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McMurtry Speirling
トップギア・テストトラックの記録も更新

マクマートリー・オートモーティブは、驚くべき方法でフル電動ハイパートラックカー「スピアリング」を天地逆転で走行させた。独自開発されたファンシステム「ダウンフォース・オン・デマンド」により、特製の回転式リグのフロアに、スピアリングを“貼りつける”ことに成功した。この技術デモンストレーションは、英国・グロスターシャー州にあるマクマートリーの本社で行われ、従業員と独立審査員が参加した。
また、同じ車両が英国・サリー州の「トップギア・テストトラック」のラップレコードを3.1秒も更新したことも発表。これまでの記録保持者は、2004年型「ルノー R24」F1マシンだった。スピアリングはグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード・ヒルクライムのアウトライトレコードとラグナセカ・コークスクリュー・ヒルクライムのラップレコードも保持している。
スピアリングは、英国で最も成功した実業家の故デイビッド・マクマートリー卿が構想。マクマートリー卿は2024年12月、スピアリングの成功の数々を見届け、他界した。スピアリングは様々なテストプログラムを経て、2026年に限定100台をデリバリーする予定だ。
停止状態でも最高のダウンフォースを発揮

F1マシンなどの高性能レーシングカーは、理論的には逆さまに走行することが可能だと以前から議論されてきた。これは、高速走行時に発生するダウンフォースレベルの大きさによる。しかし、あまりにも荒唐無稽だったため、これまで試みられたことはなかった。
従来の車両はエアロダイナミクスを利用しているため、高速域でのみダウンフォースを発揮する。しかしマクマートリーが特許を取得したファンシステム「ダウンフォース・オン・デマンド」を搭載したスピアリングは、他のハイパーカーやレーシングカーとは異なり、特に低速域において格段に高いグリップ力で加速、ブレーキング、旋回を行うことができるという。重要なのは、このダウンフォースがたとえ停止状態であっても発揮できるということだ。
今回、テストドライバーを担当したのは、マクマートリー・オートモーティブのマネージングディレクターを務めるトーマス・イェーツ。彼はスピアリングをゆっくりとスロープへと進め、専用のリグへと乗り上げさせた。その後、プラットフォームのフロアが回転し、スピアリングを完全に反転させた。
ダウンフォース・オン・デマンドは床下に十分な真空状態を作り出し、重力を上まわる力でスピアリングを逆さまの状態に保持したのである。さらに、完全に天地逆転後、イェーツはまったく支えのない状態でスピアリングを前進させた。記録挑戦を終えたイェーツは、今回の天地逆転走行成功について、次のようにコメントしてた。
「今日は、本社での素晴らしい1日を過ごすことができました。シートベルトを締めて逆さま走行をするのは、まったく非現実的な体験でした(笑)。ファンシステムが発生させる、2000kgのダウンフォースは本当に驚くべき代物です。私たちのスピアリングが世界中で記録を更新し続けている理由を改めて示すことができましたね」
「今回のデモンストレーションは、小型の専用リグを使ったエキサイティングな概念実証でした。これはおそらく可能性の始まりに過ぎません。もっと長い倒立型コースや適切なトンネルがあれば、さらに遠くまで走れる可能性があるのです。マクマートリー・オートモーティブのチーム全員、特に車両とファンシステムの設計に携わったエンジニアたちに、心からの祝福と感謝を捧げます」