ランドクルーザーとディフェンダー、最高のオフロードモデルはどちらか!?

ランドクルーザー vs ディフェンダー、宿命のライバル対決! ガチンコ勝負の行方をレポート

トヨタ ランドクルーザー ZXとランドローバー ディフェンダー 110 X D300のサイドビュー
世界中の過酷なオフロードを相手にして、その絶大な信頼性はすでに神話の域に達しているトヨタ ランドクルーザー。新生となったランクルのパフォーマンスはいかなるものか? 街中を中心に試乗した。
世界中のどんな道でも走破し、人々の生活を支える使命を持った2台。それが新型ランドクルーザーとディフェンダーである。では都会の街中でこの2台を見比べたときに、我々は何を感じるのだろうか? オリンピックの喧騒も落ち着き、日常を取り戻した東京で改めて試乗してみた。

Toyota Land Cruiser ZX × Land Rover Defender 110 X D300

日英を代表するオフローダー、譲れぬプライド

トヨタ ランドクルーザー ZXの走行シーン
「ランクル」の愛称で知られるトヨタ ランドクルーザー。走る道を選ばない万能性能、アーバンシーンでも存在感を放つエクステリアデザインなど、オフローダーのトップランナーを街中で試す。試乗車の装着タイヤはダンロップ・グランドトレック。

先日、トヨタ ランドクルーザーのオフロード試乗会に参加し、ランクルのとてつもない悪路走破性に舌を巻いた(※GENROQ 2021年12月号 94ページの別記事に詳しい)。確信したことは、ランクルのキモはGRスポーツ専用のE-KDSSだということ。前後スタビライザーを電子制御で断続する装備で、これによってオフロードでは関節が外れたかのようなホイールアーティキュレーションを実現し、オンロードではラダーフレームとリヤリジッドアクスルのクルマにありがちな腰砕けの挙動を巧みに抑制する。

GRスポーツ専用と書いた通り、今回試乗したグレードのZXには備わらない。備わらないとどうなるか。フラットネスが失われる。一般道を走行中、ちょっとした路面の不整によって車体が前後にヒョコヒョコと細かく動く。またわずかなステアリング操作によって生じる小さなヨーに対しても車体がグラつく。こうした動きは重量級のラダーフレームシャシーとリヤリジッドである以上、避けられない。同じ構造のメルセデス・ベンツGクラスとて例外ではない。

軽量化と低重心化により、さらなる走行安定性を獲得

トヨタ ランドクルーザー ZXのインテリア
12.3インチのワイドタッチディスプレイを採用。水平基調のインパネデザインは過酷な路面状況時に車両姿勢を把握しやすい配慮だ。7人乗りはガソリン車にのみ設定される。

それでもランクルは、新開発のフレームと、アルミを多用し従来型よりもずっと軽いボディの組み合わせによって、従来型に対し大幅な軽量化(約190kg)と低重心を実現し、フレーム車としては異例に高い走行安定性を獲得した。フレームが高剛性だからこそ組み合わせることができるソフトな足まわりによって、快適性も確保されている。とはいえ構造的にモノコックボディとエアサスを採用する多くのラグジュアリーSUVのようにビシッとした乗り味は出せない。

話をシーソーのように上げたり下げたりして申しわけないが、ランクルのオンロードでの振る舞いは満足のいくものに仕上がっている。まずパワートレインがすばらしい。3.5リッターのV6ガソリンターボと3.3リッターのV6ディーゼルターボの動力性能は、いずれもクラストップレベルの力強さをもっている。

トップエンドまで力強く回る秀逸なガソリンエンジン

トヨタ ランドクルーザー ZXのエンジン
圧倒的なトルクを叩き出す3.5リッターV6ツインターボエンジンを搭載するランドクルーザー ZX。最高出力415ps/最大トルク650Nmを発揮する。

今回試乗したガソリンは特に素晴らしい。低回転域ではガソリンもディーゼルもトルクをもりもりと発揮するが、ディーゼルの力強さが3000rpmくらいから鈍ってくるのに対し、ガソリンはトップエンドまでどんどん力強さを増してくる。

新型のエンジンとトランスミッションは従来型よりも70mm後方(車体中央寄り)にレイアウトされている。その効果は一般道でもハンドリングの良さ、具体的にはクルマの向きの変えやすさとして感じられる。2.5トンに達するクルマだが、ハイペースで旋回しても腰高感による怖さは一切ない。

それだけに前述の理由で縦にも横にもヒョコヒョコする動きが残念でならない。なんとしてでもGRスポーツ以外のグレードにもE-KDSSを設定してほしい。GRはトヨタにとって重要なサブブランドのようで、一番でなければならないのかもしれない。だから発売当初はGRスポーツ専用でも仕方ない。しかしなるべく早い時期にランクルの実力を数段引き上げるE-KDSSを他グレードでも選べるようにしてほしい。

