2023年に乗った中で改めて感動した「レクサス LC500」

【2023年注目されなかった名車】やっぱりエンジンって最高!と教えてくれた「レクサス LC500」

ボリュームのあるフェンダー周りが優雅な雰囲気を醸し出す。右はLS500h。
ボリュームのあるフェンダー周りが優雅な雰囲気を醸し出す。右はLS500h。
毎号、綺羅びやかなニューモデルが数多登場するGENROQ誌だが、例えその誌面を飾らなくても、素晴らしいスーパースポーツやプレミアムカーは存在する。本誌・永田が感動した2023年の1台は?

LEXUS LC

個人的に大好きなレクサスLC

優雅なフォルムのLC500コンバーチブル。オープンボディでも剛性は高い。
優雅なフォルムのLC500コンバーチブル。オープンボディでも剛性は高い。

GENROQなんていうスーパーカー雑誌を作っていると、仕事で運転するのは輸入車、しかもかなり高額なものが多い。それはそれで役得というわけで非常にありがたいのだが、個人的には日本車も大好きである。日頃からできるだけ日本車にも触れて、試乗したいと考えているのだが、なかなかその機会が作れないのが現実だ。

だから2023年夏に「レクサス LC」がマイナーチェンジを受けたと聞いた時は、すぐにトヨタから広報車両を借り出した。といってもそのマイナーチェンジの内容はエンジンマウントの変更やリヤサスペンションメンバーの取り付け部補強、シフトスケジュールの見直し、ホイールナットのボルトナット化、コンバーチブルにはブレース補強追加など、というマイナーチェンジと呼ぶのもためらうほどの小変更。通常ならわざわざ取材しなくてもいいか、と考えるレベルなのだが、この時は即断でレクサス広報に連絡を入れてしまった。というのもレクサスLCは個人的に大好きな1台だからである。

マイナーチェンジでほぼ手が加えられなかったデザイン

LCならブルーとホワイトという華やかな内装もよく似合う。

最大の魅力はそのデザインだ。恐ろしく低く構えたボンネット、豊かに張り出したフロントとリヤのフェンダー、それらのラインが有機的な流れでリヤへと繋がり、全体が水滴のような張りのある緊張感を持っている。この優雅でスポーティなデザインは、日本車の傑作のひとつと評してもいいだろう。登場から6年経つLCだが、未だに色褪せるどころかその存在感はさらに高まっているとさえ言える。

だから今回のマイナーチェンジでデザインにほぼ手が加えられなかったのは、むしろホッとしたというのが正直な気持ちだった。これがさらに進化した姿を見てみたい、という気持ちもなくはないが、それでガッカリしてしまうくらいなら現状ママの方がずっといい。いや、ガッカリすると決まっているわけではないが……。

借り出したのはブルーのボディにホワイトの内装という実に華やかな組み合わせのコンバーチブルと、ホワイトボディのクーペの2台。エンジンはコンバーチブルが5.0リッターV8を搭載したLC500、クーペがV6ハイブリッドのLC500h。まず最初にLC500コンバーチブルに乗り込み、走り出した途端に驚いた。

なんだこのエンジンは!素晴らしいじゃないか!8個のピストンが爆発に伴って美しくスムーズに上下している感覚、その音楽のようなビートが全身に伝わってくる。スロットルを開けていくとそのビートが段々と力強くなり、排気音の高まりと共に見事なハーモニーを奏でてくる。右足の動きと完全にシンクロしたトルクの盛り上がりは7000rpmまで淀みなく続き、思うがままに2tを超えるボディを滑らせる。

本当に感謝すべき5.0リッターのV8自然吸気

トヨタとヤマハが共同開発した2UR-GSE。5.0リッターのV8自然吸気は世界的にも貴重だ。
トヨタとヤマハが共同開発した2UR-GSE。5.0リッターのV8自然吸気は世界的にも貴重だ。

V8エンジンを搭載するクルマは他にもあるが、たいていは過給器が付けられて爆発的なパワーやドロドロとした排気音ばかりが勝っている例が多い。それに比べてこの2UR-GSEの上品さはどうだ! この情感たっぷりの奥深さは、まさに日本ならではの詫び寂びの世界だ。

ラグジュアリークーペの世界はどうしても輸入車ばかりが注目されるが、LC500はデザインもエンジンも最高レベルの1台だと言えるだろう。続けて乗ったV6ハイブリッドのLC500hも素晴らしいが、やはりこのフィールを味わったらV8一択だ。何しろ価格はV8の方が安いのだし。

実は2023年のマイナーチェンジではこの2UR-GSEをさらにバランス取りした「EDGE」という特別仕様車が限定60台で発売された。エンジン以外にもリヤサスメンバーをアルミ中空製とし、リヤデフを手作業でバックラッシュ調整するなどの専用チューニングが施されているという。標準でさえこの素晴らしさなのだから、その「EDGE」の走りを想像するだけで頬が緩んでくる。限定60台という希少さゆえ、試乗車が用意されないのがなんとも残念。是非一度、そのステアリングを握ってみたいものだ。

世界的にダウンサイズが進む中、多気筒・大排気量のエンジンはこの先どんどん少なくなっていくことは明らかだ。あのマセラティもV8エンジンの生産をやめてV6エンジンへと置き換えていくらしい。そんなご時世を考えると、トヨタが5.0リッターのV8自然吸気というエンジンを作り続けているのは、本当に感謝すべきことなのかもしれない。
この素晴らしきパワートレインをこの先も楽しむことができますように。環境対応も重要だが、エンジンの楽しさを提供し続けることも自動車メーカーの責務だ。

SPECIFICATIONS

レクサスLC500コンバーチブル

ボディサイズ:全長:4770×全幅1920×全高1350mm
ホイールベース:2870mm 
車両重量:2010kg
エンジン:V型8気筒DOHC
総排気量:4968cc
最高出力:351kW(477PS)/7100rpm
最大トルク:540Nm(55.1kgm)/4800rpm
トランスミッション:10速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:FRマルチリンク
ブレーキ:FRベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:F245/40R21 R275/35R21
価格:1550万円

レクサスは「LC500h/LC500/LC500 コンバーチブル」を一部改良。ボディ剛性や空力性能を高める技術を採用した「LC500 "EDGE"」は、60台が抽選販売される。

「レクサス LC」に乗り心地や走行性能をアップデートした60台限定車「EDGE」登場

レクサスは「LC500h/LC500/LC500 コンバーチブル」を一部改良。全国のレクサス…

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著者プロフィール

永田元輔 近影

永田元輔

『GENROQ』編集長。愛車は993型ポルシェ911。