目次
ASTON MARTIN V8 VANTAGE
今はイチオシの3ペダルMT
今、コレクタブルカー市場で評価の高い装備が3ペダルMTだ。ハイパーカーでは新型モデルでもアナログ回帰が起きていて、ゴードン・マレー・オートモーティブやパガーニの最新型には3ペダルが用意されており、しかも人気だというから間違いない。このぶんだと早晩、フェラーリやランボルギーニもアナログリターンを決めるかもしれない。
なかでもマルチシリンダーエンジン+3ペダルが人気、つまり評価のテッパンだ。12気筒エンジンでMTのミドシップというとストップ高で、なかでも新車当時に2ペダルが主流であったモデルほど、つまり3ペダルが時代遅れだとして、(あったのに)選ばれなかった時代のモデルほど人気は高い。たとえばランボルギーニの「ムルシエラゴ」や「ガヤルド」、フェラーリなら「F430」や「F355」である。「ポルシェ 911」のタイプ964、タイプ993などもそうだろう。なかには「フェラーリ カリフォルニア」や「599」のようにごく限られた地域でのみオーダーを受けた3ペダルが、2ペダルの10倍で取引されるという例もある。
とにかく今はMTがイチオシ、というわけで、今回は比較的買いやすいマニュアルのブランド物を探してみた。
必ずしも爽快ではなかったシフトフィール
見つけ出したのは「アストンマーティン V8ヴァンテージ」のMTだ。見つけ出したというより、以前からずっと気になっていたモデルで、ことあるごとにカーセンサーを開いては相場をチェックするのだが、これだけマニュアルモデルの人気が高まってきても、不思議とV8ヴァンテージの相場は上がっていない。むしろ3ペダルでも若干、下がっている。だいたい、500万〜600万円で見つかって、距離の少ない極上物でも700万円代で見つかるのだから、これは美味しい。
美しい2ドアクーペ、しかも現代のモデルに比べて随分と小さく、V8パワーでも十二分というパッケージ。加えてマニュアル仕様あり。どうして相場が上がっていかないのか不思議なくらいだけれど、ここはあまり声を上げて多くの好事家たちに気づかれない方が良さそうだ。
もっとも記憶を辿ればアストンマーティンの3ペダルは必ずしもシフトフィールが爽快というわけではなかった。ペダルフィールにも、そして肝心のシフトフィールにも一癖あって、少なくともスナップでコキコキきまるような手合いではなかったと思う。そのあたりも人気の上がってこない原因かもしれない。逆にいうと、安い今だからこそ買って、その特異な3ペダルフィールを乗りこなすという楽しみ方も大いにアリだと思うのだが……。
もうひとつ、チョイスがある。実はこちらの方が筆者的にはプッシュしたい。それは同じボディに12気筒エンジンを積んだ「V12ヴァンテージ」の3ペダルを探すことだ。実際にカーセンサーを検索してみても前期型で数台見つかるのみで、後期型では滅多に引っかからないレア物。ロードスターとなれば尚更で、相場もグンと跳ね上がる。
自然吸気エンジンでこそ楽しめるMT
V8もV12も、実は後期型の完成度がグンと高く、冷静に考えてもオススメなのだが、3ペダルが少ないとなれば仕方ない。V12ヴァンテージの前期型3ペダルであれば今でも1500万円前後で見つかる。8気筒の倍というと高い気もするが、世界相場をみればまだまだ安い。
V12ヴァンテージのシフトフィールも気持ちよくは決してない。けれども12気筒をマニュアルでドライブできるチャンスの方が圧倒的に少なく、今も昔もレアで、今となってはスーパーカーブランドの12気筒MTで2000万円以下という中古モデルは見当たらないから、やはりここはアストンが狙い目と言っていい。
V8にしろV12にしろ、この頃はまだ自然吸気エンジンが主流である。それゆえマニュアルギアボックスの組み合わせも、ある意味、順当であった。ターボ時代になると、もはや3ペダルとエンジン、ドライバーとの三位一体が難しくなっていく。それに低回転域から力のあるクルマをマニュアルで乗ってもさほど楽しくはない。人はなぜMTを駆りたいのか。エンジンの高回転域を楽しみたいからである。