フェラーリ、Iconaシリーズ最新作「デイトナ SP3」のスタイリングを解き明かす

フェラーリの最新限定モデル「デイトナ SP3」デビュー! スタイリング編 【動画】

1967年のデイトナ24時間表彰台独占へのオマージュ、限定モデル「フェラーリ デイトナ SP3」を発表
「Icona」シリーズの新モデルとして、デイトナ SP3 が誕生。伝説的勝利を飾ったマラネッロのスポーツプロトタイプからインスパイアされた限定モデル。
2021年の「フェラーリ・フィナーリ・モンディアーリ」を開催中のムジェロ・サーキットにおいて、フェラーリ モンツァ SP1、SP2に続く「Icona」シリーズに加わる限定モデル「デイトナ SP3」が初披露された。デイトナ SP3は、1960年代に活躍したスポーツプロトタイプへのオマージュが込められたデザインが採用されている。ここではデイトナ SP3のスタイリングを解説。

Ferrari Daytona SP3

伝説のデイトナ24時間レースをオマージュして開発されたデイトナSP3

1967年のデイトナ24時間表彰台独占へのオマージュ、限定モデル「フェラーリ デイトナSP3」を発表
1967年のデイトナ24時間レースにて、フェラーリの330 P3/4、330 P4、412 Pが1-2-3フィニッシュを達成。この伝説的なレースをオマージュしてデイトナ SP3は開発された。

1967年2月6日、この年の国際スポーツカー選手権・開幕戦デイトナ24時間レースにおいて、フェラーリがトップ 3を独占。1位の「330 P3/4」、2位の「330 P4」、3位の「412 P」が横一列に並び、フォードのホームサーキットでチェッカーフラッグを受けたシーンは伝説となっている。

この3台は、330 P3の最終進化系とも言えるレーシングカーであり、チーフエンジニアのマウロ・フォルギエリによってエンジン、シャシー、エアロダイナミクスが大幅に改良されていた。330 P3/4 は1960年代のスポーツプロトタイプの精神を完璧に象徴。60年代は、今ではクローズドホイールレースの黄金期として知られており、何世代ものエンジニアやデザイナーが時代を超えてお手本としている。

新たにIconaシリーズとして開発された「デイトナ SP3」の車名は、この伝説の1-2-3フィニッシュをイメージし、モータースポーツにおける比類ない地位をフェラーリが獲得する上で貢献したスポーツプロトタイプにオマージュを捧げている。

デイトナ SP3は、2021年「フェラーリ・フィナーリ・モンディアーリ」が開催されたムジェロ・サーキットにおいて初公開された。2018年にモンツァ SP1、SP2 で始まった Iconaシリーズに加わる限定モデルとなる。

デイトナ SP3 のデザインを支えるのは、対照的な要素が生み出す美しい相互作用。見事に彫り込まれた肉感的なフォルムとシャープなラインが交錯するフォルムは、エアロダイナミクスの重要性が急速に高まっていた時代の 330 P4や350 Can-Am、512 Sといった、レーシングカーのデザインに通じている。

着脱可能なハードトップを備える「タルガ」ボディという大胆な選択も、スポーツプロトタイプの世界に倣っている。これにより、ドライビングプレジャーに加えて、 使いやすいパフォーマンスも兼ね備えたモデルとなった。

ラ フェラーリ以来の完全コンポジットシャシーを採用

1967年のデイトナ24時間表彰台独占へのオマージュ、限定モデル「フェラーリ デイトナSP3」を発表
1960年代のスポーツプロトへのオマージュとして開発されたデイトナ SP3は、当時のレーシングカーと同じようにタルガトップが採用された。

デイトナ SP3 は技術面でも1960年代のレースで採り入れられていたエンジニアリング手法からインスパイアされている。自然吸気V12エンジンをリヤミッドに搭載するレーシングカーの典型的レイアウトを採用。フェラーリを象徴するエンジン形式を採用したこのパワーユニットは、フェラーリ史上最高の840cvを発生し、最大トルクは697Nm、最高回転数は9500rpmにまで達する。

シャシーは F1の技術を活用した完全なコンポジット製。この技術がロードカーで使われたのは、ラ フェラーリ以来となる。シートはシャシーと一体化しており、重量削減とともにレーシングカーに似たドライビングポジションを実現した。

エアロダイナミクスの研究・開発において、インスピレーションのベースとなったマシンと同様、純粋にパッシブ式空力ソリューションのみを活用して、効率を最大化することを目指している。アンダーボディから低圧の空気を抜き出すチムニーなど、これまでにないソリューションを採用することで、デイトナ SP3は可動式の空力デバイスを使用せずに、フェラーリ史上最も空力効率に優れたモデルとなった。

こうした革新的技術を巧妙に取り入れたことで、0-100km/h加速は2.85秒、0-200km/h加速は7.4秒を達成。胸躍るパフォーマンス、究極のセットアップ、そして聞く者を陶酔させるV12 サウンドが、これまでにないドライビングプレジャーを実現している。

