期待のイタリアンコンパクト「アルファ ロメオ ジュニア」の走りを堪能した

実力派コンパクト・アルファロメオ「ジュニア」に試乗して高まる期待「名門復活の狼煙となるか?」

ジュリエッタの実質な後継モデルといえるアルファ ロメオ ジュニア。BEVとマイルドハイブリッドを設定するアルファ期待のモデルだ。
ジュリエッタの実質な後継モデルといえるアルファ ロメオ ジュニア。BEVとマイルドハイブリッドを設定するアルファ期待のモデルだ。
アルファ ロメオから待望のコンパクトモデルが登場した。ラインナップはBEVとハイブリッドの2種類が用意される。今回BEVの高出力版である280ヴェローチェをイタリアで試乗してきた。(GENROQ 2024年9月号より転載・再構成)

Alfa Romeo Junior

ミトやジュリエッタの後継となる新型コンパクト・アルファ

BEVとマイルドハイブリッドが設定されるアルファロメオ ジュニア。今回は最もハイパフォーマンスな「ジュニア・エレットリカ280ヴェローチェ」に試乗した。
BEVとマイルドハイブリッドが設定されるアルファロメオ ジュニア。今回は最もハイパフォーマンスな「ジュニア・エレットリカ280ヴェローチェ」に試乗した。

アルファ ロメオの聖地、バロッコのテストコースの中庭に佇む「ジュニア」は、同じBセグメントSUVのホンダ・ヴェゼルよりもわずかながら小さいのに、威風堂々として見えた。兄貴分にあたるステルヴィオやトナーレのシルエットを継承しつつ進化させたその姿は、ルーフを低く抑え、4つのフェンダーの張り出しを大きくとって滑らかに上下するショルダーでつないだ、スポーティなハッチバック風。ボディサイドの凹凸の絶妙な面構成、なだらかにノーズに向かっていくエンジンフード、厚みのあるフロントフェイスなども手伝って、角度によってはグラマラスにすら思える。車高の高さを除けばジュリエッタよりもややコンパクトなのだから驚きだ。そして写真で見るより遙かにカッコいい。

ミトの生産が終了したのは2018年。ジュリエッタの生産終了が2020年。どちらもコンパクトなアルファ ロメオとして素晴らしいキャラクターとパフォーマンスを兼ね備えたモデルだった。以来、そのポジションは空いたままだった。そこを埋めるためのモデルがジュニアであることは、皆さんも御存知だろう。

新世代のコンパクト・アルファは時代を反映したSUVスタイルで、BEVの「エレットリカ」とMHEVの「イブリダ」という2つのライン展開となる。今回の試乗車はラインナップ全体で最もハイパフォーマンスな、BEVのジュニア・エレットリカ280ヴェローチェだった。

アルファらしさ全開のスポーティなインテリアが復活

本国での発売が年末ぐらいでまだホモロゲ前の生産型プロトタイプの段階だというのに僕たちメディアに乗せるということは、スポーティに仕立てた電動コンパクト・アルファの実力をまずは世界に伝えたい、ということなのだろう。アルファ ロメオのファンには、クルマとしての存在感や走りのテイストへの拘りが強い人が世界的に多いが、そうした熱いファンたちを、果たしてこのジュニアは納得させることができるのかどうか。

ジュニアの基本骨格は、ステランティスのeCMPプラットフォーム。基本がジープ・アベンジャーやフィアット600eと共通というだけで眉間にしわを寄せる人もいるが、今どきプラットフォームやパワーユニットの共有なんて当たり前。ブランド違いなのに乗ったら味付けが一緒、なんてことには絶対にならない。キッチリと造り分ける。だからそこはまったく心配していなかった。

意外にもジュニア・ヴェローチェの骨格と足腰には予想以上に手が入っていた。サスペンションのジオメトリーと構造の一部を変え、アップライトも専用設計し、油圧ストッパー付きのダンパーを組み、BEVとしてはクイックな14.6対1のステアリングギヤ比を採用。フロントブレーキに380mmの大径ディスクを驕り、さらにはトルセンDと呼ばれる機械式LSDを新開発している。2006年に147で導入したQ2システムの、トルク感応型機械式LSDの働きを電子制御する仕組みを大幅に進化させたものだ。

それらが生み出すジュニア・ヴェローチェのハンドリング、コーナリングはファンタスティックといえるほど素晴らしい。ステア操作と同時に前輪と後輪が同調するように素早く反応して旋回を開始し、載せたいラインにピタリと車体を載せながらコーナーをクリアする。コーナーに入るときのオーバーステアも、脱出に向かうときのアンダーステアも、まったく顔を出すことがない。シャープだけど安定感抜群で、とにかくよく曲がる。

往年のアルファロメオを彷彿とさせる俊敏なハンドリング

往年のアルファロメオを彷彿とさせるレスポンスの良いハンドリングを実現していたアルファロメオ ジュニア。早く日本で乗ってみたいものだ。
往年のアルファロメオを彷彿とさせるレスポンスの良いハンドリングを実現していたアルファロメオ ジュニア。早く日本で乗ってみたいものだ。

ステルヴィオほど初期反応は鋭くないし、トナーレみたいに抉り込むような曲がり方も皆無。ジュニアはドライバーにクルマとの適度な一体感を感じさせながら、正確にコーナーをクリアしていくのだ。その楽しさと気持ちよさは兄貴分の2台にまったく負けてない。

車重が1590kgとライバルたちより200kgほど軽いこともあって、発進加速も中間加速も軽快にして爽快。0-100km/加速は5.9秒、最高速度は200km/hと、なかなかの速さも持っている。走りに曇りらしい曇りは、まったくない。しかも、だ。車体が強固で脚がよく動くから、乗り心地も快適といえる部類。当然、使い勝手だっていい。

ジュニア・ヴェローチェは、コンパクト・アルファ史上で最も中身の濃いモデルだ、と言い放ちたくなるような出来映えだった。お見事!

REPORT/嶋田智之(Tomoyuki SHIMADA)
PHOTO/Alfa Romeo Automobiles S.p.A.
MAGAZINE/GENROQ 2024年9月号

SPECIFICATIONS

アルファ ロメオ・ジュニア・エレットリカ280ヴェローチェ

ボディサイズ:全長4173 全幅1781 全高1505mm
ホイールベース:2562mm
車両重量:1590kg
モーター
システム最高出力:207kW(280PS)
システム最大トルク:345Nm(35.2kgm)
トランスミッション:1速固定
駆動方式:FWD
EV航続距離(WLTC):322-334km
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後トレーリングアーム
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
0-100km/h加速:5.9秒
最高速度:200km/h

【問い合わせ】
アルファ・コンタクト
TEL 0120-779-159
https://www.alfaromeo-jp.com/

4月10日に発表された「アルファロメオ ミラノ」が、車名を「ジュニア」に変更することになった。

「イタリア政府がNG」アルファロメオの新型コンパクトSUVの車名「ミラノ」が「ジュニア」に変更

アルファロメオは、新型コンパクトクロスオーバー「ミラノ(MILANO)」の名称の変更を発表した。都市名から採られた「ミラノ」は、イタリア政府から法律で使用が禁止されているとの発表があり、新たに「ジュニア(JUNIOR)」へと車名を変更する。

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嶋田 智之