モテグルマの代表格「アストンマーティン ヴァンテージ」最新型に試乗

これを乗りこなせたら間違いなくモテる「アストンマーティン ヴァンテージ」最新モデルに試乗

2005年デビューのコンパクトな2シータースポーツカーのシリーズが現在の「ヴァンテージ」の立ち位置だ。
2005年デビューのコンパクトな2シータースポーツカーのシリーズが現在の「ヴァンテージ」の立ち位置だ。
アストンマーティンの誇るピュアスポーツカー「ヴァンテージ」の最新モデルに試乗した。ベビーアストンと呼ばれた大ヒットモデルの最新型は、果たして日本のワインディングでどのような走りを見せたのか?

Aston Martin Vantage

後輪駆動の最高到達点

トランスアクスル式の8速ATを介して後輪を駆動するパワートレインが魅力だ。
トランスアクスル式の8速ATを介して後輪を駆動するパワートレインが魅力だ。

「ヴァンテージ」はもともとアストンマーティンの歴代モデルの高性能仕様に与えられてきたサブネームである。第二次大戦後の1950年、DB2の時代には登場していたから、今ではもうミニとクーパーのように一体化しているのが当たり前と捉えられているが、現在のヴァンテージは、最初から「ヴァンテージ」として2005年にデビューしてアストンマーティンを文字通り復興させたコンパクトな2シータースポーツカーのシリーズを指す。

その新生V8ヴァンテージ(後からV12モデルが追加されるので区別するのが通例)の初代モデルは、ロードスターやV12ヴァンテージなどを含めて2017年までの間におよそ2万5000台が生産されたという。

昔の話をちょっとだけすると、V8ヴァンテージやDB9(2004年)の登場以前の、波乱万丈の約90年間で(アストンマーティンは1913年創立)、アストンマーティンの総生産台数はたったの1万3000台程度と言われている。V8ヴァンテージが最も成功したアストンマーティンと言われるゆえんである。その新生ヴァンテージは2018年にモデルチェンジし、現行型は2世代目である。今回フルモデルチェンジと言ってもいいほど大規模なマイナーチェンジを受けたのが新型ヴァンテージである。

メルセデスAMG由来のV8ツインターボを搭載

実際、単なるフェイスリフトではないことは一見して明らかである。従来型では猛禽類か爬虫類のような精悍な印象だったフロント部分はグリルが大型化され、はっきりアストンと分かる伝統的なファミリーフェイスに一新された。エンジンのパワーアップに伴って必要になった冷却性能向上は、このグリルとサイドインテーク、そしてリアの派手なディフューザー形状などに表れている。タイヤサイズもさらに拡大、全幅も30mm広がっているという。新型は精悍というより獰猛である。

注目は例によってフロントバルクヘッドにめり込むように搭載された4.0リッターV8ツインターボである。10年ほど前から提携関係にあるメルセデスAMG由来のV8ツインターボは、今回大径タービンの採用やカムプロファイルの変更などによって、489kW(665ps)/6000rpmと800Nm/2000~5000rpmに出力・トルクともに大幅に引き上げられている。

従来型は375kW(510ps)/6000rpmと685Nm(69.8kgm)/2000~5000rpmだったから桁違いのパワーアップである。もちろんカーボンプロペラシャフトとトランスアクスル式の8速ATを介して後輪を駆動するパワートレインには変わりはない(2705mmのホイールベースも不変)。今時、これほどのパワーを後2輪駆動で使いこなせるものだろうか、と恐れを抱くのも当然のスペックだ。ちなみに0-100km/h加速は3.5秒、最高速325km/hと発表されている(従来型は3.6秒と314km/h)。

より研ぎ澄まされたステアリングの精度

非の打ち所がないクールでエレガントなスーツをまとっているようなアストンマーティンは、必要とあらば野性味を剥き出しにする硬派であることはご存知の通り。だが新型ヴァンテージは一般道ではまったく猛々しさを感じさせない。街中や高速道路での乗り心地も決して野蛮ではない。ノーマルに当たるスポーツモードでもはっきりと締め上げられていることはもちろんだが、ラフなハーシュネスを感じさせず、以前よりも乗り心地は洗練されている。またスポーツ+やトラックモードで路面が荒れた山道に挑むと、従来型では跳ねて接地性が失われることもあったが、新型はより寛容になったようで大入力も平気な顔で受け止める。

いっぽうでステアリングの精度はより研ぎ澄まされて、自信をもって道幅いっぱいに使うことができる。DTXと呼ばれる新しいビルシュタイン製可変ダンパーや横方向にブレースを加えて強化した前後サスペンションなどが奏功しているに違いない。大径ターボで各段にパワーアップしたエンジンもまるで“ドッカン”型ではなく、その上従来に比べてトップエンドの切れ味が増している。

とはいえ強力無比なパワーに対する2本のタイヤは簡単にグリップを失う。新型は「メルセデスAMG GT」のようにトラクションコントロールの介入レベルを9段階に調節可能なATC(アジャスタブル・トラクションコントロール)を装備することも特徴だが、そのダイヤルには一切触れずとも、しかも普通に右足を踏み替えてスタートしても、スロットルペダルを深く踏み込めばトルクが迸る3000rpmぐらいで後輪は易々と空転を始めるのだ。

武闘派の本性を露に

電制デフをはじめとするシステムのおかげでホイールスピンは過度ではもちろんないし、右足の動きが後輪に伝わるレスポンスは素晴らしく、コントロールするのに心配は要らないが、ドリフトマシーンとしての能力を解き放つのはやはりクローズドコースに持ち込む必要がある。自然で正確なステアリングレスポンスや切れ味鋭い回頭性は、Eデフやベクタリングコントロールの賜物だろうが、それを人工的に感じさせないところに後輪駆動スポーツカーの老舗としてのプライドがあると言えるだろう。

フロントエンジンの後輪駆動2シータークーペでここまでできるのか、と感心する。エレガントに流すこともできるが、ひとたび鞭を入れれば、武闘派の本性を露にするのがアストンマーティン「ヴァンテージ」である。

REPORT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/平野陽(Akio HIRANO)

SPECIFICATIONS

アストンマーティン・ヴァンテージ

ボディサイズ:全長4495 全幅1980 全高1275mm
ホイールベース:2705mm
車両重量:1745kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:4.0リッター
最高出力:449kW(665PS)/6000rpm
最大トルク:800Nm(81.6kgm)/2000-5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前275/35ZR21(9.5J) 後325/30ZR21(11.5J)
0-100km/h加速:3.5秒
最高速度:325km/h
車両本体価格:2690万円

【問い合わせ】
アストンマーティン・ジャパン・リミテッド
TEL 03-5797-7281
https://www.astonmartin.com/ja

「アストンマーティン ヴァンテージ AMV24 エディション」のエクステリア。

2024年スパ24時間優勝記念で“24”絡みの24台限定車「アストンマーティン ヴァンテージ AMV24 エディション」が登場

アストンマーティンは、2024年のスパ・フランコルシャン24時間レースにおける「ヴァンテージ GT3」の総合優勝を記念し、24台限定のスペシャルモデル「ヴァンテージ AMV24 エディション」を発表した。デリバリーは2025年前半に開始される。

キーワードで検索する

著者プロフィール

高平高輝 近影

高平高輝

大学卒業後、二玄社カーグラフィック編集部とナビ編集部に通算4半世紀在籍、自動車業界を広く勉強させてい…