を選ぶ本コーナー。京都在住の西川淳がセレクトしたのは、なんといずれも3ペダルのエンスーむけ3台だった。記事の最後には今年試乗した42台の一覧もあって、これは必見。

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著者プロフィール

吉岡卓朗 近影

吉岡卓朗

Takuro Yoshioka。大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わり…