ベントレー ベンテイガのハイブリッドとV8を試乗比較インプレッション

ベストバイはハイブリッドかV8か? ベントレー ベンテイガをめぐる「それぞれの評価軸」

ベントレー ベンテイガ ハイブリッドとベンテイガ V8のフロントビュー
ベントレーの電動化を牽引するベンテイガ ハイブリッドと、内燃機によりパワフルで官能的なベンテイガ V8、ベストバイはどちらか?
V8、ハイブリッド、W12と3種類のパワートレインをラインナップするベンテイガ。中でも気になるのがまったく同じ価格であるV8とハイブリッドだ。純エンジンとV6+モーターのドライブフィールの違いを検証しよう。選ぶべきは、どちらなのか。

Bentley Bentayga V8×Bentayga Hybrid

同じシリーズモデルながら好対照の2台

ベントレー ベンテイガ ハイブリッドとベンテイガ V8のスタイリング
ハイエンドSUVの嚆矢となったベントレー ベンテイガは、パワートレインの拡充を続けている。今回はラインナップに加わったハイブリッドモデルと、4.0リッターV8ツインターボの2台を比較試乗した。

ベンテイガ ハイブリッドの価格は主力モデルのベンテイガ V8とまったく同じ2280万円。しかも、バッジを除けば外観は完全に共通と聞けば、ハイブリッドとV8のどちらにするか迷うファンが現れるのは当然のことだろう。ところが、2台のベンテイガはベントレーの世界観をそのまま体現しているものの、パワートレインやシャシーの一部に関する印象は、まったく好対照と言っていいくらいに異なっていたのだ。

まずはベンテイガ ハイブリッドについて記しておくと、当たり前のことながらエンジンが停止した状態での静粛性が際立っている。このくらい騒音や振動と無縁だと、乗り手の心までシーンと静まりかえっていくから不思議なものだ。これはEVに乗っているときにも共通する体験だが、私の場合、これくらい静かで落ち着いた環境に身を置くと、思考回路がクリアになったり感受性がより鋭くなる傾向があって、普段は気づかないことに気づいたり、思いつかないことを思いついたりする。静謐な茶室、もしくは寺で座禅を組んでいるような心持ちといったら、わかってもらえるだろうか。

ハイブリッドは他のモデルとは別次元の静粛性をもつ

しかし、ベンテイガ ハイブリッドで本当にすごいのは、エンジンが掛かってからもそのノイズやバイブレーションのレベルがほとんど変わらない点にある。よくPHVでは「モーター走行時はいいのに、エンジンがかかった途端にがっかりする」ことがあるが、ベンテイガ ハイブリッドでそうした落胆を味わうことはまれ。少なくとも私は、メーターを見ていない限り、エンジンがかかったことに、ほとんど気づかなかった。おそらくベントレーは、ほかのベンテイガとは別次元の騒音対策や制振対策を行ったのだろう。

このモーターの威力はもちろん動力性能の面でも発揮される。とにかく、発進時の最初の“一蹴り”がバツグンに力強いのだ。一方で、スロットルペダルをそっと踏み込めばベンテイガ ハイブリッドは穏やかに動き出すものの、そんなときでもエンジン車とは発進時のマナーが異なっていて、ハイブリッドはどこか“ヌメッ”と動き出すような印象がある。これは、なんとはなしに硬質さを感じさせるエンジン車とは大きく異なるもので、ベントレーのようなラグジュアリーカーに相応しい洗練された身のこなしだと思う。

バッテリー走行50kmを実現したハイブリッド

ベントレー ベンテイガ ハイブリッドのラゲッジルーム
V8はラゲッジルームのフロア下にも小さな荷物を収納するスペースがあるが、ハイブリッドはこの場所にバッテリーが収納されるためスペースはない。

ここで改めてベンテイガ ハイブリッドのスペックを記せば、3.0リッターV6エンジンと電気モーターを組み合わせてシステム出力449ps、システムトルク700Nmを発揮。0-100km/h加速は5.5秒で最高速は254km/hと発表されている。一方のベンテイガ V8は4.0リッターV8エンジンから550psと770Nmを生み出し、0-100km/h加速4.5秒、最高速度290km/hを達成。速さでいえば、V8のほうが一枚上手であることは間違いない。

