ラグジュアリークーペ「レクサス LC」のクーペとコンバーチブルを比較試乗

「これぞ日本車の誇り」われわれがラグジュアリークーペ「レクサス LC」をもっと誇りたい理由

今回試乗したのはホワイトノーヴァガラスフレークのLC500h(左)とヒートブルーコントラストレイヤリングのLC500コンバーチブル。
今回試乗したのはホワイトノーヴァガラスフレークのLC500h(左)とヒートブルーコントラストレイヤリングのLC500コンバーチブル。
レクサスのフラッグシップクーペ「LC」がマイナーチェンジを果たした。外観や内装などのデザインはほぼそのままに、ボディ剛性や足まわりなどに手を加えて走りを磨いている。日本を代表するラグジュアリークーペの進化を、2つのエンジン、2つのボディで検証する。(GENROQ 2023年9月号より転載・再構成)

Lexus LC500h
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Lexus LC500 Convertible

日本を代表するラグジュアリークーペ

レクサスLCには、ずっと敬服していた。私ごときに敬服されても大した価値はないだろうが、ラグジュアリークーペという日本車がこれまで苦手としてきた分野にチャレンジし、しかもデザイン、質感、そして走りとすべての面で素晴らしい仕上がりを見せてくれていることに、いち日本人として素直に感動し、誇りに思っていたのである。

そんなLCもデビューから早6年。だがその妖艶でグラマラスなデザインはまったく古びることなく、いや、たまに街中で見かけるその姿はますます輝きを増しているように見える。だからであろうか、今回実施されたマイナーチェンジでもデザインについてはほとんど手を加えられていない。具体的な進化ポイントはエンジンマウントの変更、リヤサスペンションメンバーの取り付け部補強、サスペンションのリファイン、シフトスケジュールの見直し、コンバーチブルにはブレース補強などの剛性アップ、など。細かいところではホイールナットがボルトナット式に変更されている。

LCはこれまでにもこのような“地味”な改良を行っているが、中身を着実に進化させていく質実剛健な手法はラグジュアリークラスでは当然のことなのである。それにしても、マイナーチェンジでわざわざハブ部分を変更するなど、かなり珍しい。

非日常感溢れるコンバーチブル

そして今回は特別仕様車「EDGE」が追加されたことも大きなニュース。これはリヤサスペンションメンバーをアルミ中空製とし、V8エンジンはバランス取りなどのチューニング、またリヤデフは技術者が手作業でバックラッシュ調整を行うなど、信じられないような手間が掛けられた1台。是非とも試乗したかったのだが、60台限定の貴重なクルマということもあり、それは叶わなかった。残念だが、目の前にはホワイトノーヴァガラスフレークのLC500h、ヒートブルーコントラストレイヤリングのLC500コンバーチブル、すぐに気分は上がりまくりだ。

メタリックが陽光を受けてキラキラと輝く新色のヒートブルーコントラストレイヤリングはLC500コンバーチブルの非日常感溢れるボディに実に良く似合う。ドアを開けるとホワイト&ブルーのインテリアが目に飛び込む。こんな華やかなカラーが素直に馴染む日本車はLCだけだろう。搭載する2UR-GSEは5.0リッターのV8自然吸気という、レクサス珠玉の日本車最大ユニット。その感触はさすがに素晴らしく、軽やかに、しかし確実な脈動を感じさせながら2tを超えるボディを滑らせる。感心するのはそのフィールが情緒に溢れていることだ。低回転から7000rpmまで、澱みなく湧き出す泉のようなパワーとトルク、そして回転が上昇するにつれて高まるV8NAサウンド。決してドロドロと下品な音ではなく、それでいて8個のピストンが精緻に往復していることが伝わる上品なビート。やはりモーターではこの感動は得られない。

エンジンに手が加えられていないのに以前よりも味わいが深いのは、エンジンマウントの変更とボディ剛性向上の効果が大きいのだろう。アクセルやステアリングの動きに対するクルマ全体の一体感が確実に高まっている。またオープンボディなのに荒れた路面を走っても幌周りがミシリともいわないのは、さすが日本の仕事だ。

かといって不満がないわけではない。12.3インチへと大型化したモニターのあまりにそっけない画面デザインはいかがなものか。また運転支援装置も進化しているようだが、試乗中にACCを試したが私の使い方が悪いのかなぜか反応しなかった。このような機能はマニュアルを見なくても使えなければ意味がない。

LCというクルマに相応しい

ホワイト&ブルーのインテリアが鮮やかなLC500コンバーチブルの後席。

500hに乗り換えると、いい意味でのカジュアルさを感じる。V8のような重厚さは薄いがよく回るV6エンジンとモーターでパワーは十分。車重はV8とほぼ変わらないのだがフロント周りが軽いことでステアリングの動きに対する反応もよりシャープだ。また10段のステップ制御を取り入れてギヤ車のようなメリハリのある走りを実現していることも運転の楽しさを増してくれる。

どちらを選択しても満足だが、やはり個人的にはV8を選びたい。LCというクルマの性格を考えても、相応しいのはV8だろう。価格もクーペどうしではV8の方が50万円も安い。参考までに今回の試乗でV8の燃費は7〜8km/リッター前後、対してV6ハイブリッドは9〜10km/リッター前後と、大きな違いはなかった。このクラスのクルマで価格や燃費を持ち出すのは野暮なことだが……。

ともあれ、ラグジュアリークーペがある国は、自動車文化が成熟していることを意味する。LCこそレクサスの、そして日本車の矜持。我々はもっと誇るべきだ。

REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)
MAGAZINE/GENROQ 2023年9月号

SPECIFICATIONS

レクサスLC500コンバーチブル

ボディサイズ:全長4770 全幅1920 全高1350mm
ホイールベース:2870mm
乾燥重量:2050kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHC
排気量:4968
最高出力:351kW(477PS)/7100rpm
最大トルク:540Nm(55.1kgm)/4800rpm
モーター最高出力:-
モーター最大トルク:-
トランスミッション:10速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/40R21 後275/35R21
車両本体価格:1550万円

レクサスLC500コンバーチブル

ボディサイズ:全長4770 全幅1920 全高1345mm
ホイールベース:2870mm
乾燥重量:2010kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHC
排気量:3456
最高出力:220kW(299PS)/6600rpm
最大トルク:356Nm(36.3kgm)/5100rpm
モーター最高出力:132kW(180PS)
モーター最大トルク:300Nm(30.6kgm)
トランスミッション:電気式無断変速
駆動方式:RWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/40R21 後275/35R21
車両本体価格:1533万円

レクサスは「LC500h/LC500/LC500 コンバーチブル」を一部改良。ボディ剛性や空力性能を高める技術を採用した「LC500 "EDGE"」は、60台が抽選販売される。

「レクサス LC」に乗り心地や走行性能をアップデートした60台限定車「EDGE」登場

レクサスは「LC500h/LC500/LC500 コンバーチブル」を一部改良。全国のレクサス…

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著者プロフィール

永田元輔 近影

永田元輔

『GENROQ』編集長。愛車は993型ポルシェ911。