まさに王者の風格! SUVの王様レンジローバーがフルモデルチェンジ

新型レンジローバーに試乗した! 最高峰SUVはフルモデルチェンジでどう変わった?

新型レンジローバーの走行シーン
デザインテーマは「モダン・ラグジュアリー」で、未来的だが控えめとも受け止められるラグジュアリー感が滲み出た新型レンジローバー。
キング・オブSUVと称されるレンジローバーが5代目へと進化を遂げた。新しいアーキテクチャーとモダンなデザインを採用した新型レンジローバーは一体どのようなポテンシャルを秘めているのだろうか? モータージャーナリストの大谷達也がその走りを存分に味わった。

Land Rover Range Rover

王者の貫禄をもったフラグシップSUV

大きな進化を遂げた新型レンジローバー。なかでも美しいデザインは全体にキープコンセプトとはいえ重要なハイライトだ。

「まるでモーターショーの会場から抜け出してきたコンセプトカーのよう」。昨年10月にワールドプレミアされた際、私が新型レンジローバーに抱いたそんな思いは、アメリカ・カリフォルニア州のナパ周辺で行われた国際試乗会で実車を目の当たりにしても、まったく変わらなかった。いや、より強まったと言ったほうが正しいだろう。

なぜ、新型レンジローバーはコンセプトカーのように見えるのか? その理由として、余計なデザイン要素やボディ表面の凹凸が極めて少ないことが挙げられる。

一般にコンセプトカーは、デザイナーのアイデアを際立たせるため、ドアミラーやドアハンドルなどを廃するなどしてフラッシュサーフェイス化を図るほか、場合によっては法規上必要となる保安部品を小型化したり省略するケースも珍しくない。一方の新型レンジローバーは、美的感覚から言えば好ましくないはずの保安部品ももちろん装着されているが、それらは巧妙なデザイン処理により、ほとんど目立たないか、むしろ外観の美しさを強調するのに役立っているとさえ言える。

もうひとつ、量産車とコンセプトカーを隔てる大きなポイントが、生産に投じられる技術やコストにある。どんなに美しいデザインコンセプトでも、予算を上回るコストがかかったり、実現が極めて困難な生産技術が要求される場合、量産車に採用されることはない。「コンセプトカーは魅力的だったのに、量産モデルは平凡で退屈なデザインに落ちぶれてしまった・・・」というケースのほとんどが、こうした事情によるものだ。

しかし、新型レンジローバーは違う。おそらく、チーフ・クリエティブ・オフィサーであるジェリー・マクガヴァンのアイデアが、ほぼそのままの形で量産化されたのだろう。そのためには、さぞかし高度な生産技術や多額のコストが必要だったに違いない。

シンプルながら呆れるほどの美しさ

13.1インチのフローティング式フルHDタッチスクリーンを備える最新インフォテインメントシステム「Pivi Pro」が採用される。

そう思って、試乗会場にいあわせたマクガヴァンに訊ねてみると、こんな答えが返ってきた。

「私たちデザインチームは、開発部門や生産部門と常に緊密な連携を図っています。したがって互いにケンカするのではなく、協力し合いながら、この新型レンジローバーを造り上げました」

いわば、圧倒的な美的センスをベースに、膨大なコストと匠の技を組み合わせることで誕生したデザイン。それが新型レンジローバーなのである。結果としてクルマとしての価値が大幅に向上し、いまやプレミアムブランドのひとつ上に位置するラグジュアリーブランドへと完全に移行したように私には思える。

このデザインテーマをマクガヴァンは「モダン・ラグジュアリー」と説明する。なるほど、どこか未来的でいて、シンプルゆえに控えめとも受け止められるラグジュアリー感が、堂々とした体躯から滲み出ているようなデザインである。

このデザインと歩調をあわせる形で、ハードウェアも一新された。その基盤となるのがMLA-フレックスと呼ばれる新アーキテクチャーだ。ボディ構造がモノコック式となるのは先代同様ながら、使用する素材をアルミ主体から軽合金とスチールを適材適所で用いる方式へと移行。ボディが大型化したのにこれまでとほぼ変わらない車重を実現するとともに、捻り剛性などは従来比で50%も向上している。サスペンション形式がマクファーソンストラット/ウィッシュボーンからダブルウィッシュボーン/5リンクへと進化したこともMLA-フレックスの特色といえる。

高い快適性と正確なハンドリング

レンジローバーの名に恥じぬ高い快適性を持つ。その一方でミリ単位でコントロールできる正確なハンドリングも両立している。

エンジンは4.4リッターV8ガソリン、3.0リッター直6ガソリン、3.0リッター直6ディーゼルの3タイプが基本で、直6ガソリンにはマイルドハイブリッドないしPHVが、そして直6ディーゼルにはPHVがそれぞれ組み合わされる。ただし、日本市場に導入される直6ガソリンはPHVのみとなる見通しだ。

今回、最初に試乗したのはV8ガソリンをスタンダードホイールベースボディに搭載したファーストエディション。これはオートバイオグラフィーをベースに特別な装備を盛り込んだ限定モデルである。

その乗り味は、実にマイルドで快適。最近はオンロード性能を優先して足まわりをソリッドな設定にするSUVが少なくないが、レンジローバーのアプローチはまったく異なる。路面からのショックを優しく吸収するサスペンションはストロークがたっぷりとしていて、いかにもオフロード走行が得意そうな味付け。もちろん高速時にはボディをフラットに保つ力強さも備えているが、基本的にソフトで快適な乗り心地はレンジローバーの伝統を正しく受け継いだもので、強い共感を覚えた。

