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Porsche Cayenne
いい感じでスポーツカーだった初代カイエン
背の高いクルマ(SUVやミニバン)の運転が個人的にはあまり得意なほうではない。最近でこそ「アストンマーティンDBX」や「フェラーリ プロサングエ」といった“視線が高いだけの4ドアスポーツカー”も現れて、さほど嫌がらずに乗るようになったし、そもそもSUVあたりを避けていると、この仕事ももはや成立しないので、渋々試すうちに少しは慣れてきた。いっそ「ロールス・ロイス カリナン」くらいぶっ飛んでくれたら、背が高いだ低いだのといちいち気にしなくてもいいのに。いや、それじゃもはやマイクロバスの領域か。
それはともかく、20年くらい前のこと、「BMW X5」と「ポルシェ カイエン」のそれぞれ初代モデルに初めて乗って、それまで乗ったことのある背の高いモデルとは一線を画す乗り味に「これからはみんなSUVになるんだろうな〜」などと良いような悪いような微妙な気分になったものだ。とはいえオンロードで操る楽しさは、まだまだ背の低いスポーツカーに分がある(今でもそうだけど)ぞ、と自らを納得させていた。
ところが……、初代カイエンの後期に設定されたGTSの6速MTに、伊豆スカイラインで試乗したとき、衝撃を受けた。いい感じでスポーツカー。背の高いぶん、見通しも聞くしラインを決めやすい。しかも絶妙にコントロールされたロールが、かえってドライビングファンを演出する。腰が外側に残りそこで駆動を感じるというコーナリングに夢中となった。
今や貴重な存在の3ペダル車
カイエンのMTは、ありだ!そう思い出してカーセンサーを検索してみれば6/437台と出た!おおー、6台しかないのか。残念ながらGTSはなかったけれど(ちなみにSもV8だった)、初代の3.2リッターV6が5台、それになんと第2世代の3.6リッターV6が1台ひっかかった。
今で言うところのマカン程度のボディサイズで、スタート値段は今のマカンより安かった初代カイエンの、それも前期マスクが好み。なので、本当は前期SのMTが見つかれば大コーフンしたはずだが、実際にはノーマルのV6カイエンのみ。おそらく発売当時のカイエンMTはATより50万円ほど安かったので、最廉価グレード需要も少なくなかったのだろう。それが今もなお生き残っているのだ。そのような選び方をする人はたいてい、長く大事に乗る人でもあった。
実際、流通するマニュアルカイエンは10万kmを超えているタマが多い。それだけ気に入って乗られていた証拠で、このクルマの高いポテンシャルをよく物語っている。ただ、同じように距離を重ねた個体に比べると、相場はおよそ倍。それだけ3ペダル車は貴重な存在ということだ。GTSのMTが出てくれば、距離にもよるけれど、300万〜400万円はくだるまい。ああ、もう一度、乗ってみたい! 広報車はワインレッドだったよなぁ。
国産クロカンのMT高値安定でわかる人気
MTでドライブできるスポーツモデルの相場は高値安定だ。スーパーカーになると、もはや手のつけられない相場に達している。同じ程度の2ペダル個体より、平気で倍、場合によっては3倍だ。4枚ドアモデルでも事情はほとんど変わらない。もともとの価格相場が安いというだけで、3ペダルMTの希少性は高く、高値安定傾向はこれから先もずっと続くに違いない。
そういえばその昔、クロカン4WDといえばマニュアルがフツウだった。思い立って三菱パジェロのMTを検索してみれば、エボリューションの700万円は別格だとしても、1990年式のMTパジェロが軒並み300万円以上の相場を作っていることを知って驚く。試しにランクル100ならどうか? たった2台しかない。そして1999年式25万kmで360万円(!)だ。国産人気クロカンのMT高値安定を見るにつけ、カーセンサーで見つけた2008年式MTのカイエンV6の7万km、300万円が俄然安く思えてきた。