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Aston Martin Rapide
なぜか、しっくり来るちょうどよさ
先日、京都でギャザリングイベントを催したのだけれど、そこに旧知の友人が「アストンマーティン ラピードS」で颯爽とやってきた。1980年代から古いフェラーリやランボルギーニを乗り継いできた大学同窓の大先輩。今では戦前の馬鹿でかいロールス・ロイスなどを巧みに操ってはイベントなどで大活躍されている。モダンアストンに乗っておられても、なんら不思議はないのだけれど、確かラピードには以前も乗っておられてもう売却されたと聞いていた。日頃のアシはアウディかなんかだったような……。
「いやぁ〜、結局ラピードがしっくり来るんだよ。他のに乗ってもラピードを思い出しちゃって。だからこれ、買ってきた帰りなんだ〜」。なる〜。
そういえば僕のまわりには意外とラピード乗りが多い。それもとり立てて英国車好きでなく、むしろイタリア系スーパーカー好きにも関わらずラピードに乗っている。AML社の思惑とは違ってDBXに乗り換えることなくラピードに乗り続ける。ラピードからラピードへ乗り換えた人もいる。先輩のように。
おそらくポジショニングがちょうどいいのだろう。こだわりのあるクルマ好きが普段のちょっとした遠出や買い物、食事、いやデートに使うクルマを探しているとする。今さらジャーマンプレミアムの高級モデルでもあるまい。そんな時、よくできたGTの多いアストンマーティンが気になってくる。品の良さにはずっと憧れていて気になっていた。
500万円を切る個体も
普通なら美しさで定評のあるビッグクーペか洒落たオープンのヴォランテを狙うところだけれども、自分はそれほどアストン一筋というわけじゃないし、何よりガレージには他ブランドの2ドア高性能モデルがあったりして、方向性が被ってしまう。かといってDBXのような流行りのSUVには乗りたくない。そんなときアストンの4ドアクーペというべきラピードは“ちょうどいい”のだ。+2枚ドアの実用性に、スタイル、サイズ、そして性能も。
何しろ見た目も中身もほぼほぼDB9だ。ドアが2枚増えただけ。斜め前から見れば、リアドアの存在感などほとんどなし。猫背のシルエットはまさに4ドアクーペで、ドアは斜めにちゃんとスィングアップする。
ATとの組み合わせ、とはいえ、泣く子も黙る自然吸気V12エンジンを積んでいるのも今となってはサイコーだ。背の低い12気筒サルーンなんて今後はどこのブランドからも出てくる予定はない。ラピードが最後。
走ってもまたDB9やDBSに遜色ない。かつてラピードSの国際試乗会がスペインで開催された時、“車気”のまるでないワインディングロードを猛烈なスピードで駆け抜けるラピードSを見た。ボディの色から後で聞けば、当時の社長ベッツがドライブしていたらしい。V12ヴァンテージと並んでラピードは走り屋CEOウルリッヒ・ベッツのお気に入りモデルでもあった。
カーセンサーを検索する。8台(2023年5月20日時点)あった。例によって本体価格の安い順に並べてみる。おおー、500万円を切る個体もあるじゃないか! さすがに距離が伸びているけれど、逆にいうとちゃんと乗られてきた証拠。5万〜6万kmと距離を延ばしてきたものにはこの時代のアストンマーティンには欠かせない“予防的メンテナンス”の施されてきた個体が多いと推測される。
入り乱れる相場で買いを見極める
距離の少ない個体は高い。それは当然だとして、600万円前後から前期モデル(ラピード)と後期モデル(ラピードS)が入り乱れ始める。これはモデルの価値がマーケットで未だ確定していない証拠で、逆にいうと買いのチャンス。ちなみに2010〜2012年の前期型フロントグリルが2分割なのに対し、2014〜2020年の後期型グリルは大口のシングル。相場が入り乱れているのなら、それは要するに好みの問題ということ。
2014年11月以降のモデルは6速のタッチトロニック2が8速のタッチトロニック3へと進化したので、800万円以上をキープする。後期モデルのラピードS=8速ATではない。ご留意を。ちなみに最終グレードとして2018年末に追加されたラピードAMRは新車価格も3000万円オーバーでほとんどタマはない。