ランボルギーニフラッグシップ「アヴェンタドール」と「レヴエルト」を比較試乗

ほぼ十年に一度のランボルギーニフラッグシップ交代劇「アヴェンタドール」と「レヴエルト」を比較試乗

ランボルギーニミッドシップ縦置き12気筒のレヴエルトとアヴェンタドールSVJを比較。
ランボルギーニミッドシップ縦置き12気筒のレヴエルトとアヴェンタドールSVJを比較。
ランボルギーニミッドシップ縦置き12気筒の系譜はレヴエルトに引き継がれた。パワートレインはPHVという大きな進化を遂げたが、それは走りにどのような影響をもたらしたのか。アヴェンタドールSVJとの比較を通して明らかにしていこう。(GENROQ 2024年10月号より転載・再構成)

LAMBORGHINI Revuelto
LAMBORGHINI Aventador SVJ

アヴェンタドールはカウンタックだ

ランボルギーニミッドシップ縦置き12気筒の系譜はレヴエルトに引き継がれた。パワートレインはPHVという大きな進化を遂げたが、それは走りにどのような影響をもたらしたのか。アヴェンタドールSVJとの比較を通して明らかにしていこう。
ランボルギーニのフラッグシップたるミッドシップ縦置き12気筒。

一瞬、頭が真っ白になった。混乱した。なんてこった、これは“進化”どころの騒ぎではないかもしれないぞ、と……。

「アヴェンタドール」から「レヴエルト」へ。歴史的に見ればほぼ十年に一度のフラッグシップチェンジというブランド恒例の行事であり、そこには十年分(今回は12年分だが)の進化が詰まっていて当然だ。過去にムルシエラゴ、そしてアヴェンタドールとモデルチェンジを現場で経験してきた筆者としても、その都度、変貌ぶりには驚かされてはきた。けれども今回の飛躍のステップは過去に経験したレベルとはまったく異なっている。いったいどれくらい違うというのか? 両方に乗って思ったことは「アヴェンタドールがカウンタックであった」ということだった。

その意味するところは2つ。アヴェンタドールがカウンタックに思えてしまうほどレヴエルトへの進化幅が大きく感じたこと。そしてもうひとつ、レヴエルトはそれゆえにもはやカウンタック=LPの系譜にはまったくもって連なっていないというランボルギーニファンにとってはなかなか刺激的なリアリティである。

そう、ランボルギーニはPHV化に伴って伝統を、少なくともドライバーとの関係性という点においてまったく新しいパフォーマンスを持つミッドシップスーパースポーツを造り出した。レヴエルト、そしておそらくはウラカン後継のテメラリオとの2台セットでもって……。

次元が違うレヴエルト

詳しく説明していこう。ランボルギーニの今に至るブランドイメージを確定したモデルはもちろん、ミウラではなくカウンタックだった。重くて長いV12+トランスミッションを180度ひっくり返し、前からトランスミッション→エンジンの順に搭載してロードカーとして成立させるというスタンツァーニ・レイアウト=LPは、鬼才マルチェロ・ガンディーニというスタイリストと出会ったことで、これまでになかったスポーツカーのカテゴリー=独自のスーパーカーカテゴリーを確立する。

しかも、カウンタックが生まれた当時のランボルギーニ社はいつ倒産してもおかしくない状況になり、そのオリジナリティはかえってプロダクトアウトのままピュアに生き続け、都合20年ものあいだブランドのフラッグシップという重責を担い続けた。それゆえ、背が低く平べったいワンモーションのウェッジシェイプにシザースドアという格別ユニークなスタイルがブランドのイメージを決定づけたのだ。

カウンタックの後を継いだディアブロ、ムルシエラゴ、そして当時完全フルモデルチェンジとされたアヴェンタドールでさえも、“カウンタック”であると言えた。今回、レヴエルトとアヴェンタドールを比較試乗して、そのことをドライブフィールからもまずは確信したというわけだ。

アヴェンタドールはカウンタックである。もちろん、カウンタックからアヴェンタドールへの進化幅は相当にあった。けれども、そのステップと今回の変化幅、つまりアヴェンタドールからレヴエルトへのステップは、もはや同じ軸上にはない。同じディメンジョンで測ることのできないものだった。幅の大きさではなく、まさに次元が違う。その意味するところはひとつ「アヴェンタドールがカウンタックである」と思えたというのなら、次元が違っていると感じたことの意味は必然的に「レヴエルトはカウンタックではない」ということだろう。

そう感じさせた最大の理由は、やはり、ミッションの代わりにバッテリーをキャビン真ん中に置いたPHVレイアウトだ。重いパワートレインを可能な限り車体中央に置くという発想そのものはLPレイアウトと変わらない。けれどもそれがミッションであることとバッテリーであることの動的フィールに与える影響は決して小さくないと、今回の比較テストで改めて知ることになった。

ドライブトレインに物理的にまたがり走っている感覚

レヴエルト単独で試乗する限り、それはやはりランボルギーニのフラッグシップに相応しい走りをみせた。何しろカウンタック以来の伝統シザースドアは継承され、ユニシェイプのスーパーカーフォルムを猛牛以外に見紛うことなど決してない。気持ちは乗る前からすでにランボ一色だ。