しかし、静粛性や制振性、そして発進時の上品な身のこなしに関してはハイブリッドに軍配が上がる。そして車載のバッテリーを満充電にすれば約50kmを電気のチカラだけで走行できる点も、ベンテイガ ハイブリッドだけが持つ特色といえる。

V8の印象が、ハイブリッドの登場で変化したのは実に興味深い

ベントレー ベンテイガ ハイブリッドとベンテイガ V8の走行シーン
ハードコーナリングでしなやかな身のこなしを見せるベンテイガ ハイブリッドに対し、ベンテイガ V8は逞しさが前面に出てボディの動きをしっかり抑え込む印象だ。

続いてベンテイガ V8に乗り換えると、当然のことながらエンジンの存在感を明確に感じる。いままでは、「ただひたすらに静か」と感じてきたベンテイガ V8の印象が、ハイブリッドの登場でこれほど大きく変化してしまうとは実に興味深い。要は基準をどこに置くかという話なのだろう。

ベンテイガ ハイブリッドが極低速で力強いことは前述のとおりだが、ベンテイガ V8はこれとは正反対で、動き出しはやや穏やかでも3000rpm、4000rpm、さらには5000rpmとパワー感を増していく。その様子は、まるでクライマックスに向けて徐々に盛り上がっていくアクション映画のようでもある。

ハイブリッドとV8では乗り心地に違いがあることも印象的だった。おそらくスプリングやダンパーの設定はハイブリッドのほうがソフトで、それだけにうねった路面やハードコーナリング時にはしなやかな身のこなしを見せるのだが、路面から伝わるゴツゴツ感だけはなぜかV8に一歩譲る。一方のV8は、タイヤ踏面のあたりはハイブリッドよりもソフトだが、そこから先のストローク領域では逞しさが前面に出てきて、ボディの動きをしっかりと抑え込んでくれるのだ。

未来感を漂わせるハイブリッド、対して内燃機関の良さを実感するV8

なお、試乗車にはV8もハイブリッドもアクティブ・アンチロールバーのベントレー・ダイナミック・ライドが装備されていなかった。ちなみに、アクティブ・アンチロールバーはV8にオプションで装着できるものの、ハイブリッドはバッテリーを搭載するスペースの関係なのか、オプションでも装着できない。一方、2台が履いていたタイヤは、銘柄やサイズからロードインデックスにいたるまでまったく同一。なのに、これほど乗り心地が異なるとは謎でしかないが、車重の違い(ハイブリッドのほうが178kg重い)にあわせてサスペンションをチューニングし直した影響と推測される。

というわけで、電気のチカラにより未来感を強く漂わせるハイブリッドに対して、V8は内燃機関の良さが十二分に感じられるという当然の結論に達した。

未来を先取りしてハイブリッドを選ぶべきか、内燃機関にこだわってV8をチョイスするべきなのか。時代の曲がり角に差し掛かった私たちは、実に重大で難しい選択を迫られているのかもしれない。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
MAGAZINE/GENROQ 2022年 3月号

ベントレー ベンテイガ ハイブリッドの走行シーン

文武両道の異才。ベントレー ベンテイガ ハイブリッド初試乗!

現行ベンテイガにプラグインハイブリッド(PHV)が加わった。ベンテイガのPHVは先代に続いて…

【SPECIFICATIONS】
ベントレー ベンテイガ ハイブリッド
ボディサイズ:全長5125 全幅2010 全高1710mm
ホイールベース:2995mm
車両重量:2648kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ+モーター
排気量:2995cc
最高出力:330kW(449ps)/-rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/-rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後285/45ZR21
0-100km/h加速:5.5秒
最高速度:254km/h
車両本体価格(税込):2280万円

ベントレー ベンテイガ V8
ボディサイズ:全長5150 全幅1995 全高1755mm
ホイールベース:2995mm
車両重量:2470kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
排気量:3996cc
最高出力:404kW(550ps)/5750-6000rpm
最大トルク:770Nm(78.5kgm)/2000-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後285/45ZR21
0-100km/h加速:4.5秒
最高速度:290km/h
車両本体価格(税込):2280万円

【問い合わせ】
ベントレーコール
TEL 0120-97-7797

【関連リンク】
・ベントレー 公式サイト
https://www.bentleymotors.jp/

著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…