一方で、足まわりの進化もしっかりと体感できる。先代は、サスペンションブッシュ類を全般的にソフトな設定としたためか、操舵時などにタイヤの位置決めなどがビシッと決まらず、どこかあいまいな感触を残していたが、新型は前述のとおり高い快適性を確保したまま、それこそミリ単位で走行ラインをコントロールできるほど正確なハンドリングを手に入れた。あわせてステアリングレスポンスも格段に向上し、小気味いいドライビングを実現していることも印象的だった。

質の高い走りに驚愕する

今回は少し湿った泥濘路を走った程度で本格的なオフロード走行は体験できなかったものの、駆動系に引き続き用意されるトランスファー切り替えでローを選択すれば、あとはテレインレスポンス2が路面の状況を判断し、センターデフやリヤデフのロックとアンロックを自動制御。オールシーズンタイヤのまま、滑りやすい路面を苦もなく走破できた。また、新型は後輪が最大で7.3度操舵する4WSを標準装備するため、取り回しが格段に向上したことも特筆すべきだろう。

オフロード性能の高さはスペック面にも表れていて、アプローチアングル:34.7度、ブレイクオーバーアングル:27.7度、デパーチャーアングル:29.0度、最大渡河深度:900mmと、相変わらず呆れるような数字が並んでいる。一般ユーザーがこうした性能を100%使い切るかどうかはさておき、新型がこの点でも伝統を正しく受け継いでいることは間違いなさそうだ。

マクガヴァンが標榜するモダン・ラグジュアリーの思想はインテリアにも反映されており、エクステリア同様、シンプルななかにも上質で洗練されたデザインに仕上げられている。明るい色調のオフホワイトやベージュのインテリアが選べるのもレンジローバーの伝統だが、ただ色合いが明るいだけでなく、そのカラートーンが絶妙のセンスで仕上げられている点もレンジローバーならではの特色。そしてレザーの質感は、日ごろラグジュアリーブランドのバッグを使い慣れているセレブリティたちをも満足させるほど高いレベルにある。こうした趣味のよさは、引き続きドイツのライバルたちに対する大きなアドバンテージといえる。

SWBモデルだけでなくLWBモデルもラインナップ

ボディタイプはスタンダードホイールベースのほか、200mm伸長させたロングホイールベース(写真)の2タイプが導入される。

スタンダード(2997mm)とロング(3197mm)の2タイプが用意されるホイールベースは先代に比べておよそ80mm延長されており、スタンダードホイールベース(SWB)でも十分な後席のレッグスペースが確保されているが、ロングホイールベース(LWB)の居住性は圧倒的で、まさしくリムジン的な使い方が可能。とりわけ、スペシャル・ビークル・オペレーションが仕立てたSVモデルであれば、ゆったり寛げる体勢がとれるリクライニング機能のほか、シャンパン用の冷蔵庫や上質なテーブルなども装備できるので、ショーファードリブンで使うには最適だろう。

新型はLWBでもボディ剛性が大幅に向上した結果、乗り心地がさらに上質になっただけでなく、正確なハンドリングも手に入れている。さらにはレンジローバー初となる3列シートが設定されたことも見逃せないニュースだ。

レンジローバースポーツ顔負けのシャープなハンドリングを実現

細い縦長のテールランプにリヤゲートのガーニッシュをロの字にレイアウトしたリヤのスタイリングが特徴的だ。

直6エンジン系ではSWBのディーゼル(グレードはHSE)に試乗したが、これがファーストエディションとはまったく異なる世界観で大いに驚かされた。優れたボディ剛性を活かし、レンジローバースポーツ顔負けのシャープなハンドリングを実現していたのだ。それだけに足まわりの設定もややソリッドなタイプとなるが、その歯切れのいい乗り味はむしろ心地いいとさえ言えるほど。直6ディーゼルの俊敏なレスポンスも、このシャシーセットアップにぴったりとマッチしていた。

新型の受注は世界的に好調で、国内でもファーストエディションがすでに完売し、一部モデルは2年待ちともいわれるので、早めにディーラーを訪れることをお勧めしておく。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/Jaguar Land Rover
MAGAZINE/GENROQ 2022年 7月号

【SPECIFICATIONS】

レンジローバー ファーストエディション P530 SWB

ボディサイズ:全長5052 全幅2209 全高1870mm
ホイールベース:2997mm
車両重量:2585kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:4.4L
最高出力:390kW(530ps)
最大トルク:750Nm(76.5kgm)
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
0-100km/h加速:4.6秒
最高速度:250km/h
燃料消費率:11.4L/100km(WLTP)

レンジローバー SV P530 LWB
ボディサイズ:全長5258 全幅2209 全高1870mm
ホイールベース:3197mm
車両重量:2626kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:4.4L
最高出力:390kW(530ps)
最大トルク:750Nm(76.5kgm)
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
0-100km/h加速:4.7秒
最高速度:261km/h
燃料消費率:11.7L/100km(WLTP)

レンジローバー HSE D350 MHEV SWB
ボディサイズ:全長5052 全幅2209 全高1870mm
ホイールベース:2997mm
車両重量:2505kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:3.0L
最高出力:257kW(350ps)
最大トルク:700Nm(71.4kgm)
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
0-100km/h加速:6.1秒
最高速度:234km/h
燃料消費率:7.6L/100km(WLTP)

【問い合わせ】
ランドローバーコール
TEL 0120-18-5568

【関連リンク】
・ランドローバー 公式サイト
https://www.landrover.co.jp/

新型ランドローバー レンジローバースポーツのオフロード走行イメージ

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ランドローバーは2022年5月10日、新型「レンジローバースポーツ(Range Rover Sport)」をワールドプレミアした。内燃機からBEVまで対応する先進アーキテクチャーをベースに開発された3代目は、まず3タイプの内燃機+PHEVモデルから導入をスタート。追ってBEVモデルも投入する。

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…