走り出せば、その強力なパフォーマンス、加速からハンドリング、制動まで全領域における最新のドライブフィールに感動するほかない。その領域はもはや“ランボルギーニらしいかどうか”を超えて、スーパースポーツの新境地に達している。

ステアリングフィールはどのモードを選んでも正確無比でありながら、ドライバーに肉体的な負担をまったく押し付けない。良い意味で“誰でもドライブできる”し“誰もが速く走らせることができる”パフォーマンスに仕上がっている。変速ショックはもはやなく、電気モーターのアシストがかえって心地よいと感じさせ、その先、天まで駆け昇るようなV12のエンジンフィールは凄まじく官能的である。

比べてアヴェンタドールはどうか。レヴエルトで走った同じワインディングロードを同じような速度で駆け抜けようとすると、ステアリングフィールは絶望的に重く感じられ、曲がっていくのがかなり困難に思えた。実はこの日、筆者は右腕を痛めていたから余計だったが、レヴエルトのドライブ時にはまるで痛みを意識することはなかったというのに、アヴェンタドールに乗り換えてハンドルを回した途端、激痛が走ったほどだ。

さらにドライブトレインに物理的にまたがって走っているという感覚がアヴェンタドールでは顕著である。単に重量バランスだけの問題ではなかった。走行中メカニカルに作動するミッションがドライバーの近くにあるということがドライブフィールになんらかの影響を及ぼしていることは間違いない。加えてV12エンジンの回り方はレヴエルトのそれに比べてはっきりと重々しく、そのことが余計にミッションを通じて乗り手の身体へと伝わってくるから、別物だと確信できる。特にワインディングロードのようなテクニカルな一般道の場合、それは顕著で、そこには正しく“カウンタックらしい”と呼ぶべきインプレッションが存在した。

カウンタックの伝統という呪縛から逃れ

ランボルギーニミッドシップ縦置き12気筒の系譜はレヴエルトに引き継がれた。パワートレインはPHVという大きな進化を遂げたが、それは走りにどのような影響をもたらしたのか。アヴェンタドールSVJとの比較を通して明らかにしていこう。
大きな進化を遂げたランボルギーニミッドシップ縦置き12気筒パワートレインは、走りにどのような影響をもたらす?

レヴエルトには、それがない。もちろん、ないからと言ってデキが悪いと言っているのではない。別物なのだ。カウンタックからの伝統には乗っていないという意味だ。

レヴエルトは良い意味でカウンタックの伝統という呪縛から逃れ、ランボルギーニはスーパースポーツの新たな歴史を築こうとしているのだと思う。おそらく、エンジン気筒数以外はほとんど同じシステムを使うテメラリオもまたウラカンはもちろんアヴェンタドールさえも凌ぐ別次元のパフォーマンスをみせ、そのドライブフィールはよりレヴエルトに近づくのではないだろうか?

もしそうなるとすれば、ランボルギーニは“コルタウリ”を目指しつつ新たなブランド創業期を迎えることになる。昨年にブランド60周年を終えたばかり。イタリアに還暦という概念はないだろうが、ランボルギーニは電動化時代においてまず間違いなく“生まれ変わろう”としているのだと思う。

TEXT/西川 淳(Jun NISHIKAWA)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
MAGAZINE/GENROQ 2024年10月号

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ・アヴェンタドールSVJ

ボディサイズ:全長4943 全幅1933 全高1136mm
ホイールベース:2700mm
乾燥重量:1525kg
エンジンタイプ:V型12気筒DOHC
排気量:6499cc
最高出力:566kW(770PS)/8500rpm
最大トルク:720Nm(73.4kgm)/6750rpm
トータル最高出力:─
トランスミッション:7速AMT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキフロント:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤ&ホイール:前255/30ZR20 後355/25ZR21
0-100km/h加速:2.8秒
最高速度:350km/h

ランボルギーニ・レヴエルト

ボディサイズ:全長4947 全幅2033 全高1160mm
ホイールベース:2779mm
乾燥重量:1772kg
エンジンタイプ:V型12気筒DOHC
排気量:6499cc
最高出力:607kW(825PS)/9250rpm
最大トルク:725Nm(73.9kgm)/6750rpm
トータル最高出力:747kW(1015PS)
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキフロント:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤ&ホイール:前265/35ZR20 後345/30ZR21
0-100km/h加速:2.5秒
最高速度:350km/h

【問い合わせ】
ランボルギーニ カスタマーセンター
TEL 0120-988-889
https://www.lamborghini.com/jp

2011年のジュネーブ・ショーでワールドプレミアされた「アヴェンタドール」。ムルシエラゴに続くランボルギーニ伝統の12気筒ミッドシップだ。

新車時より高いけど「ランボルギーニ アヴェンタドール」が欲しい、しかも初期型【今買うなら、ひょっとしてコレちゃう?34台目】

クルマの流行廃りにあわせて大きく動く中古車市場。もしも中古車ライフを送るなら、その波を正確に捉えてお得な買い物をしたいものだ。そんな時代の羅針盤たるべく、西川淳が「今」買いのクルマを紹介する。第34回は「レヴエルト」の登場によって、ランボルギーニの先代フラッグシップとなった「アヴェンタドール」、その初期型である。

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