【2025年大予言】マニュアルギアボックスの復権はそこまで来ている

「クルマでするエクササイズ」マニュアルギアボックスの復権【2025年自動車業界大予言】

パガーニ ウトピアのコクピット
パガーニ ウトピアのコクピット
毎年なんだかんだと波乱が巻き起こる自動車業界。2024年の年初に誰がホンダと日産の提携話を予想しただろうか。2025年もまた予想もしない事件が巻き起こるのであろう。混沌とした時代を生き抜くジャーナリストが2025年の出来事をする予言。

クルマ運転元年になって欲しい

パガーニ ウトピア ロードスター
パガーニ ウトピア ロードスター

「2025年はこうなる!」なんてあんまり楽しくなりそうにもないことを書くのもどうかと思うし、ここはやっぱり「2025年はこうなってほしい!」が良いのではないでしょうか、というわけで……。

いよいよ自動車の本質(=移動の手段であること)に真正面から向き合い、近未来生活で期待される機能を創造することで新たな巨大市場を形成しようと、世界の大企業や国や地域がその覇権を競っている、なんてことあたりが今、自動車産業界の界隈で起こっていることだ。

20世紀的なクルマ好きにとっては、この先まずまずつまらないことになりそうで、無駄な性能やドライビングファンなんてもう要らない、ハードよりソフトが大事とばかり、また違う種類のクルマ好きがきっと生まれることになるのだろう。

などと、諦めてはいけない。その反動もやっぱり出てくるのではないか。いや、出てきてくれ!というわけで、フェラーリがいよいよフルバッテリー駆動モデルを出す2025年だからこそ、いま一度“クルマ運転元年になって欲しい”と思うわけだ。電気馬や電気牛も楽しい乗り物であることを期待しつつ。

最高に運転する喜びを実感できる装備

パガーニ ウトピアのシフトノブ
パガーニ ウトピアのシフトノブ

とはいえ人間の判断を減らし自動化へと邁進する時代の動きには逆行する。真逆だ。そんなこと、株式を公開し(死亡)事故ゼロを標榜するマトモな自動車メーカーが真剣に取り組んでくれるはずもない。しかし、マーケットの端々で実際に起きていることは、クルマを運転する楽しさを再確認した、またはしようとする動きであったりする。さしずめ運転を人間の手に取り戻せ!レジスタンスのようである。

その第一歩は3ペダルマニュアルギアボックスだ。いま、ハイパーカーの世界では3ペダルMTへの注目が集まっている。パガーニは顧客からの要望に応じる形で「ウトピア」に3ペダル仕様を追加で開発し、実に7割が選択するらしい。ゴードン・マレーでは3ペダルと2ペダルの両方を最初から設定したが、2ペダルを選ぶ人が“いなさ過ぎ”て、とうとう3ペダルだけにしてしまった。

運転する喜びを実感できる装備として、マニュアルギアボックス以上に重要な役割を果たすものはないと思う(ちなみに踏み間違え防止という観点でのMT復活には、理屈はわかるけれど賛成できません)。運転する喜びとは機械を操作し思い通りに動かす、または動かせるようになる過程である。

機械の操作は当然ながら手足を駆使することであり、エクササイズ的な要素が多分にあるだろう。そうしたとき、ハンドル操作以外にも手を使え、左足にもブレーキペダル以外に積極的な役割を果たしてもらえる3ペダルMTは、運転に全身を使うという意味においてエクササイズ効果は最大となる。頭、腰、手足の完全に調和し、クルマが思いどおりに動いたとき、クルマ好きは他で得難い幸福を感じるというわけだった。

世界にも広まってほしい

ランボルギーニ ウラッコ
ランボルギーニ ウラッコ

マニュアルギアボックスの復権。嬉しいことにレクサスはLBXというコンパクトSUVにマニュアルギアボックスを設定してくれた。GRヤリスというリソースがあったからとはいえ、フツウのプレミアムブランドならそんな仕様を設定はおろか企画すらしない。思い返してみて欲しい。プレミアムブランドにおいてマニュアルギアボックスの、スポーツカーではなくSUVは過去にどれほどあっただろうか?思い出せる限り、ポルシェカイエンだけだ。

プレミアムではないけれどマツダもまたSUVに限らずMT車をたくさん出してきたブランドだ。しかも「ロードスター」というMTを楽しめる世界第一級のモデルを擁する。そのほか、国産車にはMTのスポーツモデルが多く残っていて、まさに反2ペダル革命が進行中なのだった。

「今がピーク」ではなく、さらに増えてほしいと願う。そしてその動きが世界にも広まってはくれないだろうか。フェラーリやランボルギーニがもう一度、ハイパーカーではなく、マニュアルギアボックス仕様に価値を見出して入門用スポーツモデルを新たに企画する、とか……。ディーノよ、ウラッコよ、もう一度!(名前は違っていいのよ)

私自身は25年、還暦を迎えるので“クルマ哲学”という新たな取り組みを始めたいと思っています。乞う、ご期待。

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著者プロフィール

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西川 淳