レトロと未来を両方詰め込んだ「21世紀のワーゲンバス」デビュー

現代のワーゲンバス「ID. Buzz」の全容が明らかに! 外も中もキュートな未来型EVミニバン誕生

フォルクスワーゲンの新型EV、ID. Buzzのフロントビュー
フォルクスワーゲンは2022年3月9日に新型EV、ID. Buzzを発表した。ワーゲンバスの電気自動車版といえる、キュートでファニーなデザインを採用した。
フォルクスワーゲンは2022年3月9日、新型車「ID. Buzz」をワールドプレミアした。“ワーゲンバス”の愛称で親しまれたかつての名車、フォルクスワーゲン タイプIIを現代的に再解釈したピュアEVで、乗用仕様と商用バン仕様の2タイプをラインナップする。市場への導入は欧州からスタートする予定で、2022年5月よりプレセールスを開始し、秋から本格的なローンチが始まる模様。

Volkswagen ID. Buzz

どこか懐かしく、すごく新しい21世紀のワーゲンバス

フォルクスワーゲンの新型EV、ID. Buzzと商用仕様のID. Buzzカーゴ
フォルクスワーゲンが放つ新型EV、ID. Buzz(アイディーバズ、写真左)と商用仕様のID. Buzzカーゴ(同右)。

21世紀のワーゲンバスが誕生した。フォルクスワーゲン肝煎りのEV専用プラットフォーム「MEB」をベースにしたミニバンタイプの電気自動車であり、レトロスペクティブなデザインと最先端のデジタル機能の両方を兼ね備える。

ID. Buzzには、5人乗りの乗用仕様と3人乗りの商用バン仕様の2モデルがラインナップされる。車両寸法は全長4712×全幅1985×全高1937mm、ホイールベース2988mmで、ボディの長さはちょうどトヨタ ヴォクシー/ニッサン セレナ/ホンダ ステップワゴンクラスに相当する。グロスで82kWh、実容量で77kWhのバッテリーをフロアへフラットに敷き詰め、最高出力150kW/最大トルク310Nmのモーターで後輪を駆動。170kWの急速充電を使用すれば、約30分で5〜80%までチャージすることができる。

前後のオーバーハングは最小限に

フォルクスワーゲンの新型EV、ID. Buzzのサイドビュー
フォルクスワーゲンの新型EV、ID. Buzzのサイドビュー。フロントアクスル直上に運転席を配置していたワーゲンバスのように、ドライバーの着座位置をできる限り車両前方にセット。優れた前方視界と広い室内空間を確保した。

パワートレインをコンパクトにまとめたEV専用プラットフォームの恩恵により、ラウンジのように広々としたキャビン空間を確保。荷室容量は1121リットルで、2列目シートを折り畳めば最大2205リットルまで拡大できる。2人乗り/3人乗りから選択可能な商用バン仕様は、固定式パーティションの後方に3.9平方メートルの広大な積載エリアが広がる。

ワーゲンバスの面影を湛えるモノフォルムのボディは前後のオーバーハングが非常に短く、ドライバーはボディ先端近くに着座できるため前方視界も良好。EVの航続距離に大きく影響する空力性能も徹底的に追求し、ミニバンスタイルながら0.285のCd値を実現(バンは0.29)している。

動物由来のマテリアルは一切不使用

フォルクスワーゲンの新型EV、ID. Buzzのキャビン
フォルクスワーゲンの新型EV、ID. Buzzのキャビンは明るく開放的。ポップなツートーン仕様もあいまって、ワーゲンバスのような楽しげなムードが生まれている。

他車の信号や周囲の環境と相互通信できる「Car2X」(車車間/路車間通信システム)をはじめ、衝突被害軽減ブレーキやレーンアシスト、同一車線内全車速運転支援システム「トラベル アシスト」といったADAS機能も充実。さらに、駐車の際に任意で保存した走行ルートを自動的に走行させることができる「メモリーファンクション」も採用した。OTA(オーバージエア=インターネット経由で自動車のソフトウェアを更新する技術)にも対応しているので、ID. Buzzは購入後も常に新しい仕様へとアップデート可能だ。

ID. Buzzはワーゲンバスにとって最大の魅力であった「楽しげなムード」も継承した。エクステリア/インテリアデザインはいかにも愛嬌たっぷりで、シングルトーンで7色、ツートーンで4タイプと多彩なボディカラーも用意。白と淡い色味のバイカラーを基調とした内装も往年の雰囲気を思わせる。

フォルクスワーゲンの新型EV、ID. Buzzのコクピット
フォルクスワーゲンの新型EV、ID. Buzzのコクピット。ステアリングホイールを含め、室内には動物由来の素材を一切使用していない。

ID. Buzzにはサステナビリティに配慮したマテリアルも多数使われている。レザーなど、動物由来の素材は一切使用せず、代替マテリアルを積極活用。ステアリングホイールのリムは一見本革のように見えるが、ポリウレタンを利用して上質な見栄えと触感を実現している。約10%の海洋プラスチックと約90%のペットボトル再生材から作られたリサイクル糸「SEAQUAL yarn」や、エコフレンドリーなマイクロフリース素材「ArtVelours ECO」も使用している。

実はワーゲンバスから始まったVWのEVづくり

フォルクスワーゲンの新型EV、ID. Buzzカーゴのラゲージコンパートメント
フォルクスワーゲンの新型EV、ID. Buzzカーゴ。商用バン仕様は2人乗りもしくは3人乗りから選択可能で、フロントシートと荷室の間には固定式パーティションが備わる。

フォルクスワーゲンの電気自動車開発はタイプIIから始まった。1970年にウォルフスブルクに設立した未来研究センターでは、eモビリティの開発が「早急な課題のひとつ」として掲げられていた。責任者として着任したのは、電気化学の博士号をもつバッテリー研究の専門家、アドルフ・カルベラー。彼とそのチームは、世界の石油埋蔵量はあと20年しかもたないと言われていたその時代に、ガソリンに代わる次世代の自動車の原動力を模索するべくeモビリティの研究をスタートさせた。

彼らが1972年に開発をスタートしたのが、大手電力会社のRWEとコラボレーションした「タイプ II e-キャンパー」。当時のビートルよりも重い850kgのバッテリーを搭載したe-キャンパーは、約70kmの航続距離と70km/hの最高速度を達成。いわゆるシティコミューター向きのEVとして大きな期待が寄せられたe-キャンパーは総勢200台超のテスト車が作られたが、価格と重量、そしてインフラの未整備がネックとなり、20台強の販売に留まっている。しかしその知見はその後もフォルクスワーゲン社のeモビリティ開発の豊かな土壌を作り出だし、いよいよ21世紀の「EV時代」に花を咲かせることとなった。

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著者プロフィール

三代やよい 近影

三代やよい

東京生まれ。青山学院女子短期大学英米文学科卒業後、自動車メーカー広報部勤務。編集プロダクション…