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Mercedes-AMG GT Coupé
メルセデスAMGのピュアな高級スポーツカー
いつものようにカーセンサーEDGEで車名を見つけ出し、全国で販売されているタマを車両本体価格の安い順にソートする。700万円台から見つかった! 10年前に新車で1600万円くらいしたから、半値以下。
新車1600万で10年落ち半額の800万という相場だけを見て安いか高いかと問われれば「高い」と答えるけれど、相手はメルセデスAMGのピュアな高級スポーツカーとくれば、「買いごろちゃうん?」と思ってしまう。ことに先だってモデルチェンジし、今や3000万円級のラグジュアリークーペになってしまったとなれば、スポーツモデルとしてよりピュアな先代モデルは俄然、注目に値するモデルとなった。
「メルセデスAMG GT」である。初代C190は2014年秋にワールドプレミアされ、翌年半ばに日本市場にも導入された。SLS AMGの後継モデル、という見立ては誤りで、ターゲットは完全に「ポルシェ 911」マーケット。それゆえ1600万円〜という価格となったわけだ。
超ロングノーズ&ショートデッキがいい!
そう考えると2023年にモデルチェンジした第2世代C192は、今度こそリアル911イーターになったとも言える。シートは+2で実用性が増し、ライドコンフォートも上がった。当初ラインナップされた「GT 63」は3000万円級でポルシェ 911 ターボイーターだろうし、今後は安いグレードの登場もあるかも知れない。
そしてポイントはまさにそこにあった。C190からC192への進化をどう考えるか、である。個人的には“残念”だった。なぜなら初代のスパルタンさが薄まり、より快適なグランドツアラーに転じたから。もちろん911だってそういう進化を辿っているのだから、何が違うのよ?と言われそうだけれど……。
初代はV8エンジンをフロントミドに置き、トランスミッションをリヤアクスルに置く(つまりトランスアクスル)、AMG GT専用のプラットフォームだったのだ。ところが2代目はSLと姉妹車となったことで、よりコンサバなFR仕立てとした。一見、スタイリングはキープコンセプトの正常進化に見えるけれど、中身はまるでキープじゃない。そのことは真横からの初代と2代目のデザインを見比べてみると分かりやすい。初代はフロントミドなのではっきりとプレミアムレングスが長い。そこが異様に映り、超ロングノーズ&ショートデッキというユニークな存在感を醸し出していた。
2代目はフツウだ。もちろんパフォーマンスそのものはお役通りに向上している。その上で乗り心地も良くなった。良きグランドツアラーになった。快適で高性能、カタチもほとんど同じ。何の文句があろう! マニア相手でなければ……。
ニンブルなハンドリング、硬質なライドコンフォート
そこで初代GTに注目なのである。特に筆者はへそ曲がりで天邪鬼だから、最初期の、いわゆるパナメリカーナグリルでない仕様を好む。最新モデルは猫も杓子も口がでかく威張って見える。そろそろ鬱陶しい。自分で選ぶクルマくらい、少し控えめな表情を選びたいと思うようになっている。あえて世の中の逆を選ぶ楽しみ、というあたり、昔ながらの“マニアのやり口”だろう。
というわけで、ちょっととぼけた感じの初期モデル、年代で言うと2015〜17年あたりだけれど、グリルを後期仕様に変えた“お節介仕様”も良く見かけるのでご用心。好きなら別に構わないけれど!
一番安いグレード(GT)で十分だ。フロントミド特有のニンブルなハンドリングや、硬質なライドコンフォートは、現代のメルセデスモデルからはほとんど消え失せた特徴で、それを味わえるだけでも貴重だろう。
800万円で探せば2万km台も
さすがにメルセデスだけあって、距離を走った個体が多い。700万円代で探そうとすると軒並み5万kmオーバーだ。それでも800万円で探せば2万km台も見つかる。多走行な個体でもディーラーによる整備記録(特にパワートレイン、オルタネーター、エアコンあたり)が十分に残っていれば、ひとまず安心して乗れると思う。
シルバーあたりの地味な色合いを普段乗りに。そしてタマにはクローズドコースへ。初代メルセデスAMG GTはこれから益々、マニアックな人気を得ていくだろう。