1960年代をオマージュしながらもモダンな佇まい

1960年代のレーシングカーのスタイリングをインスピレーションしながらも、デイトナ SP3は紛れもなく独創的かつモダンなフォルムをたたえている。その彫刻的なインパクトは、スポーツプロトタイプの官能的なフォルムをオマージュし、完全に現代的な形で蘇らせた。これほどの野心的なデザインには、チーフデザインオフィサーのフラヴィオ・マンゾーニと、フェラーリスタイリングセンターのチームによる綿密な計画と実行力が必要不可欠だった。

ラップアラウンド式のウインドスクリーンを先端とするデイトナ SP3のキャビンは、官能的な彫刻に埋め込まれたドームのようにも見え、その両側にしなやかなフェンダーが大胆に立ち上がっている。クルマ全体のバランス感を強調するひとつの塊から削り出されたようなフォルムには、これまで高く評価されてきたイタリアのコーチビルドの技が最高の形で色濃く表現された。

頂点がふたつあるフロントフェンダーは、512 Sや712 Can-Am、312 Pといった過去のフェラーリ・スポーツプロトタイプの彫刻的エレガンスを参考にした。ホイールアーチ形状はサイドボディのフォルムを効果的に暗示。フロントでは構造を担い、タイヤ側面の丸い形に完全には添っていないため、タイヤとタイヤハウスを強く結びつけている。サイドボディ後部はほっそりとしたウエストから外へ張り出し、リヤタイヤ前方を包み込む屈強なふくらみへと盛り上がってからテールに向かって再び絞り込まれており、これが斜めから見た姿に力強いダイナミックな印象を与えている。

エアボックスが内蔵されたバタフライドア

もうひとつ鍵となる要素がバタフライドアだろう。ここにはエアボックスが内蔵されており、サイドに搭載するラジエーターへとフレッシュエアを導く。結果的に生まれた彫刻的フォルムによって、ドアに明確なショルダーが存在し、そこに配置されたエアインテークがウインドスクリーンの垂直なカットと視覚的につながっている。

ドアの前端はフロントホイールアーチの後部を形成しており、ドアの特徴的な表面はフロントタイヤから出るエアフローの制御にも役立っている。この表面の処理もデイトナ SP3のデザインにインスピレーションを与えた512 Sといったレーシングカーを強く想起させるものだ。

フェンダーミラーの位置はドアの前方からフェンダーの頂点へ移動。これも1960年代のスポーツプロトタイプを思わせる処理となる。この位置が選ばれたのは、視認性を高めドアインテークへの気流に及ぼす影響を減らすため。ミラーのカバーと支柱はこれに特化したCFD(数値流体力学)シミュレーションを行い、インテークへの流れを阻害しない完璧な形に整えられた。

斜め後方から見た姿はさらに重要で、デイトナ SP3の独創的なスタイリングが完全に露わになる。ドアのボリュームは彫り込まれ、特徴的なフォルムを形成。リヤフェンダーの屈強なふくらみと組み合わさって、くびれたウエストのようなまったく新しいルックスを生み出している。

ドアはフロントホイールアーチの面を延長させて堂々たるリヤとの釣り合いを取り、サイドボディのボリュームを視覚的に逆転。よりキャブフォワードな印象を与えている。サイドラジエーターの搭載位置が変わったことで、このアーキテクチャーをスポーツカーに適した形で採用することが可能になった。

ポップアップ式ヘッドライトを思わせるデザイン処理

1967年のデイトナ24時間表彰台独占へのオマージュ、限定モデル「フェラーリ デイトナ SP3」を発表
マッシブに盛り上がった左右のフロントフェンダーと、往年のスーパーカーを彷彿とさせるポップアップ式ヘッドライトに酷似したデザインを採用。

デイトナ SP3のフロントで最も印象的なのが左右の力強いフェンダー。外側と内側に頂点があり、後者はボンネット上の2基の排気口へと落ち込み、フェンダー幅を広く見せている。外側の頂点は視覚的ボリューム感を生み、内側の頂点は空力的な役割を果たす効果が与えられた。

この関係はデイトナ SP3のスタイリングとテクノロジーの密接な結びつきを強調。フロントバンパーには広いセンターグリルが設けられ、これを挟む2本のピラーと上下に並ぶ水平ブレードをバンパーの外縁が取り囲む。

ヘッドライト・アッセンブリーは上部の可動パネルが特徴で、初期スーパーカーのポップアップ式ヘッドライトを想起させる。これはフェラーリの大切な伝統的要素であり、車体にアグレッシブでミニマリストな印象を与えている。2基の小型バンパーは、330 P4をはじめとするスポーツプロトタイプのエアロフリックを参考にしており、ヘッドライト外縁部から出て、フロントをいっそう表情豊かにする効果を持つ。

リヤのボディワークのハイライトは、やはりフロント同様にフェンダーの力強い外観。2基の頂点のテーマが繰り返され、空力的な排気口が3次元的フォルムをいっそう印象深くしている。コンパクトなコクピットは後部が絞り込まれ、フェンダーと共にマッシブなテールを形成。その中央には330 P4をインスピレーションとするバックボーンエレメントが存在する。このバックボーン末端には、自然吸気V型12気筒エンジンがその姿をすべて露わにしている。