静粛性に優れた新型ディフェンダー

ランドローバー ディフェンダー 110 X D300の走行シーン
ランクルのライバルとして今回試乗に連れ出したのは、ディーゼルエンジンを搭載したランドローバー ディフェンダー 110 X D300。試乗車の装着タイヤはグッドイヤー・ラングラーだった。

相次いで登場したディフェンダーとランドクルーザー300の比較記事は多い。前者がモノコックボディと四輪独立懸架のエアサス(メカサスもあるが)なのに対し、後者はボディオンフレーム、フロント独立、リヤリジッドのアクスルと、両者は実に好対照だ。

日本におけるディフェンダーのトップグレードであるXに搭載される最高出力300ps、最大トルク650Nmの3.0リッター直6ディーゼルエンジンは、内外を問わず最良のディーゼルのひとつだ。アイドリング時にわずかに車内に振動を伝えるものの、走行中は本当に振動が少なく、静粛性も高い。2.0リッター直4ガソリンターボ版よりも静か。ランクルのガソリンは騒音を打ち消す疑似音を発していることもあり、かなり静かだが、それでもディフェンダーディーゼルのほうが静かだ。ランクルのディーゼルははっきりとうるさい。

快適な乗り心地は大きなアドバンテージだ

マイルドハイブリッドが備わるが、積極的にエンジンが止まるタイプではなく、付いていることを実感する機会は少ない。

ディフェンダーのディーゼルはランクルのディーゼルに対し、力強さは同レベルだが、より高回転まで使える、使いたくなる特性をもつ。上まで回しても回転がスムーズで、パワーの落ち込みがマイルドだ。

音と振動の少なさは快適性に直結する。モノコック、四輪独立サスのメリットを活かし、大小の入力をスマートに受け止め、不快な振動を乗員に伝えない乗り心地は、ランクルに対する大きなアドバンテージとなるだろう。

両者がもたらす満足感の量は同じだが、その種類の違いがすこぶる興味深い

トヨタ ランドクルーザー ZXとランドローバー ディフェンダー 110 X D300のリヤスタイル
カッチカチのオフロードモデルにも関わらず、街中に溶け込むモダンなエクステリアを併せもったトヨタ ランドクルーザー ZXとランドローバー ディフェンダー 110 X D300。満足度は共に高いが、目指すベクトルは異なるので悩ましい選択になるだろう。

ディフェンダーは新型で高級路線にキャラ変し、ランクルは豪華装備を充実させつつも、引き続き信頼性、耐久性、実用性を重視し、過酷な場面から生きて帰ってこられることを最優先した。こう書くとディフェンダーがチャラく、ランクルが本格派に思える。そして実際そうかもしれない。だがランクルはその本格派っぷりによって日常的な快適性を犠牲にしているともいえる。

両者がユーザーに与える満足感の総量はほぼ変わらないが、その種類は結構違い、実に興味深い。迷っている人も多いと思うが、両者とも長いバックオーダーを抱えており、当分納車されない。なので両方注文しておいてとりあえず列に加わり、心が決まってから片方にキャンセルを入れてもいいのかもしれない。

REPORT/塩見 智(Satoshi SHIOMI)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2021年 12月号

ランドローバー ディフェンダー 110 X D300のフロントスタイル

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【SPECIFICATIONS】
トヨタ ランドクルーザー ZX(ガソリン)
ボディサイズ:全長4985 全幅1980 全高1925mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:2500kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:3444cc
最高出力:305kW(415ps)/5200rpm
最大トルク:650Nm(66.3kgm)/2000-3600rpm
トランスミッション:10速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後トレーリングリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後265/55R20
燃料消費率(WLTCモード):7.9km/L
車両本体価格(税込):730万円

ランドローバー ディフェンダー 110 X D300
ボディサイズ:全長4945 全幅1995 全高1970mm
ホイールベース:3020mm
車両重量:2420kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:2993cc
最高出力:221kW(300ps)/4000rpm
最大トルク: 650Nm(66.3kgm)/1500-2500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後225/60R20
燃料消費率(WLTCモード):9.9km/L
車両本体価格(税込):1171万円

【問い合わせ】
トヨタ自動車お客様相談センター
TEL 0800-700-7700

ランドローバーコール
TEL 0120-18-5568

【関連リンク】
・トヨタ自動車 公式サイト
https://toyota.jp

・ランドローバー 公式サイト
http://www.landrover.co.jp/

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著者プロフィール

塩見 智 近影

塩見 智

1972年岡山県生まれ。1995年に山陽新聞社入社、2000年に『ベストカー』編集部へ。2004年に二玄社『NAVI』…