リヤを締めくくるのが複数の水平ブレード。軽快かつラディカルで、一体構造のような空間を生み出し、未来的であると同時にフェラーリのDNAを感じさせる。テールライト・アッセンブリーはスポイラー下部の輝く1本の水平バーを形成し、ブレードの1列目に組み込まれている。ディフューザー上部中央にはツインテールパイプが配置され、アグレッシブなキャラクターを強めつつワイドに見えるデザインを引き締めている。

GTの快適性とミニマリストなデザインを追求

1967年のデイトナ24時間表彰台独占へのオマージュ、限定モデル「フェラーリ デイトナSP3」を発表
現代のグランドツアラーに求められる快適性を追求しながらも、インテリアにはミニマリストをコンセプトに掲げ、機能的かつ現代的なデザインが採用された。

デイトナ SP3ではコクピットも、330 P3/4や312 P、350 Can-Amといった歴史的なフェラーリをインスピレーションの元にしている。デザイナーは高性能シャシーを出発点に細心の注意を払って洗練された空間を作り出した。

また、現代的なグランドツアラーの快適性と洗練性を実現しつつ、ミニマリストなデザインを追求。そうした哲学はスタイリングの基本ルールの背景にも見られる。例えばダッシュボードはミニマリストで機能的でありながら、極めて現代的な印象が与えられた。スポーツプロトタイプではシートクッションが直接シャシーに接着されていたが、それを現代的なシートに変貌させてボディと一体化。周囲のトリムとのシームレスな質感の連続性を作り出した。

ウインドスクリーンをはじめとするエクステリアの要素も、インテリアのアーキテクチャーによい影響を与えることになった。横から見ると、ウインドスクリーンのヘッダーレールにあるカットがコクピットを2分割する垂直面を作っており、メーター類を収めたダッシュボードの機能的エリアとシートエリアとを切り離している。このアーキテクチャーは極めてスポーティでありながら非常にエレガントでもあるという難題を巧妙に解決した。

デイトナ SP3のインテリアは、レーシングカーに典型的なスタイリング要素を活かしてドライバーとパッセンジャーがくつろげるドライビング環境の構築を目指した。主眼となったのが、ダッシュエリアと2個のシートを明確に分離し、キャビンの横幅を広く見せること。シートはシームレスに連続する質感の一部となっており、そのトリムはドアにまで拡大。スポーツプロトタイプのエレガントな機能性を再現した。こうしたトリムの延長はドアを開けたときに見えるシルにも及んでいる。

ダッシュボードも同じ哲学に従ってデザインされた。トリムはクォーターガラスまで広がり、ウインドスクリーンと接続するエリア全体を包み込んでいる。ほっそりと引き締まったダッシュボードは内張りの中に浮いているようにも見える。そのスタイリングテーマは2層に分かれており、トリムで覆われた上部シェルはすっきりとした彫刻的外観で、素材と機能を分割する明確なラインで下部と分離している。ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)のタッチコントロールは、すべてこのラインより下に集められた。

シャシーと一体化された固定式ドライビングシート

1967年のデイトナ24時間表彰台独占へのオマージュ、限定モデル「フェラーリ デイトナSP3」を発表
人間工学的なラップアラウンド型デザインを採用したシートはレーシングプロトタイプをイメージし、シャシーと一体化されている。

シートはシャシーと一体化しているため、高性能マシンと同じ人間工学的なラップアラウンド型デザインを採用。同時に徹底的なディテールへのこだわりも追及された。左右のシートの素材によるつながりや周囲のトリムへのテーマの拡張、ボリューム感による効果などは固定式シートだからこそ可能となった。

ドライビングポジションの調整はペダルボックスを動かして行う。また、コクピットのテクニカルエリアと乗員エリアを明確に切り離したことで、シートのボリュームをフロアまで拡大することが可能になった。ヘッドレストもレーシングカーではシートと一体化しているのに対し、デイトナ SP3では独立している。

シートを固定してペダルボックスで調整するアーキテクチャーの採用により、シートがリヤのトリムと完全につながってコクピットが視覚的に軽快な印象となった。

ドアパネルのデザインもコクピットの幅を広く見せることに貢献。カーボンファイバー製パネルにトリムエリアをいくつか加え、肩の高さにはレザーパッドを設置。スポーツプロトタイプとの関連を感じさせると共に、ラップアラウンドの印象を強めている。

センタートンネルには、左右のシートを結びつけるトリム下にトレードマークのブレードを配し、両端に機能的要素を配置した。前方にあるシフトゲートはSF90 ストラダーレからラインナップモデルに再び導入されているが、デイトナ SP3では高い位置にあるため、周囲より上に浮いているような印象を与える。ストラクチャーの末端はカーボンファイバー製センターピラーで、これがダッシュボード全体を支えているように見える効果を持つ。

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